2022.10.05 小野 鎭
一期一会 地球旅 234 英国の伝統・文化と田園を巡る旅⑥
一期一会・地球旅(234) 英国の伝統・文化と田園を巡る旅 ⑥

ところで、英国には、現在33の世界遺産があるが、エディンバラ周辺には「エディンバラの旧市街と新市街」、鉄道橋として名高い「フォース橋」「ニューラナーク」など英国の産業発展を表すもの、あるいは「ローマ帝国の北の国境」等、5つの世界遺産があることを紹介しておきたい。ロンドン辺りでも観光や買い物で欧州のみならず、経済発展著しい中国や韓国、東南アジア諸国やアラビア半島、中南米などからの観光客も多く自分が世界中を飛び回っていた1970~1990年頃とは明らかに観光面でも多分世界中で変化がおきているのだろう。今回、この町でも昼間といわず、夜も溢れるほどの観光客を見かけた。この時は10月上旬であったが、旅行最盛期の夏、エディンバラ音楽祭などの時はホテルの確保なども大変なのだろうと思う。まさに様変わりとはこういうことを言うのかもしれない。上記、エディンバラ音楽祭の筆頭は何といってもミリタリー・タトゥーで年に一度、開催され、素晴らしいショート音楽、スコットランドの伝統が結集される壮大なイベントで、軍隊によるドラムとバグパイプの演奏が繰り広げられるという。その会場となるのがエディンバラ城、この町で繰り広げられる年最大のイベントではないだろうか。
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今回は念願かなってエディンバラ城を見学することが出来た。ここも城の中といわず外も周辺は観光客でにぎわっていた。城の入り口には、左右2人の銅像があり、スコットランド独立の英雄であるウィリアム・ウォーレスと最初の王ロバート・ブルースである。南のイングランドとは長年の確執があり、この城は数多くの歴史の舞台に成っている。イングランドの女王エリザベス1世との王位継承争いから断頭台に散った悲劇のスコットランド女王メアリー・スチュワートが後にスコットランドとイングランド両国の初の統一王となるジェームス6世(イングランドでは、ジェームズ1世)を生んだのもこの城であるとか。 スコットランドは我々がイギリスと呼ぶ英国(グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国)を構成するカントリーの一つであり、かつては「スコットランド王国」であった。
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大国イングランドより国力は劣ってもスコットランドは不屈の精神で戦い抜いてきたという。両国の国境となるトゥイード川からそれほど遠くなく、「エディンバラ」を制する者はスコットランドを制するといわれた。城は抗争が絶なかったといわれてきたことがよくわかる。そんな歴史の中でとりわけ尊敬を受けているのがウィリアム・ウォーレス(1270?~1305)とスコットランド国王となったロバート・ブルース(1274~1329)といわれ、この二人がこの城の入り口にはめ込まれて城の守護神のごとく飾られている。この城で説明を受けていた時はあまり良く覚えていなかったが、つい先ごろ映画「ブレーブハート」を見た。映画では、ウィリアム・ウォーレスを主人公としており、ロバート・ブルースも重要な役で登場している。この映画は、1996年にアカデミー賞を5つ受賞したと紹介されており、史実を知る上からも幾度かこの映画を見直し、興味深く感じた。 城内に入って行くと、たくさんの見物客がいた。その中に電動車いすで見物している人もいたので興味深く、少し見守っていた。城内は石畳に加えてかなりの傾斜のあるところもある。
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あとでAccess Guide for Edinburgh Castle という案内が有ったので読んでみた。1000年以上も前から造られ始めており、幾多の戦いの場となっており幾度も築城され直しているのだろう。それを思うと、バリアフリーだとかユニバーサルデザインという観点は後世になって出てきた考え方。それでもどんな配慮がなされているか興味深く、知りたいと思ったのである。それを見ると、城の入り口からお城の一番奥のクラウン広場までは、350mあり、車いす、電動車いす、電動スクーターなどの場合、城の入り口までの通りは最大15度、城内も平均すると5度の傾斜があること、城内の歩道は、小石が敷き詰めてあるので注意して行動してほしいこと、入場券を販売している案内所や売店では段差はないこと、入場券売り場の右側には多目的トイレがあること、となどが書いてあった。重要文化財的な存在であるので可能な範囲のBF化はされていてもむつかしいところもあるのかもしれない。
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さて、城内に入ってみると7世紀に造られた砦がこの城の起源であるが幾世紀にもわたる歴史の中で戦いに明け暮れており、現在の建物は、18世紀にノルマン様式で再建されたととある。ちなみに最古の建物は、聖マーガレット礼拝所であり、1110年に建てられており、ノルマン様式のアーチの入り口が印象的と案内にある。王宮には、王冠や王錫などのほか、運命の石(スクーンの石=Stone of Scone)が展示されていた。大きさは、66 x42 x27x10cm位いで重量は、150kgs余りらしい。代々のスコットランド王の戴冠式はこの石が玉座の下に置かれて行われたそうである、ところが、1296年にイングランドに奪われ、ウェストミンスター寺院に置かれ、カンタベリー大主教の祈祷の下、イングランド王の戴冠式に用いられてきたそうである。 この石は1950年にグラスゴー大学の学生などによって盗み出されてスコットランドに持ち帰られたが、2年後にいったんウェストミンスター寺院に返されたとのこと。1996年、ブレア政権当時、700年振りに公的にスコットランドに戻され、以後この城内のこの場所に置かれている。この程、エリザベス女王が亡くなり、チャールズ3世が王位を継承されたが、戴冠式はいつ行われるのだろうか、戴冠式には、エディンバラ城に置かれているこの「スクーンの石=運命の石」が、ロンドンに運ばれるのであろうか?自分としては、実際にその石を見てきただけに興味津々でこれから先を楽しみにしている。(以下、次号)   写真&資料(上から順に) エディンバラ城入口にて(2013年10月5日 撮影) エディンバラ城入口のスコットランド建国の勇者(右 ウィリアム・ウォーレス 左 ロバート・ブルース Tripadvisor 資料より借用) 聖マーガレット礼拝所(2013年10月5日 撮影) スクーンの石 The Stone of Destiny (Edinburgh Castle 資料より借用)