2023.02.27 小野 鎭
一期一会 地球旅 250 英国の伝統・文化と田園を巡る旅㉒
一期一会・地球旅 250
英国の伝統・文化と田園を巡る旅 ㉒
ロンドン その7 市内観光(5)
午後は、大英博物館(The British Museum)に入った。パリのルーブル美術館などでもそうであるが、グループで博物館などに入るときはときは、お客様側から特別のご希望であるとか何らかの要望が出されていないときは添乗員がガイドにグループの性格や特徴などを伝えて、見学コーナーなどの見当をつけてもらうことになる。世界最大級といわれる大英博物館には、個人の収蔵品などの寄贈によるものや公的に得られたものなど世界中から集められた800万点ものコレクションがあるというから驚きである。医師であり、科学者でもあったハンス・スローン卿のコレクションをもとに設立され、現在の敷地内にあるモンタギュー・ハウスで1759年に初めて一般公開されたそうである。日本で言えば徳川時代中期である。アイザック・ニュートンの後を継いで王立協会会長始め、古美術収集家として知られたスローン卿は遺言で、政府が博物館を設立することを条件として、自身が収集した蔵書・手稿・版画・硬貨・印章など8万点をイギリス政府に有償で寄贈することを指示した。その後、イギリスの植民地化が進んだこともあり、膨大なコレクションとなり、この博物館は次第に大きくなり、いくつかの分館が設立されていった。

 大英博物館も、英国の他の国立博物館と同様に入場料は無料である。ただし、入館者に寄付を呼び掛けていた。2013年のこのときは、望ましい寄付金として一人当たり、5£(約750~800円)と書かれていた。2000年には、かつて大英図書館があった場所に巨大で現代的なガラス張りの天井がある中庭、グレート・コートなどが付け加えられた。250年以上も前に建てられて建物が増改築されて世界一ともいえるこの巨大な博物館となっているのだろう。日本の版画や浮世絵なども多数収蔵されていると聞いているが、企画展として2013年10月から3カ月間、春画が特別展示されているとの案内も出ていた。
 今回は、ギリシャ・エジプトのコーナーを回り、いくつかの興味あるコレクションを見学した。一つは、ギリシャ・アテネにあるアクロポリスの神殿の貴重な彫刻、エジプトのコーナーには、よく知られているロゼッタ・ストーンがある。我がメンバーの中には、高校時代の世界史の教科書にあったことを思い出しながら、「これがそうなんだ」としみじみ見入っている人もいた。ところで、文化財返還問題は近年よく聞く話題であるが、このロゼッタ・ストーンについてプトでは返還要求嘆願書に多くの署名が寄せられているとか。

 個人的な興味としていくつかのことがあった。一つは、古代エジプトのアメンホテップ三世の大きな石像。子どもの頃よく読んでいた山川惣治の「少年王者」にでてくるスフィンクスのような怪人の名前がアメンホテップであった。この話の主人公の少年がジャングルなどで危機に陥ったときにはアメンホテップが出てきて、彼を助けてくれたのでほっと安心したことを思い出す。70数年前の話である。作者山川惣治は、大英博物館に展示されていたこの石像からヒントを得ていたのであろうか?
 もう一つは、館内のバリアフリー化である。エレベーターは勿論設置されているが、同じ階であっても見学しやすいようにと床に段差がつくられているところもあった。ところがこれについてはスロープがほとんど見られず、昇降機が設置されていることが多かった。

そして、最も印象深いことは、大英博物館設立の発端が、医師でもあり、科学者であったハンス・スローン卿ということである。私自身の初めての世界一周の添乗経験は、1969年、海外医療事情視察団(全国自治体病院協議会)、33日間であった。このとき、ロンドンで泊まったホテルはスローン・スクエアにあり、同名の通りにも面していた。今回、大英博物館について調べているうちにハンス・スローン卿のことを知った。18世紀の中頃、このあたり一帯は、ハンス・スローン卿所有の土地であったそうで卿の名前がそのままこのあたりの通りや広場にも残っていることを知った。初めての世界一周であり、ロンドンで泊った高級ホテルが印象に残っている。その後、ホテル自体は名前が変わっているがこのホテルがあったスローン・スクエアは今もそのままある。同名のチューブ(地下鉄)の駅もあるし、バスで通り抜けることもある。半世紀以上も昔のことであるが、この場所のことは妙に強く覚えている。(以下、次号)
(写真と資料、上から順に)
大英博物館 正面 : 2013年10月10日 筆者撮影
大英博物館の入口にあった寄付の呼びかけ案内 : 同上
大英博物館 Shunga展の案内 : 同上
大英博物館 ロゼッタ・ストーン(エジプト・コーナー) : 同上
少年王者の挿絵 怪人アメンホテップ :BIGLOBE 資料より
大英博物館 アメンホテップ三世(エジプト・コーナー): 2013年10月10日 筆者撮影
ギリシャ・コーナーにあった昇降機 : 同上 
スローン・スクエア : Visit London 資料より