2017.07.20 小野 鎭
一期一会 地球旅167 地球の歴史を見に行こう リンデンハウス 秋の東北へ(9)

一期一会 地球旅 167

リンデンハウス 秋の東北へ(9) 石巻 その1

松島海岸から石巻へは三陸自動車道、途中から国道45号線へはいり全体では45分くらいであっただろうか、秋の陽射しを浴び港湾地域と大きな工場などを横に眺めながらセイタカアワダチソウなどが生い茂っている平たい土地へ入っていった。ガイドの説明では、震災とその後に襲ってきた大津波でこの町が受けた被害は東日本大震災の被災地の内、死者・行方不明は3,600名、そして経済的損失を合わせると市町村としては最大であったとのことであった。説明を聞きながら、テレビで見たあの生々しい様子が5年半過ぎたこの時、改めて脳裏によみがえってきた。震災のその後の様子は次第に報じられることも少なくなってきているが、実際の現地の様子はどうなのだろうか、今回は、松島海岸のあと、石巻市内各地で訪れることになっていた。
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その一つが、今入ってきたこの平たい空き地、かつては市の中心部の商店街や住宅地、公共用地などがあった地域であったそうな。バスから降りると目の前にポールが立っており、この地を襲った津波の高さは6.9mということが書かれていた。
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市街地中心部を大津波が襲って商店街も住宅地も様々な建物もみんな押し流し、多くの人命をさらっていったということなのだろう。一角には仮設の建物があり、震災と津波で襲われた町の様子が展示されており、こうして旅行者やボランティアなどに当時の様子を見せていた。そして、そのわきには、「がんばろう!石巻」と書かれた大きな看板が建てられていた。
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テレビや新聞等で幾度も見ているこの看板であるが、いくたびか書き直されて今に至っているらしい。そのわきには小さな慰霊の祭壇が設けられており、線香や花が供えられていた。
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ガイドの説明を聞いた後、メンバー各位が祭壇の前で深く頭を垂れて手を合わせている姿が印象的であった。 この広い空き地は、この後、かつての商店街のように再生するのではなく、震災の恐怖を後世に伝えるための記念公園などに生まれ変わるらしいとの話を聞いたが、それがそのようになっていくのかどうかはよくわからなかった。一面の空き地を通り抜けるとその向こう側には復興住宅を兼ねた7~8階建ての集合住宅が建設中であった。そして、その向こう側には3階建ての門脇小学校が今も覆いがかけられたまま立っていた。小学校の後ろ側には高台があり、7m近い津波は一帯を襲ってこの小学校も全壊、さらに火災にも遭って無残な姿を残しているとのことであった。
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この小学校では迅速な避難誘導で全員無事だったらしく、この日の夕方、訪れた同じ市内の大川小学校とは対照的であったことが一層印象深かった。 門脇地区から少し走ると川のほとりにある市内中心部へ入っていた。東北地方最大の河川である北上川の河口近くの石巻一帯は江戸時代から新田開発が進められ、かつての本流は、今は比較的小さな川になっており、旧北上川として地図には紹介されている。そして、1930年代に追波川(おっぱがわ)が北上川の本流として流れが替えられたとのこと。市内中心部には、石巻立町復興ふれあい商店街があった。
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被災した商店主が再建の足掛かりにしようと2011年12月に営業が始まったそうである。震災から5年過ぎて、途中、退去を迫られたこともあったが、結束して維持されてきたそうだ。私たちはこの一角にある屋台村で昼食を摂ることにしていた。
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ところがこの時は、日曜日のお昼時ではあったが、今は訪れる人も少ないらしく、営業している店舗は数軒しかなかった。メンバーは、グループごとに焼きそばやホットドッグ、パスタなどを注文した。私が訪ねた店は、震災直後からボランティアで訪れているうちにいつの間にかこの地に根を下ろしているが、これからもここでやっていくかどうかは分からないがとりあえず今は頑張っているとのことであった。後日譚であるが、復興ふれ合い商店街は、2016年10月末に閉鎖されたそうである。
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昼食後、そこから数分歩いて市内を抜けて川の対岸にある石ノ森満画館を訪れた。仮面ライダーシリーズで知られる石ノ森章太郎の作品を展示し、屋内テーマパーク風のこの建物は3階建てのUFOを思わせるユニークなスタイルで知られている。震災時には2階部分まで津波に襲われ大きく傷んでいたが、5年ぶりにリニューアルオープンされていた。満画館はこの町での大きな観光要素の一つであるが、その再開へ向けての財政支援には様々な議論もあったらしい。昨秋訪れた時は、かつての震災の被害を思わせるものはほとんどなく、内部はにぎやかであった。
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団体予約をするにあたり、障害者割引について問い合わせたところ、随行者も対象としていただけ、結局全員が無料で入館することができた。館内見学を終え、3階にあるカフェの窓から外を見るとやわらかい秋の陽射しを受けて北上川の川面にきらきら照り映えて眩しいほどであった。川にかかっている大きな橋は、震災後に牙をむいて昇ってきた津波に飲み込まれてしまったそうで、恐ろしい風景であったのだろうと改めて恐怖が蘇ってきた。 (以下次号とさせていただきます) (資料、上から順に 撮影は2016年10月16日) 石巻市門脇地区付近 この高さ(6.9m)まで津波が来たとあります。 慰霊の祭壇で手を合わせるメンバー諸氏。 この広い大地、実際にはこのような詩が地が広がっていたそうである。 がんばろう!石巻。 門脇地区で建設が進む集合住宅。右側後方に石巻市立門脇小学校の傷んだままの校舎。 復興ふれあい商店街で昼食。 市内中心部に建っている津波襲来の地の碑。 旧北上川のほとりに立つ石ノ森満画館。 満画館見学を終えて。 (2017/7/18) 小 野 鎭