2023.01.05 小野 鎭
一期一会 地球旅 243 英国の伝統・文化と田園を巡る旅⑮
ストウ・オン・ザ・ウォルズでの小休止後、30~40分ドライブしてブレナム宮殿に着いた。18世紀、スペイン継承戦争における戦闘の一つであり、イングランド・オーストリア(神聖ローマ帝国)同盟軍とフランス・バイエルン選帝侯領連合軍が現在の南ドイツのドナウ川流域にあるブリントハイム(英語名ブレンハムまたはブレナム)で戦い、イングランド・オーストリア同盟軍が勝った戦いである。イングランド・オーストリア同盟軍の総司令官マールバラ公ジョン・チャーチルがフランス軍(時のフランス国王はルイ14世)相手に大勝利したとして知られている。イングランド・スコットランド王国の時の国王であるアン女王はこの大勝利に対する恩賞としてマールバラ公にオックスフォードシャーの領地を下賜、邸宅建築の資金提供も決定された。この場所に建設されたのがこの戦いの名称に因んでブレナム宮殿と名付けられたとのこと。

 
当日の宮殿内見学は、予め時間が設定されており、それに合わせて見学コース入口に並ぶことになっていた。バスを降りてそこまでの距離はかなりあり、先ほど、ストウ・オン・ザ・ウォルズで小休止した時間の付けが回ってきて宮殿前の広大な庭がちょっと恨めしかった。平日であったが、かなりの見物客が並んでいた。それでもそれほど待たされることなく、入場することが出来た。
 
 本館と柱廊でつながった2つの翼棟から成る壮麗なこの宮殿は部屋数200以上があり、英国・バロック建築を代表するものとして、1987年に世界遺産に登録されている。庭園の面積は2,000エーカー(800ha)あり、これは日本の皇居の約3.5倍あるらしい。宮殿は1705年から17年かけて建設され、1722年に完成した。ブレナム宮殿を評価する上でこの庭園が大きな要素となっており、当初は英国式庭園であったが、その後、幾度か模様替えされ1925年から32年にル・ノートル様式(ヴェルサイユ宮殿などを建造したフランス造園家)のフランス式に改造され現在に至っている。

 アン女王から下賜されたこの広大な領地と宮殿の規模は、多分、現在では考えられないほどの規模であり、マールバラ公は、1706年のラミイの戦いでも再びフランス軍を破っており、オランダからフランスを追放している。マールバラ公夫人であるサラ・ジェニングスはアン女王の親しい友人でもあった。このことなども幸いしているのだろうか。それにしても、論功として下賜されたご褒美の大きさには只々驚くのみである。
 ところで、20世紀の英国の首相ウィンストン・チャーチルはマールバラ公ジョン・チャーチルの子孫であり、1873年にこの宮殿で生まれている。宮殿見学のコースの中では、W・チャーチルが幼少期を過ごしたという部屋も含まれていた。

ブレナム宮殿からオックスフォードの市街までは20分くらいであったがこの日は、午前中のプログラムがいくつかあったので、少し遅めの昼食として午後1時近くであった。名門オックスフォード大学はいくつかのカレッジから成る総合大学だそうであるが、キャンパスは市内中心部に点在している。今回は、この大学のキャンパスやこの町の名所を見学する予定は含んでおらず、昼食のみをとることにしていた。市内中心分まではバスで入れたが、分かりやすいところでバスをおり、ドライバーと午後の出発時間を打合せして歩いてレストランへ向かった。中心街はかなりざわついていたが、それでも予定通りこの日のレストランに行き着くことが出来た。前日と違ってこちらはわりにモダンな店内であった。オックスフォードを卒業するとエリート階級に進む人が多く、弁護士や学者、ビジネスマンはその代表であろう。店の名前は、「Wig & Pen」つまり「カツラとペン」であり、多分、弁護士と学者を表しているのだろうとおもうが、混んだ時間で店員にそこまで聞く余裕はなかった。ビジネスランチスタイルの軽い食事を終え、30分ほどフリータイムをとってバスの下車地点に集まることになっていた。道に迷う人もなく、予定通り再集合。いよいよ最終目的地ロンドンへ向かった。

ロンドンへのMotorway M40での交通量は多かったが、渋滞することもなく約2時間のドライブ。午前中のブレナム宮殿と昼食、大型バスの心地よい揺れは午睡のひと時。ロンドンは初めてという人がほとんどであったが、旅慣れた人が多く、世界有数の大都会であっても、それほど大きな驚きは感じていなかったような気がする。赤いダブルデッカー(2階建てバス)、普通の乗用車より一回り大きなロンドンタクシー、地下鉄マークの「Underground」、交差点で信号を待つ人も次第に増えていくのを見ると久しぶりに大都会に戻ってきた、そんな懐かしさと慌ただしさを感じながらのロンドン到着であった。
 
 エディンバラから湖水地帯、リヴァプール&チェスター、アイアンブリッジ、コッツウォルズ地方を周って、1,000㎞余、3泊4日の英国縦断のバスツアーはここで終わり、運転してきたドライバーとはここでお別れ、無口ではあったが必要に応じて窓外の風景について説明してくれたり、家族について話してくれたり、好感の持てる人物であった。ロンドンは明日の市内見学、明後日のフリータイム、そして3日後の夕方、帰国の途に着く。最後まで楽しい旅でありたい。(以下、次号)
 
写真&資料(上から順に)
*  ブレナム宮殿 : Wikipedia&世界遺産大事典を参考に記述
Blenheim Palace : Experience Oxfordshire資料より
ブレナム宮殿前にて (2013年10月9日 筆者撮影)
宮殿前の池(宮殿敷地内) :(2013年10月9日 筆者撮影)
Wig and Pen : Key to the City of Oxford 資料より
ロンドン市内 ダブルデッカー(2階バス)とタクシー
(2013年10月9ノ日 筆者撮影)