2021.11.02
小野 鎭
一期一会 地球旅 197 ホテルアイガーからの手紙(1)
今日まで230回あまりの添乗を主として、ご案内してきたお客様や訪れた旅先での思い出話などを、「一期一会 地球旅」として、綴ってきた。数年前、196回で書きやめてしまっていた。意識的に筆をおいたわけではないが、当時は高校の同期生の旅行を2002年頃から1~2年おきに海外を主として国内も2回ほど案内しており、そんな思い出を書き、2017年の台湾が主となっていた。その翌年、喜寿記念として兵庫県城崎温泉へ京都から44名のグループで出かけたのでそのことも書くつもりでいた。1960年に高校を卒業して58年が過ぎていた。卒業時は、450名くらいいたので、そのほぼ1割の参加があったことになる。
城崎へ出かけた理由は、同期生の住まいが故郷福岡県飯塚市を主とした地域と他に関東など全国的に広がっているため、京都に集結してそこからバスで城崎へ向かうということであった。2005年にも一度、京都~城崎と旅行をしており、特に有名な西村屋へ泊った。この時の印象がとてもよく、それから後の仲間内でも評判であったらしい。今となっては圧倒的に女性の発言力が強く、西村屋での「もてなし」を今一度、喜寿記念にということで希望がまとまったのであった。折しも11月中旬とあって、日本海側ではカニのシーズンたけなわ、これも大きな期待であった。それやこれやと書くつもりであったが、そのころからメンバーの中には記憶があやふやだとか、早くも旅立っていった等の仲間情報が時々聞こえてくるようになり、寂しさを覚えるようになった。そんなわけでついつい筆が鈍ってしまったというのが偽らざる気持ちであった。
ところで、今回改めて書こうと思った理由は別にある。長年、ご交誼を頂いてきたスイスアルプスの山の村、ミューレンのホテルにまつわる話。地球旅では、幾度か書いている(例えば、No.6,40,59等)がこの村はスイス中央部、ベルナーオーバーラント(ベルン高地)にあり、有名なインターラーケンからさらにもう一歩奥に入った言わばアルプスの中腹にある小さな集落。海抜1620~50m、戸数数十戸であろうか。下手な説明はやめて、スイス政府観光局の案内を借りると以下のとおり。
「ラウターブルンネン谷にそそりたつ崖の上に鳥の巣にたたずむ山村。ガソリン車乗り入れ禁止のリゾートで、澄んだ空気とアルプスの素朴な雰囲気が保たれています。シルトホルン観光の拠点でもあり、豊富なハイキングコースも魅力です。
シュテッヘルベルクからロープウェイを乗り継いで結ぶ、007映画の舞台にもなった絶景展望台のシルトホルン観光が人気です。 以下、省略」 https://www.myswitzerland.com/ja/destinations/muerren/
ホテルやロッジ/シャレー風の長期滞在用宿舎などがあり、人々は観光業と林業や酪農などをやっており、村のたたずまいは一度訪れた人ならばまた行きたくなる、そしていつまで旅の思い出として語ってくれる印象深い村として評判。
この村に初めて行ったのは目的というよりは、自分にとっては、怪我の功名であったと言ってもいいかもしれない。自分の場合、多くは視察や研修などいわば観光以外の目的で欧州への添乗がほとんどで、それでもスイスは週末に立ち寄るようなコースを考えてユングフラウなどへお客様をご案内することが多かった。多分、ベルナーオーバーラントは50回以上訪れていると思う。70年代初めのある年、6月上旬は未だ一帯はシーズン前でインターラーケンもグリンデルワルトも一帯のホテルは未だ閉まっていたり、空いていてもほとんど満杯状態で宿探しに苦労していると現地オペレーター(手配会社)からの説明。そして、紹介されたのがミューレン、自信のないままに初めて訪れたのがホテルアイガーであった。
実際には、村の風景と言い、ユングフラウなど一帯の眺望は勿論、ホテルのもてなしも言うことなしであった。そして、強いて言えば、ユングフラウ周遊での登山電車にはふもとまで降りてまた上り直す、そんなもったいなさもあったがそれはぜいたくな悩みと言えよう。
ラウターブルンネン渓谷はU字型の巨大な谷間であり、その一方の谷の上に位置するこの集落からの眺めはまさに圧巻であり、夢中でシャッターを切る、お客様の様子を見ていると将に瓢箪から駒のような思い出が今も懐かしく蘇ってくる。
よくお客様から、どこの国が一番よかったですか? また行きたいのはどこ? と聞かれることがあるがそんなとき、頭の中ではいつもこの村の風景が思い出されていた。
宿泊、あるいは遊覧で多分この村には20回以上行っていると思うが、そのほとんどがホテルアイガーでのこと。生意気な言い方をお許しいただければ、常宿。ホテルは、シュテーリ・フォン・アルメン一家の家族経営、今では、50室くらいあるかと思うが、昔は30室くらいであっただろうか。毎回、ご案内するお客様へは心からのもてなしをしてくれ、言うに言えない満足感を覚え、誇らしい思いでグループをお連れしてきた。このホテルについて、近況をお伝えしたく、今回、地球旅をまた書かせていただこうと思った次第です。要旨は次号でお伝えします。 (以下、次号)