2016.11.22 小野 鎭
一期一会地球旅135「ラップランドへの旅9 ハリニヴァ・リゾートへ その4」

一期一会 地球旅 135

ラップランド(Sápmiの旅 9 ハリニヴァ・リゾートで その4

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夜遅く戻ってくると身体の芯から冷えているので熱いシャワーを浴びて身体を温めるのが楽しみ。文字通りホッとする。ところで、フィンランドに来て、シャワー室で気づいたことがあった。今や我が国では、シャワー付きトイレ(温水洗浄便座)の普及率は一般家庭でも81%強(内閣府H/P 平成28年)だとか。ホテル等宿泊機関ではさらに高いと思われる。フランスなどのビデ以外の他に海外諸国のホテルなどでも少し見かけるようになってはきたが、まだ多くは見かけない。今回、フィンランドの多くのホテルで見たのはトイレの洗面台の蛇口から白いホースが別につけられていて、これがトイレまで届くようになっていたことである。ホースの先の放水口の手前にある握りを押すと適温の水が出る。つまり、必要部分を洗浄することもできるらしい。 できるらしい、というといかにも無責任であるが、このことについてはホテルに聞いてみようと思いつつ、失念したからである。インターネットで調べてみるとフィンランドだけでなく、多くの国に普及しつつあり、いろいろな使い方が紹介されていた。簡易ビデという説明も聞いたし、トイレの掃除用に使えるという人もある。いずれにしても多目的に使えて便利ではないか。帰国後、ヘルシンキ在住のM氏に聞いてみたところ、多くの家庭で普及しているらしく、使い方は前述のように様々であるとか。日本のそれのように洗練された洒落たつくりではなく、極めて実用的であるが、まさに多目的シャワー! 多分、設置費用は我が国のそれよりはずっと軽微であり、大型の改良工事をする必要もあるまい。
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ハリニヴァで3日目の朝、窓の外の温度計は-30を示していた。前夜帰館した時は、-25℃であったがあれからさらに下がっていることになる。新しい朝を迎えるごとに気温が下がり、明るい朝の陽に照り映える白く凍てついた大地の上にすっくと立つ針葉樹林の上の空はますます青く冴えわたっていた。
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窓の二重ガラスの間に水蒸気が凍り付いているのだろうかスギナのような模様が伸びていた。早速、防寒着に身を包んで朝食前に少し屋外を歩いてみたいと思い外へ出た。一日に幾度も防寒着を着脱するので少しずつ要領がよくなり、わりに手早く身づくろいすることができるようになっていた。外へ出てみると、ほんの2,3分もしないうちに鼻の奥がキーンと痛くなる。そして瞼の上がなんとなくバリバリしてくる。まつげが凍り付いているのだろう。通りでは、自分の家の前の雪をかいている人の姿もちらほら。隣家の女性は数年前に引退してヘルシンキからここへ引っ越してきたという。極寒の地であっても、ヘルシンキでの都会生活より、この自然の中で過ごす方がずっと楽しいとのこと。多分、屋内での生活は都市部の住宅などと変わらぬ快適さが確保されているからに違いないことも根底にあるのだろう。
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この日は二つのアトラクションを準備することになった。 ひとつは犬ぞり体験。ホテルの玄関に立つと遠くから犬の鳴き声が時々聞こえていた。リゾートの敷地の向こうに動物園のように柵をめぐらし、たくさんの檻があった。数十頭のエスキモー犬が飼われており、元気良く動き回っている。 
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それぞれに名前が付けられている。フィンランド語の名前もあれば、世界中の地名を書かれている犬もいる。Tokyoという札が掛けられているのは黒のたくましそうな犬であった。また、生後間もなく、やっと目が開いたという子犬もいて、メンバーの顔をぺろぺろなめ、愛くるしい顔立ちであった。
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犬ぞりツアーは、2頭ずつ並べて前後に4組、計8頭がそりを引く。そりには二人ずつ乗り、その後ろにインストラクター兼ガイドが立って手綱を曳く。そして号令をかけながら、犬を走らせて巧みにそりを操り、適宜ブレーキをかける。一般のツアーは、雪原を3~40分走るそうだが、我々のメンバーは安全確保を重視して園内のコースを回ることになった。エスキモー犬は極寒の地、夜の寒さは想像もできないほどだが、それでも丸くなって休むとのこと。何ともたくましくてたのもしい限り。一行は短い時間であったが、犬とのふれあい、そして、雪原を走る爽快さを味わってひとときを楽しんだ。 午後のアトラクションは、スノーモビルでの雪原ツアー。スノーモビルは大型バイクのような作りで、前輪部分はスケートボードのような大きなそり、後輪部分はキャタピラーが付けられており、かなりのスピードで雪上を走る。
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普通は、ドライバー兼ガイドが乗って、後ろにお客がまたがって走る、ということらしい。しかし、私たちのメンバーはオフィスの担当者と相談して、箱型の大きなそりを準備してもらい、これをスノーモビルで牽引して走ることになった。一つの箱に10人くらい乗るので2台が前後して走った。ムオニオ川の広い雪原から森の中へ入り、木立の間を快走する。雪原であっても、勝手気ままに走るのではなく一定の雪路が定められているらしい。それ以外には人の足跡はおろか、犬ぞりもスノーモビルの走った痕跡ない真っ白のキャンバスが広がっていた。面白いことに、雪路の交差点にガソリンスタンドの案内があったのは何とも面白い発見であった。確かにこんなところでガス欠になったら? 考えただけでもゾッとする。
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ワイワイキャーキャー、愉快、爽快のひとこと!雪原は、夏は一面の緑野であろうか。でも今は、何処までも続く純白の原っぱ、遠くに森が広がり、エンジンを止めて雪原の上にとどまると森閑として物音ひとつしない。静寂、そして静謐の世界がそこにあった。白い大地と針葉樹の森、そしてその上に広がる澄んだ青空。雲一つなく、空が高くなるほど深い蒼に変わっていた。その夜も勿論オーロラ見物に挑戦した。写真で見るような豪華な夜空のページェントは仰げなかったが細やかな宴をみることができた。昼間のこの雪原で見上げた空の美しさは今も忘れない。メンバーが夢に見ていた“世界一美しい空”が広がっていた。
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ハリニヴァでの楽しい滞在を終えた最終日の朝、遂にこの日の温度計は-32を示していた。キッティラの空港に向かうハイウェイを走るバスの車窓からみる白い世界に言い知れぬ親しみを覚えた。出発前に想像していた極寒の地で過ごすことへの不安と期待、それはいつしか是非また来たい、そして、多くの人にこのエキサイティングな経験を伝えたい、その思いに変わっていた。
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キッティラの空港ビルの前に立つ寒暖計は依然として、-23であったが、 心の中にはラップランドで経験したたくさんの熱い思い出が溢れていた。たまたま空港の売店に素朴で昔風の寒暖計を売っていたのでお土産に買ってきた。それを見る度に、あの楽しかった数日を今も懐かしく思い出す。         (資料 上から順に。撮影は2013年3月) ホテルの洗面所、トイレの脇にある水道のホース 窓の二重ガラスの間には凍ったスギナが! 雪かきをする人 そりを引く頼もしい犬たち、Tokyo号という名前もあった。 子犬との楽しい語らい 犬ぞりツアーは楽しい! 雪原ツアー 空はどこまでも青く、雪原は静寂そのもの。 氷点下32℃ キッティラ空港ではタラップを屈強か空港スタッフが車いすのお客様を介助してくれた。 思い出の寒暖計 (2016/11/22) 小 野  鎭