2023.07.18 小野 鎭
一期一会 地球旅 270 カナダの大自然と遊ぼう14
 一期一会・地球旅 270 
カナダの大自然と遊ぼう ⑭ カナディアン・ロッキー ④ 
 
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 地図を見るとカナディアン・ロッキーの谷間には、大小の湖がある。大多数は氷河湖であり、三日月のように整ったかたちのものもあれば、谷間を細く長く川のように入り組んでいる湖も多い。そんな中で、とりわけ有名なところがレイク・ルイーズであろう。ガイドブックを見てもバンフ、コロンビア・アイスフィールド、ジャスパーなどと並んでレイク・ルイーズにも同等の見出しが付けられていてそれぞれに説明があることが多い。レイク・ルイーズは、バンフからトランス・カナダ・ハイウェイを走って北へ約60㎞、ビクトリア山(3464m)に代表される山々のふもとに位置し、エメラルドグリーンの湖面には氷河をいただく山々が映っており、赤いカヌーがゆったり浮かんでいる光景はまさに一幅の絵のようである。 
 
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 ガイドブックのParkways of the Canadian Rockies にこの湖が紹介されている。(以下、要約)1883年の夏、カナダ太平洋鉄道(CPR)建設のため、このあたりを探検調査していたTom Wilsonは雪崩が起きて大きな音が響いたのを聞いた。調査に同行していたストーニー族のEdwin Hunterが、あの轟音はこの山の奥にある「小さな魚の湖」の上にある大きな氷河が崩れる音だという。二人は、音の源を確かめるためにさらに奥へ進んでいったところ、やがてウィルソンが見た光景はまさに荘厳、そして感動そのものであった。彼は、先住民族が呼んでいた小さな魚の湖では、物足りず、「エメラルド湖」と名付けた。しかし、カナダ地理委員会は、この秘境にある宝石のように美しい湖の存在を知ると、その名前はさらに改められた。時のカナダ総督であったローン侯爵の妻であり、ビクトリア女王の娘であるルィーズ・キャロライン・アルバータ王女の名をとってレイク・ルィーズ(Lake Louise)と呼ばれることになった。この湖の奥にそびえる高峰はMt. Victoria であり、その谷間にかかる氷河も同名のビクトリア氷河。いずれも発見は1880年代、カナダが大英帝国の自治領として大きく発展していた時代であり、ビクトリア朝に敬意を表したということであろう。(この項は、小野の解釈) 
 
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 その後、レイク・ルィーズの名は急速に広がり、CPRはビクトリア山と氷河が湖面に美しく照り映える絶景を背景に岸辺にシャレーを建設、アメリカや英国から訪れる登山家や観光客などがここを根城として、この地を楽しむようになり、次第にChateau Lake Louiseは大きくなっていった。 と
 ころが、シャトーは1924年に火災で大部分が焼失した。その後、建設されたのが現在みられるシャトー・レイク・ルィーズである。さらに増改築が繰り返され、現在では1千人が宿泊できる大規模なホテルとなっており、駐車場の拡大、湖畔の庭園の整備、カフェやレストラン、ショッピングエリアの拡充などで宿泊客だけでなく、日帰り観光客もたくさん訪れることのできるカナディアン・ロッキーのなかでも有数の観光スポットとなっている。 
 
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 メンバーは、ここでカヌーに乗ることが大きな目的のひとつ。うまく乗れるかどうかを左右する条件の一つに天候があった。幸い、この日は朝から快晴、風もほとんどなく湖面にはビクトリア山と氷河がきれいに映り、誰もがカヌーにぜひ乗ってみたい、そんな気にさせる心地良さを覚えた。3人ずつグループを組んで、それぞれに救命胴衣を着けてカヌー乗り場のスタッフから説明のあった注意事項を確認し、一艘ずつ漕ぎ出していった。事務局のN氏は、カヌーが趣味、経験も豊富であり、氏の指導もきっと活かされているであろう。それぞれのグループは見事なオールさばきで湖の中ほどへ快調に進んでいった。岸辺では、彼らの声はほとんど聞こえなかったがとても楽しそうな様子が見て取れたので本当に素晴らしいひと時を過ごしていただけたのだろうと思う。N氏は、撮影やビデオ制作面でも高度な技量を発揮しておられ、毎回の旅行では、メンバーが本当に旅を楽しんでおられる様子をビデオに収めて素晴らしい旅の記録をまとめておられる。毎年恒例のDream Decemberという年末のパーティーで一年間の歩みが紹介されるが旅行記録はその中でも人気の一コマである。今回は、360度カメラも持参され、いつもよりさらに臨場感のある豊かな情景が加えられていた。 
 
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 シャトー・レイク・ルイーズは、この地での宿泊施設として人気があるだけでなく、美しい風景と庭園、ショッピングエリア、レストランやカフェなど宿泊客だけでなく、日帰りの観光客やハイキング客なども楽しめる場所となっている。駐車場もさらに拡充されており、自然保護とユニバーサル・デザインを意識したトイレや休憩のための施設や配慮がなされており、バンフ国立公園の中でも有数の観光スポットとなっている。自分も6月、そして9月に数回、つまり夏の始めと初秋に訪れたことが多いが、訪れるたびに湖畔に集う観光客の数が増えていることを感じている。(以下、次号) 
 

(写真と資料 上から順に) 
レイク・ルイーズとビクトリア山&ビクトリア氷河 : 2009年8月30日 筆者撮影 
発見から約50年後、レイク・ルィーズ湖畔で憩うトム・ウィルソン 1930年、湖畔にて : 資料と写真:Parkways of the Canadian Rockies より 
レイク・ルィーズ・シャトー 1909年 : 資料と写真 : Parkways of the Canadian Rockies より 
レイク・ルィーズでカヌーを楽しむメンバー : 旅行実施団体制作の動画より 
シャトー・レイク・ルィーズ : 2019年8月19日 : 筆者撮影