2024.04.22
小野 鎭
一期一会 地球旅 309 中南米での思い出 16
一期一会・地球旅 309
中南米での思い出 (16)
ブラジル(7) イグアス・フォールス
ブラジルは72~75年に計3回訪れたと書いたが、2~3回目は続けてイグアスへ行き、そのまま陸路でパラグアイの首都アスンシオンへの移動であった。ブラジル中南部の西端にはイグアスの滝があり、周辺はアルゼンチンとの国境を成し、国立公園となっている。アメリカの32代大統領F.Dルーズヴェルトがこの地を訪れたとき、エリノア夫人がイグアスの滝を見て、記者からナイアガラ瀑布と比較してどう思われますかと質問され、Oh poor Niagara!(かわいそうなナイアガラ!)と言ったとか。筆者もナイアガラ瀑布は幾度も訪れており、行くたびにすごい規模だなとは思うが、イグアスに見る滝の連なりには圧倒された思いであった。もっとも米加国境にあるナイアガラの滝はカナダ側の方が規模は大きいが・・・ もう一つ、アフリカ南部のザンビアとジンバブエの国境にヴィクトリアの滝(モシ・オ・トゥニャ)があり、これを含めて世界三大瀑布と呼ばれている。一方、南米にはヴェネズエラのカナイマ国立公園に落差979mのアンヘルの滝があり、こちらが高さとしては世界で一番高いそうであるが滝の規模としてはやはりイグアスが大きいということであろう。
74年の時は、サンパウロから、翌年はリオからイグアスへ飛んだが共に国内線で2時間~2時間半であった。偶然であるが、二度ともイグアスからパラグアイのアスンシオンへは陸路で移動している。この沿線にJICA(国際協力事業団)の現地事務所や日本人入植地であるとか牧場、養蜂場などがあり、これらの現場を見学することが主たる目的であった。イグアスはブラジル中南部の西端に位置することを前述したが、南米第二の大河ラ・プラタの支流パラナ川を挟んでパラグアイとの国境近くにある。パラナ川の支流イグアス川がここで合流している。イグアス川はブラジルのセラドマル山脈を源流として全長約1,200kmある。パラナ川に合流する手前で大きく屈曲し、このあたり一帯には大きな段差があるため、切り立った崖から大小275の滝となって流れ落ちている。この滝の密集地帯がイグアス滝と呼ばれており、全体の滝の幅は2,700m以上、最大落差は80mで世界最大の水量を誇る。一帯は滝だけでなく大瀑布が生み出す動物たちが生息し、生物多様性が高く評価されており、アルゼンチンは1984年、ブラジルが1986年にユネスコの世界遺産として登録されている。
当時は、ホテルなどの宿泊施設は主としてイグアスの町など周辺にあり、滝の近くにはDas Cataratas Hotel(Catarata=大きな滝の意)以外にはそれほど大きな宿泊施設はあまりなかったが幸いなことに2度ともそこに宿泊した。このほど、ホームページを開いてみたところ、Das Cataratasは、Belmond 系のホテルとして5つ星が付されている。滝見物であるが、ホテルから滝までは遊歩道を抜けて展望台まで亜熱帯気候の豊かな樹林を抜けていくとやがて次第に耳をつんざくような水音が響き、前後の人との会話もままならないほど。目の前にひろがるまさに滝だらけの風景に圧倒される感動を味わったことを思い出す。遊歩道の途中からは遊覧船に乗って激流をさかのぼっていくと馬蹄形に広がる最奥部が最大規模の滝となっており、想像を絶する水量で常に轟々(ごうごう)と音を立てており、通称ガルガンタ・デル・ディアブロ=Garganta del diablo=「悪魔ののど笛」と呼ばれている。滝見物は頭から足先まで汗と水しぶきをかぶってビッショリになる。ホテルに帰ってもう一度、シャワーを浴びたことが懐かしい。イグアス川と言い、滝の水と言い、いずれも赤褐色であるが、ラテライトという酸化鉄や酸化アルミニウムを含んだ土地の地盤を削っていることによりこのような色となっているとのこと。写真に見る水の色はいずれも赤褐色であるが、これは写真が古いことからきている色の変化によるものではないことをおことわりしておきたい。
夕食後、現地ガイドの案内で多くの団員がパラナ川にかかるPuente Internacional Amistad = Friendship Bridge=「友情の橋」を渡ってパラグアイのカジノ・アカレイに行ってギャンブルを楽しまれた。自分も少しだけ運試しをやったが勝ったという記憶はない。残念ながら、友情の橋とは名前だけであったらしい。(以下、次号)
《資料》
・イグアス国立公園 : 世界遺産アカデミー すべてがわかる世界遺産1500 中
《写真》(上から順に)
・イグアスの滝 (1974年4月7日 筆者撮影)
・イグアスの滝をバックに立つ筆者 (1974年4月7日 撮影)
・ガルガンタ・デル・ディアブロ(悪魔ののど笛)(1974年4月7日 筆者撮影)
・上空から見たイグアス川とイグアスの滝 (1974年4月7日 筆者撮影)