2017.05.17 小野 鎭
一期一会 地球旅158 地球の歴史を見に行こう ロサンゼルスにて(その8)

一期一会 地球旅 158

地球の歴史を見に行こう ロサンゼルスにて(その8)

シェフがショーマンシップをいっぱいに演じて作ってくれた鉄板焼きのお肉や焼き飯を楽しみ、名人氏の誕生日をみんなで祝ってBenihanaでの夕食会はお開きとなった。サンタモニカの海岸通りはまだまだにぎやかで車があふれていたが、その中をぬってちょっとだけ遠回りをして帰ろうとバスを走らせた。明日はいよいよ帰国、はやくホテルに戻ってスーツケースを整理したり、あれこれ準備をしなければならないのであまり夜更かしはできない。とはいっても、折角の最後の一夜、世界的にも有名なロスの夜景を旅の思い出に加えていただこうとB-POPの湯澤代表と打ち合わせてあった。サンタモニカからハリウッド地区までは夜も8時過ぎになるとラッシュアワーも終わっており、30分足らずで行き着く。夜遅くまでハイランド地区などはにぎやかだが、その周りの住宅街は街路灯が静かに灯っている。その中をバスはカーブを繰り返しながら上がっていく。途中から一方通行になっており、道路の片側には、地域住民のクルマであろうか、ずっと駐車の列が続いている。
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やがて、駐車の列が切れ、木立の中を塗っていくとはるか下の方に町の灯が点滅している風景が見え隠れしてきた。一帯は、グリフィス公園(Griffith Park)という広大な緑地になっており、ハリウッド地区を取り巻く丘陵地に広がっている。その左側(西北方面)にはHollywoodサインといわれている大きな看板が立っているお馴染みの風景につながっている地域でもある。公園の中には同名の天文台(Griffith Observatory)がある。1935年に建てられたアールデコ調の美しい外観と市内が展望できることからロス地域でも評判の場所の一つになっている。昔から知られてはいたし、私自身はこれまでにも幾度も訪れているが、以前は折角の展望がスモッグに覆われて評判は良くなかった。ロス地域の広大な市街地には網の目のように道路が伸びており、その中をフリーウェイが幾本も走っている。
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公共交通機関と言えばほとんどバスしかなかったこの地域での足と言えばクルマが殆どすべてであり、自家用車無しではこの町では生活が成り立たない、と言われて大きな社会病理に長いこと苦しんでいたと聞いている。それを解消するためにも、アメリカでは排気ガス規制が厳しくなり、車の性能が良くなり、一方ではメトロレイルなど鉄道網も徐々ではあるが整備されてきている。そんなこともあって、大気汚染は少しずつ改善されてスモッグの発生も減少してきており、グリフィス天文台からの景色も次第に良く見えるようになってきていた。特に、空気が乾燥して爽やかな時期の夜景は素晴らしいと評判である。 天文台には天体観測のための大きな反射望遠鏡と最新技術が織り込まれたプラネタリウムがあるそうだが、これまでに一度だけ望遠鏡をのぞいたことがあるのみ。普段は、もっぱら夜景見物で皆様をご案内してきた。
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天文台の裏側に回ると広いテラスになっており、回廊が設けられている。回廊に立つとどこまでも広い市街地が広がり、幾本もの街路が東西に南北に走っていることがよくわかる。暗い中に光の帯がまっすぐ伸びている。その中をさらに幅広い光の帯がうねっており、フリーウェイを走る車のランプが忙しく走り抜けていることがよくわかる。中央部の右手にはダウンタウンの高層ビルが林立しており、さらに立体的な景色を作っている。また、右下に目をやると黒々とした地域が広がっており、ハリウッド地区の閑静な住宅街となっていることが読み取れる。 この日も、心地よい風が頬を撫で、空気が澄んでいることもあって夜景はさらに見事であった。表現を借りるならば、いまだに実物は見たことはないが、大きな宝石箱をひっくり返したようにとりどりの光がまたたいていた。
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ルビー、サファイヤ、エメラルド、そして、ダイアモンドはもちろん、いぶし銀のようなパール色の光もある。豪華な光のページェントが目の前いっぱいに広がっていた。手すりに寄りかかってメンバーは、異口同音に、すごい! うわぁ―! マジ!? 素晴らしい! 思い思いの感嘆の声が上がっていた。手すりの高さは1mほどであろうか、ところどころ切込みが作られており、鉄棒の柵が設けられている。車いすの方や幼児、背の低い人たちも夜景を堪能することができる。昔はそんな切込みは無かったような気がする。1990年のADA法が施行されて以降、2005年に改築されたとガイドブックにあるのでその時に設置されたのかもしれない。いずれにしてもバリアフリーの観点から配慮させているだろうことを思うと嬉しくなる。 夜景の規模について言えば、いまでは東京のスカイツリーからの夜景であったり、お台場から見る風景も内外の観光客に喜ばれており、SNS等でも数多く発信されているらしい。従って、ロスの夜景が飛び切り素晴らしいかどうかは分からないが今更それ自体を比較する必要もあるまい。 旅の思い出の一ページに加えていただければそれもまた一興であろう。
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ほんの数日前、グランドキャニオンでは、暗闇でシカなど野生動物の眼が不気味に光っているのを見て思わずドキッとしたこと、空を見上げると中点高く青白く大きな月が森の木立を照らし、どこまでも続くまっ平らなカイバブ高原の真上の黒々とした空には星がまたたいていた。
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この上ない大自然の静けさに心休まる思いであった。そして、その後は、一気に砂漠の不夜城、歓楽の巷にネオンサインが忙しく点滅していた。そして、今、目の前には無数の宝石をちりばめたように光の渦が広がっている。数百万年をかけて大地が削られた大峡谷、その地層の一番下には地球の歴史46億年の半分はあろうかという気の遠くなるような古い岩石が露出しているという。大西部のとてつもなく広大な風景、そしてわずか1~200年で出来上がった巨大な都市群とそこに生きる様々な民族と人種から成るアメリカ、それぞれの人々が歩んできた道とこれから、様々な社会問題に直面し、解決して来たのだろう。そして、これからも新たにたくさんの難問に直面するのだろう、そして、果敢に挑んでいくのだろう。
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地球の歴史を見に行こう、と銘打って計画された今回の特定非営利活動法人ビーポップと障害者の社会参加をすすめる会で共催されたアメリカ旅行、わずか9日間ではあったが、参加された皆さんは自らが体験され、様々な側面をご覧になったことだろう。今回も皆様の楽しい旅の様子をたくさんの写真に収められたし、DVDも作られた。見直すたびに新たな感動を覚えている。
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私自身、230余回の海外添乗、その中には、広大なアメリカ各地をニューヨーク始め東海岸から中西部、南部、そして山岳地帯から大西部までかなりの州を訪れているし、グランドキャニオンも20数回訪ねている。この旅行は、「地球の歴史を見に行こう」とグループ名がつけられたが、実際には自らの旅行業務と添乗経験そのものを振り返る絶好の機会を得たことにもなる。皆様のご案内をさせていただけたことに対して改めて心よりお礼を申し上げながら、今回は筆をおかせていただきます。 資料 上から順に (ことわりのない限り、2015年9月撮影) Hollywood Sign ロスのランドマークの一つ、グリフィス公園は丘陵地の右手にある。 グリフィス天文台のテラスからの夜景見物へ急ぐ人たち。(B-POP様提供) ロサンゼルスの夜景 (1) (同上) ロサンゼルスの夜景 (2) 中央部分の高層ビル群がダウンタウン一帯。(同上) グランドキャニオンの俯瞰図(同上) ロサンゼルスのスモッグと交通渋滞(ダウンタウン)(資料 借用) 地球の歴史を見に行こう B-POP様作成DVD 表紙 地球の歴史を見に行こう B-POP様作成DVD プログラム (2017/05/15) 小 野  鎭