2026.06.22
小野 鎭
一期一会 地球旅 418 オーストリアでの思い出(5) ウィーンにて5
一期一会・地球旅 418
オーストリアでの思い出(5) ウィーンにて⑤
この大広間の見学を終えてグループは宮殿本館を出てオランジュリー館に移り、屋外レストランで夕食をいただいた。まだ日は高く、ビールやワインでのどを潤しながらあわただしかったこの日の動きを語りながらの食事であった。そして、宮殿ご自慢のコンサートはオランジュリー館で行われた。シェーンブルン宮殿オーケストラ(Schloss Schönbrunn Orchester)は1997年に創設されたが前身の宮殿室内楽団では、1786年にモーツァルト自身も演奏したという。この日のコンサートは、(夏はかなりの回数やっているようです)の演奏曲目は、モーツァルトやヨハン・シュトラウスの曲などが組まれていた。
さて、このオランジュリー館であるが、建物と庭園が完全な芸術作品として構成されており、バロック式建築とフランス庭園様式で18世紀初頭に建設されたとある。庭園には、世界各地から取り寄せられた植物が植えられており、冬の寒さに耐えられない幼木や植物を寒さから守るために植物の保管庫として建てられた。いわば温室ということになるが、一方では宮廷内の様々な催し物も行われており、宮殿コンサートもその一つであったらしい。もう一つの特徴は、250年にもわたって稼働してきた床暖房装置があること。これがあるからこそ、冬の寒さから植物を一定の温度で保つことができたとある。暖房の仕組みは、外の焚口で燃料を燃やしてその熱を床下に送り込んで「床暖」とした、言わば、韓国のオンドルと同じようなやり方であるらしい。寒さに強いオランジュリー館ではあるが、冷房装置は設けられていない。さわやかなウィーンの夏は窓さえ開ければさわやかな風が入り、言わば天然のクーラーであったのだろう。少なくとも、2006年のこのツアーで行ったときには冷房装置は付けられていなかった。
宮殿内にはこの庭園のほかに動物園がある。現地では、Tiergarten Schönbrunnと呼ばれ、植物園と同時期の18世紀中ごろに、帝国のメナジェリー(Menagerie=小動物園)として建設され、現存している世界中の動物園の中でも最も古いという。科学的に管理された動物園として種の保存と保護を目的とするだけでなく、法律により教育的権限を委任された中央センターとされている。バロック時代の建物が今現在まで保存されており、ヴェルサイユ宮殿以後18世紀のメナジェリーの印象を現代に伝えている。近年、現代的な動物園の建築要素が取り入れられた、とある。そう言えば、数年前、NHKテレビで世界の動物園シリーズのなかでも紹介されていたことを思い出す。宮殿内の庭園であるとか、花園はこれまでもよく見てきたが、残念ながらこの動物園までは足を延ばしたことは無い。
もう一つ、宮殿内には日本庭園もあるということをNHKテレビほかで紹介されていたことが思い出される。Vienna Info.には次のような案内がある。「ウィーンに花咲く日本の庭園芸術 ― 日本庭園は、静寂と瞑想のオアシスとして高く評価されています。ウィーンにも幾つかの日本庭園があり、自然への愛と独自の美学が表現されています。フランス・バロックの造園術によって構成されたシェーンブルン庭園の一角には、日本の石庭が存在します。これは、1913年シェーンブルンの造園技師によって作庭されたものですが、第一次大戦後に放置され、その後は長らく忘れ去られていました。ようやく1990年代末に、日本の専門家の援助により、石庭が再現されました。750㎡の敷地には小さな山があり、3段からなる滝が2つの池を結んでいます。加えて茶庭と瞑想の庭が一層の趣を添えています。」 この日本庭園も残念ながら、グループ旅行としては訪れることができず、テレビなどの番組で興味深く見ながらも今に至っている。
明るい陽射しのもと、夕食を終えるとオランジュリー館に入った。私たちのようなツアー客や観光の途中に入ったらしいTシャツ姿の人もあったし、一方では、スーツやドレスを召した人たちもあった。このようにクラッシックな建物で聴くコンサートなどでは、このように服装を整えたカップルなどを見ると会場にしっくり収まっており、見栄えがすることを感じた。
暫くすると、舞台に演奏家たちが登場してそれぞれの席に着いた。やがてチューニングがあり、指揮者が登場。会場から拍手が送られて演奏が始まった。みんな静かに聴き入っていたが館内は満杯の聴衆が入っており、次第に暑さが加わっていった。そっと汗をぬぐう人も出てきた。演奏を聴きながらも暑さは強まっていった。オーケストラはモーツァルトなどのポピュラーな曲目を演奏していたが、演奏家たちはそれぞれスーツを着ており、指揮者は汗をぬぐいながら指揮棒を振っていた。何曲か演奏して30~40分くらい過ぎたころ、やがてと言おうか、やっとと言おうか第一部が終わり、休憩になった。難行苦行とはこういうことを言うのかもしれない。15分くらいの休憩時間は、ほとんどの聴衆が席を立って上着を脱いだり、外へ出てベンチに座ったり、背伸びをして涼を求める人ばかりであった。我々 のグループは、というと誰もが宮殿コンサートとは名前は優雅だが、暑さとの闘いにさすがに音を上げている人が多かった。そして、二部を待たずに引き上げる人もあった。ホテルは、宮殿前から地下鉄で1駅、歩いても一本道で10~15分くらいであっただろうか。結局、この日は流れ解散となり、コンサートの休憩時間が終わって第二部が始まったが、客席にはあちこち空席となっていた。我慢強い紳士淑女もさすがに暑さに参った人たちもあったらしい。
250年前に造られたこのオランジュリー館はその目的からも暖房装置が設けられていたご自慢の建物であったが、当時もその後も冷房装置は設けられていなかったし、その必要もなかったのだろう。今日、ウィーンの一般家庭や集合住宅、あるいはオフィスビルなどでクーラーがどのくらいの割合で設置されているかは知らないが、古い建物では、それほど多くは無いと思う。昔、冷房装置は事実上、必要はなかったのであろう。しかし、2006年の夏の夜、汗をぬぐいながら聴いた宮殿コンサートは、今も忘れない。 同期生との集いなどで「ハプスブルク家の栄華の跡を巡るツアー」に参加したメンバーと旅行の話になると宮殿コンサートの熱い思い出が蘇ってくる。(以下、次号)
《資料》
シェーンブルン宮殿コンサート:Schloss Shönbrunn Konzerte
ウィーンのシェーンブルン宮殿オランジェリー:Schloss Shönbrunn Konzerte
シェーンブルン動物園:Wikipedia
ウィーンの日本庭園:Vienna Info.
《写真》
・オランジュリー庭園での夕食:2006年 筆者撮影
・昔日のオランジュリー館:Schloss Shönbrunn Konzerte 資料より
・シェーンブルン動物園:Wikipedia
・シェーンブルン宮殿内の日本庭園:Visiting Vienna 資料より
・シェーンブルン宮殿室内楽団:Schloss Shönbrunn Konzerte 資料より
・宮殿コンサートの休憩時間でほっと一息:2006年 筆者撮影