2024.07.08 小野 鎭
一期一会 地球旅 319 オーストラリアの思い出(4) メルボルン4 児童福祉海外研修(続き)
一期一会・地球旅 319 
オーストラリアの思い出(4) メルボルン④ 児童福祉海外研修(続き)

オーストラリアでの研修は前年の米国コロラド州デンバーでの集中プログラムでの成果が意識されたのであろう、メルボルン郊外にあるセント・ジョンズ少年少女の家(St. John’s Homes for Boys and Girls)が受け入れ主体となって1981年11月16日から29日までの2週間にわたって実施された。この事業体では、メルボルン市近郊で施設養護、予防ケア、重度障がい児などへの対応など多様なサービスを展開されていた。前身は、第一次大戦後、英国で溢れ出る戦争孤児がオーストラリアに移送されて彼らを受け入れるために1921年に英国国教会(聖公会)系の児童養護施設として設立された。やがて1958年に前述の施設となり、66年にはそれまでの大舎制の養護施設形態を改めて順次グループホーム型に移行、その後、地域分散型の児童養護を推し進め、一方では予防福祉なども開始されていた。

 この時の研修団の団長であった飯田進氏は報告書にこの研修の目的として次のように書いておられる。「児童養護の将来展望を考えるとき、従来のワンパターン式の養護施設としてはすでに児童の持つニーズに適切な対応が困難であるように思われる。従って、硬直化した傾向から思い切った発想の転換をさせる必要があるのではないか。(中略)そこで研修の主体として次の4つのテーマを柱とした。1)分散小舎制に至る史的考察、2)分散小舎制の運営機構、3)養護内容とその実態、4)施設と地域社会との関係」 
 
 今から40年以上前の80年代であるが、「養護施設自体、時代の社会的養護機能として対応するべく、厳しく質的転換を迫られているように思えてならない」と書いておられ、こうした時代的要請に対処しようと苦慮する養護施設の将来展望と児童養護のネットワーク化の在り方を求めてさらに多くを学ぼうとされた姿勢がうかがえる。このような観点からSt. John’s Homesで展開されている多様なプログラムは大変興味ある内容であったと思われる。この研修が行われてからすでに40年余りの時が流れており、当時のメンバーは施設長や理事長職であるとか、あるいは児童養護にかかわる様々な場で活躍されていると思うが学びの多い経験であったと思う。 

この事業体は、メルボルン市の東郊10㎞位に位置するカンタベリー市や周辺地域においてファミリー・グループ・ホームを置き、学童を対象としたコテージ(Cottage)、低学年の児童を対象としたユニット(Unit)があり、それぞれのホームでは家庭的雰囲気を大切にして児童を擁護することとしていた。それぞれのホームには6~7名が入り、コテージマザー(Cottage Mother)が居て児童はこのホームに住み、地元の小中学校などに通っていた。いわば少し大きな家庭といったところであろう。児童が養護されていた理由は、親たちの疾病、疾病、離婚、虐待であるとか、あるいは親の手に負えない児童たちが主であった。 

ケア・フォース(Care Force)も興味ある仕組みであった。要保護児の発生を予防し、地域の家庭の児童の養育に関する援助をするための専門職による福祉サービスが行われていた。ソーシャルワーカーがリーダーを務め、指定区域内の家庭における児童の養育相談、指導例えばカウンセリング、養育費など経済的な問題に関すること、あるいは緊急一時保護などがあった。特に様々な国から来た移民の多いこの国の特徴である多くの民族や人種の持つ多文化を理解しながら対応するためには英語以外の言葉、たとえばギリシャ語、東欧系の言語、中国語などを介する専門職などを含めたエスニック・ケア。フォース(Ethnic Care Force)は重要な役割を背負っていたと思われる。 
 
 もう一つは、インターチェンジ(Interchange)というプログラムであった。重度の障がい児をかかえる親が、一時的な休息や自由な時間が得られるように週末や休日に障害児を委託できるプログラムである。インターチェンジでは、ボランティア家族を募ってその家族に専門的な指導を行い、このサービスを普及させていた。後年、レスパイトケアと呼ばれるプログラムとして日本でも行われるようになったサービスの一つの形であろう。この仕組みには、筆者自身、個人的にも興味が深く、この数年後、重度障がいのある方々のグループをメルボルンへお連れする大きなヒントとなり、この施設の総合施設長エリス師などには格別お世話になった。このことは改めて書かせていただこう。
 今日、日本でも児童養護に携わる施設は全国に612か所あり、2万7千人の子供が入所しているとある。各施設のリストを見ると、中核となる生活の場と地域などに分散しているグループホームなどから成っていることがうかがえる。これらの施設は、「親からの虐待(暴力的、精神的)、育児放棄(ネグレクト)、経済的な理由、孤児、何かしらの理由により、子ども達が暮らしている場所です」(一般財団法人 日本児童養護施設財団資料より)とある。子どもを取り巻く環境は洋の東西を問わず、今も変わっていないことがうかがえる。(以下、次号) 
 
《写真、上から順に》 
・セント・ジョンズ・ホームズ本部(Canterbury, Victoria)(Find & Connect, Victoria資料より) 
・1981年度 資生堂児童福祉海外研修団 後列左から4人目 F.ビア氏、左端 筆者1981年11月撮影 
・セント・ジョンズ・ホームズ、Molly House(ホステル) (Find & Connect, 
Victoria資料より) 
・ケア・フォース North East Regional Office  1981年11月撮影 
・セント・ジョンズ・ホームズ、コテッジ見学 1981年11月撮影