2023.05.17 小野 鎭
一期一会 地球旅 261 カナダの大自然と遊ぼう5
 一期一会・地球旅 261 
 カナダの大自然と遊ぼう ⑤ バンクーバー ③ 
 
 明けて、バンクーバー2日目の朝、メンバーは全員がグラウス・マウンテンに出かけられることになった。ダウンタウンの中心部、バラード入江に面したカナダ・プレイスからツアーバスが出ており、これで行くのが手っ取り早く経済的な方法だと思われる。2009年に来たときは、メンバーの年齢層も高く、一方で障がいの度合いが重くて同行されている家族も年齢が高かった。そこでグラウス・マウンテンとカピラノ渓谷という景勝地を組み合わせて地元ガイドに来てもらい貸切バスでの遊覧であったが、今回の皆さんはもっと行動的。旅慣れている方が多いことと日頃から「楽しいことをたくさんやろう!」と遊びやゲームを取り入れた活動をしておられ、そのスタッフが数名同行されている。一般のツアーに自ら参加されるとか、自分たちで工夫してよりアトラクティブなプログラムを考案し、皆さんで行動されることが多い。添乗員としては、より最新の情報を集めることや側面から支援するとか、現地側との交渉をより効果的に進めるなどが主たる業務になる。 
 
 カナダ・プレイスは1986年の万博でカナダ政府館として使われたバンクーバーのシンボル的存在。目の前には大型のクルーズ船も停泊している。北米西海岸のクルーズ船としてはアラスカ方面へのツアーが多く、ここバンクーバーとアメリカのシアトル発着が多く、春から秋にかけて賑わっている。その向こうの海上には水上機が頻繁に発着している。水上のガソリンスタンドならぬ航空燃料のスタンドもある。バラード入江を見渡せるホテルに泊まると朝から夕方まで航空機が離発着しているのを見かける。海岸線が複雑に入り組んでいるBC州のこのあたり一帯は陸上移動もさることながら自動車などと同様に水上機が多く使われているとのこと。 
 
  グラウス・マウンテンはノースバンクーバーにある標高1250mの山、バンクーバーの市街と一帯になった風景が素晴らしいだけでなく、頂上付近がテーマパークになっている。スカイライドと呼ばれるロープウェイで行くことが出来るので旅行者にも人気の場所となっている。なだらかな尾根伝いに森が広がり、自然を生かしたレジャースポットは老若男女で賑わっている。ダウンタウンからノースバンクーバーに行くとき広大なスタンレーパークを抜けてライオンズゲートブリッジを渡って30分足らずで行ける。ノースバンクーバーはバラード入江をはさんでダウンタウンと向かい合っており、グラウス・マウ
 ンテンの山なみが背後にそびえ、ふもとまで緑豊かな森林におおわれている。住宅街が広がる一方、製材所なども多く貨物列車がたくさんつながっているのも特徴と言えるかもしれない。 

 カナダ・プレイスから山のふもとまでツアーバスで行き、海抜1128mの山頂駅まで行く。グラウス・マウンテンのツアーは、ツアーバスの片送り分を含めてCA$65(約5900円)位であったと思う。現在はスカイライドだけで往復CA$69とある。約7000円近くになるので高価であることに驚く。もっともこれはロープウェイの乗車賃だけでなく、頂上付近に広がるレジャースポットのアトラクションとして木彫、バード・ショー、ランバージャックショー(木こりショー)、グリズリー・ベア(灰色ぐま)見物なども含まれていることが真相らしい。レジャーランドの維持管理費が含まれているということだと思う。日本の一例と比較すると、東京・新宿からの箱根フリーパスが6100円位(ロマンスカーは追加料金要)で箱根一帯の電車やバス、ケーブルカーやロープウェイなども乗り降り自由とあるのでこちらがずいぶん安いということになる。昨今、日本の諸物価が値上がりしているので私たちに大きな負担が生じているがこれは諸外国も同様であろう。英国やスイスの交通費などが高いことは常々感じてきたがカナダも同様であることを思うと改めてもう一度調べてみようかという気になっている。 
 

 山頂からの眺めは見事であった。昨夜来の雨は明け方には上がったらしく、今朝こちらへ向かう頃には青空も広がり始めていた。カフェを兼ねた展望台に立ってみると雲間からバラード入江やダウンタウンのビル街の美しい風景が広がっていた。メンバーは三々五々山上一帯のレジャースポットに散らばり、楽しいひと時を過ごしていただけた。自分は?と言うと、前夜遅く病院から帰館したこと、到着第一日目とあって、結果的には盛りだくさんの業務となったことで疲れも加わっていたからであろうか積極的に動く勇気も出ず、ベンチに座って皆さんの集合を待った。正直なところ、体力の減退も覚え、添乗業務としては限界が近づいているのだろうか、と悔やまざるを得なかった。その後、再び全員がスカイライドでふもとへ戻り、今度は乗り合いバスでロンズデール・キー(ロンズデール河岸)へ向かった。Sea-Busでバラード入江を渡ってウォーター・フロント・ターミナルからスカイトレインでひと駅、グレンビルで下車、ホテルの目の前であった。バンクーバー市内の公共交通機関は市バス、スカイトレイン、シー・バスなどがあり、いずれも車いすマークが分かりやすく表示されており、利用しやすい。多くのタクシーも車いす対応である。都心のビル街はもとより、公園や緑地などの階段もスロープが悠々と設けられており歩きやすい。中心街は誰もが動きやすく、ユニバーサルデザインを意識した街づくりが為されているのだろう、というのが素朴な印象である。(以下、次号) 
 
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(写真と資料、上から順に) 
ライオンズゲートブリッジとノースバンクーバー方面 2009年9月2日筆者撮影 
グラウス山へのスカイライド(ロープウェイ:この日は、雲なかへ消えていた) 
2009年9月2日筆者撮影 
グリズリー・ベア(灰色ぐま)はデカい! : 同上 
山頂のカフェで一休み 2019年9月18日 筆者撮影 
シー・バスからのぞむダウンタウン方面、右端がカナダ・プレイス一帯 
2009年9月2日 筆者撮影 
バンクーバー市内中心部の緑地に見る階段とスロープ 2009年9月2日筆者撮影 
階段とスロープは市民憩いの場、清掃用のカート車にも重宝 同上 筆者撮影