1988年はザルツブルクを2度訪れていることを思い出した。この年、4月、航空会社の招きでザルツブルクとハンガリーのブダペストを観光面からかなり詳しく見学することができた。メンバーは、旅行会社の中堅社員など10数名に航空会社の営業担当者が1人、随行した。中には、日ごろの勤務ぶりなどが評価されてご褒美にヨーロッパ旅行に行かせてもらったという人もあった。私は、すでに130回以上の海外添乗経験があることを自己紹介で語ったところ、ずいぶん驚かれたことを思い出す。ザルツブルクはすでに数回訪れたことがあるが、観光面で集中的に見学したことはなかったし、ホテルやレストランなども幅広く案内してもらったことはとてもうれしいことであった。加えて、ザルツブルク東方のザルツカンマーグート地方を見学できたことはとても有難かった。事実、それ以後、オーストリアを6~7回訪れており、それまで以上にこの地域で時間をとって観光や保養地の視察をプログラムに織り込んだ。社でも今まで以上にオーストリアやハンガリーを意識することにつながって行ったと思う。それまでの西欧主体の旅程から中欧も意識することが多くなっていたことは事実である。加えて、1960年代に製作されたミュージカル映画「Sound of Music」が話題の一つとして取り上げられることが多かったし、観光面では映画のシーンを思い出したり、実際にその場所を訪ねることも多かった。
忘れられないのは、観光関係研修で訪れた時、夜のアトラクションでクラシックのコンサートに招待されたことである。会場はザルツブルク祝祭大劇場(Festspielhaus in Salzburg)であった。プログラムもさることながら興味深かったことは、この大劇場そのものであった。旧市街で大劇場を建設するための土地探しに難航、メンヒスベルクの岩盤をくりぬいて建築された。ステージの大きさは世界最大級で最大横32m、高さ9m、であり、さらに舞台裏には横100m、奥行き25mの広大なスペースが確保されているという。ザルツブルク音楽祭のメイン会場でもあり、私たちはこのホールでのコンサートを鑑賞することができた。昼間のセーターとジャンパーにジーンズ姿からネクタイを締めてスーツ姿で席に着いたことも懐かしく思い出される。肝心の曲目は忘れてしまっているのはお恥ずかしい限りである。祝祭劇場と並んで「モーツァルトのための劇場」(Haus für Mozart)もある。2006年、モーツアルト生誕250周年を記念してそれまでのザルツブルク祝祭小劇場(Der Kleine Fiestspielehaus)はモーツァルトのための劇場へと改称されたものである。日本では、モーツァルトの家とも呼ばれることがあるのでモーツァルトの生家(Mozarts Geburtshaus)ではないので要注意である。二つの劇場はメンヒスベルクの岸壁を背にして細長く連なっており、独立した大きなホール状の建物ではないことも知っておきたい。
さて、2002年の還暦ヨーロッパではウィーンからザルツブルクへ向かったが途中でアウトバーンを下りてザルツカンマーグート方面へ入って行った。初めてミュンヘンからウィーンへ向かった1969年、これも正に初めての世界一周の医療事情視察団であった。ザルツブルクで昼食を摂り、再び、走り出して間もなく、ドライバーはこの先から南の山間に入っていくとザルツカンマーグート地方という美しい景色が広がっていると説明してくれた。しかし、具体的には想像がつかず、ドライバーの案内をそのままマイクで車内に伝えたがほとんどの先生方は昼食のワインで午睡の真っ最中、ろくに聞いていただけなかったと思う。その後も1,2回同じコースを走ったことがあり、ザルツカンマーグート地方の景勝については実際に見る機会が無かったので想像の域を出なかった。観光情報研修で訪れたときは、4月であったのでまだ雪をかぶった山々は冬枯れの景色であったので良くは分からなかった。しかし、温泉保養地などのことはドイツやスイスなど各地で見聞していたのでおおよその想像は付いていた。「Sound of Music」も幾度か見ていたのでなおのこと、自分自身訪れてみたいと思っていた地域であった。