2022.07.11 小野 鎭
一期一会 地球旅 225 パールロードから南イタリアを巡る旅(11)

一期一会 地球旅 【225】 パールロードから南イタリアを巡る旅(11)

 
  2006年のときと今回2012年9月に訪れて感じたポンペイの遺跡の荒廃振りと管理不足が目立つことを書いてきたが、さき頃(2022年1月)NHKのBS放送で「よみがえるポンペイ」や古代ローマの盛衰の様子がたびたび紹介されていた。それによると、EUとイタリア政府により1億500万ユーロ(邦貨で130~140億円)が投じられ、ヨーロッパで最も貴重な遺跡の一つであるポンペイの発掘調査が行われるプロジェクトが開始されているとのこと。この発掘調査は2018年頃から行われているのだろうか、貴重な遺跡や当時の生活の様子が細かく紹介されるなど興味深く報告されていた。
それによると、これまで一度も発掘されず、噴火当時から今日までほとんど2000年の間眠っていた一帯がかなり広範囲に発掘される対象地となっていると報じられていた。
特に大きく報じられていることは、従来ヴェスビオの噴火は西暦79年8月24日に起きたといわれていたが、今回の発掘調査で新たな新事実が見つかり、実際の噴火は、10月17日だったとする説が出されていることだ。いずれ公的にヴェスビオ噴火の歴史が書き換えられることが考えられる。その中でも今回集中的に発掘調査されている様子が細かく紹介されていた。そして新事実がさらにたくさん紹介されるなど、ぜひもう一度行ってみたいと思う内容がたくさんあった。 同時に東京・上野の東京国立博物館で「特別展ポンペイ」が開催されていた。それらの資料を見ると昔実際に見た遺跡や新たな発掘調査で見つかった遺跡などが紹介されていた。それによると従来のポンペイについての解釈が改められることもたくさんあるらしい。テレビでの番組を見るだけでなく、3月に自分自身、上野での特別展を見に行っていた。現在書いている地球旅でいずれ間もなくナポリからポンペイについても書く予定であり、その参考にするためでもあった。それだけでなく、南イタリアにもう一度ぜひ行きたいと思っていたからである。
そして、これには後日譚がある。イタリア好きの家人であるが、まだ訪れていないナポリやポンペイなど南イタリアへ一度ぜひ一緒に行きたいと思っていた。そこで、参考までにこのポンペイ展にもぜひ行こうと誘ったが、残念ながら年明けごろから体調を損ねており、上野公園内内では博物館迄かなりの距離歩を歩かなくてはならないので行けそうにないとのことであった。3月末の上野公園はことしもサクラが見ごろになっているはずだと思い、ぜひとも一緒に、と思ったがそれは無理と感じざるを得なかった。そこで、止む無く一人で行った。予想通り、博物館一帯は、サクラが満開で見ごろであった。特別展は、かなりの混み具合であったが、予約しておいたお蔭でスムーズに入場でき、特別展を見学することが出来た。
内容は、現地で幾度も見ていた写真や説明も多かったが、なるほどそうなのかと思う新しい展示内容も多かった。新しく発見調査されたところが展示されており、映像でも紹介されていることはさらに興味深かった。一通り見終わって、途中から家人に電話を入れて、体調に異常はないか、と尋ねた。大丈夫だからゆっくり見てきて、との返事があり安心した。しかし、言葉とは裏腹にその声は弱々しく、却って気になり、特別展の絵葉書とハンカチを土産に早々に見学を終えて帰路についた。
妻は、ローマからフィレンツェは以前にゆっくり見学しており、特にバチカン博物館であるとか、フィレンツェの孤児の博物館などには強い興味を持っていた。そして、ダン・ブラウンの小説を愛読するほか、トム・ハンクスが主演した映画などは夢中で見ていた。そして、あの場所がどうだとか、これはどうだとか、私自身が気づかないところまでよく見ていて驚くほどであった。
4月になると、彼女は急激 に悪化し、5月13日にイタリアよりもっと遠くへ旅立ってしまった。彼女が机上に置いていた書類入れなどのプラスティックのケースには特別展で買ってきた絵葉書が貼ってあったし、色違いで買ってきたハンカチが小物入れにしまってあった。きっと大切にしていたのだろうと思う。今となってはイタリアへ行くことはかなわないし、すべてが夢物語となってしまった。 今回は臆面もなく自身の家族にまつわる話を披歴してしまったことについてお許しいただきたい。 (以下、次号) 写真&資料 (上から順に、ことわりのないものは筆者撮影 暫定的な修理中のポンペイの古代ローマ時代の住宅(2006128日) ポンペイ・特別展の案内(NHK資料より) 新たな発掘調査の様子(NHK資料より) ポンペイ・特別展入場券(2022328日) 東京国立博物館に見るサクラ(2022328日) ポンペイ・特別展の絵葉書(20226月) ポンペイ・特別展記念のハンカチ(20226月)