2024.11.05 小野 鎭
一期一会 地球旅 335 ニュージーランドの思い出(4)クライストチャーチから3  ワナカにて
一期一会・地球旅 335 
ニュージーランドの思い出(4)クライストチャーチから③ 
ワナカにて
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 この日は、クィーンズランドで何か催し物があったのか、宿が取れずここからさらに北へ70km貸切バスで1時間半ほど走ったもう一つの氷河湖Lake Wanakaのほとりにあるワナカに宿泊した。ワナカまでは、途中、荒涼たる風景が広がっており、羊が草を食んでいるお馴染みの風景が見え隠れしていたと思う。ワナカ湖一帯は、当時、日本では多分まだほとんど知られていないリゾート地であった。少々不安でもあったが実際に訪れてみると湖とその向こうに横たわる白銀の峰々はさながら一幅の絵画のような美しさでありご機嫌な眺めであった。一帯は、Mount Aspiring N.P.(マウント・アスパイアリング国立公園)となっている。宿泊したWanaka Edgewater Resort Hotelは、湖岸にあり、二階建てであったと思うがいずれの部屋もLake Viewであり、長期滞在や家族連れでも楽しめるようにキッチンも付いていた。ただ困ったことは、ここへの宿泊客はほとんどがクルマできており、鉄道はおろか公共バスもほとんどなかったような気がする。貸切バスできたというグループは多分この日は私たちだけだったと思う。 
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 ワナカの集落は可愛らしく、商店街らしきものもほとんど見当たらなかった。宿泊したホテルは集落の中心部からは離れており、静かで美しく、のんびり滞在を楽しむには格好の造りであったと思うが、足(あし)のない旅行者にとってはいささか不便であった。この日は、夕食はフリーであり、それぞれ自弁ということであったので、ホテルのレストランで食べた人もあったが、折角ならばワナカの町のレストランやパブなどで旅情とこのあたりの味を楽しみたいとおっしゃる方も多く、メンバーは三々五々出かけられた。実際には、集落中心部までは、多分30分くらい歩いたような気もするが、「レストラン街」などはなく比較的大きな看板の出ている店に入ってみると、ほとんどが私たちのグループのメンバーであった。突然の日本からのグループの来訪に驚いた店側では、家族総出で応対してくれた。ニュージーランドではラム(仔羊)や牛肉の料理が多かったが、このあたりの名物というよりは、店からのおすすめとしてヴェニソン・ステーキ(鹿肉)を召し上がった方が多かったと思う。ロースト(蒸し焼き)された鹿肉は、ちょっと匂いを気にした人もあったと思うが、話のタネに食べたという人もあっただろう。自分としては、もちろん、皆さんと一緒にこれを食べたが、味は良くは覚えていない。 

 翌日は、丸一日フリー、湖畔でゆっくり過ごすという人もあったが、クライストチャーチの病院見学中に聞いたオタゴ大学のあるダニーデンに行ってみたいと言われる方があり、それに賛同する人がかなりあった。クライストチャーチがイングランドやアイルランド系であるのに比してダニーデンはスコットランド系の人によって開拓され、ゲール語(アイルランドやスコットランドで話されていた言語)でダニーデンとはエディンバラを意味するという。現在でも、「南のエディンバラ」と称されるほどスコットランド文化を色濃く残す街だとのこと。自分自身、これまでにも幾度かエディンバラなどスコットランドは訪れていたので町の雰囲気はある程度想像できたが、ロンドンなどとはまた違った雰囲気であるだろうし、機会があればぜひ行ってみたいと思っていた町でもあった。この機会にぜひ行ってみたいという方も多く、全体の半数を少し超える人数の15~16人であり、私も添乗することになった。 
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 ホテルのフロントに相談したところ、ダニーデンまでは、ここから車では3~4時間くらいかかるので往復すると一日がかりであり、肝心の目的地での滞在時間はほとんどなくなるだろうとのこと。そこで、勧められたのが航空機での往復であった。航空機でのオプショナルツアーはラスベガスからグランド・キャニオンへのツアー、ここニュージーランドでもマウント・クックへの遊覧飛行などを私自身は経験していたがメンバーにとっては多分初めてであっただろう。とても興味深いと共に、大丈夫?と多少不安に感じられた方もあったが、群集心理ということであろうか、みんなが行くのであれば自分も行きます、と賛成された方もあり、結局当初の申し出のあった人全員で行くことになった。この国でも、人口希薄で鉄道便や公共のバスなども頻繁には無いような地域では、専ら自分の車で動くことが多く、遠距離であっても急ぎの場合は、航空機が使われることが多いのだろう。オーストラリアやカナダ、アメリカの西部、ブラジルやアルゼンチンでもそうであった。そういえば、オーストラリアやカナダでは、Flying Doctorのことも聞いている。我々が考える以上に自家用機あるいは航空機の借り上げがポピュラーであり、よく使われているらしい。この時もホテルのフロントからの紹介でワナカの空港にある航空会社と旅行会社が組んでセットして対応してくれることになった。空港までの送迎、往復の航空機、目的地での貸切バス、これはドライバーがガイドを兼務するとのことであった。 
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 準備された航空機は、セスナ機であり、5~6名ずつ3機に分乗して飛んだ。生憎、どんよりした曇り空であったが、飛行機に乗り込んだ時にはあまり風は吹いていなかったと思う。離陸すると眼下にワナカの湖と集落、そして、白銀のMt. Aspiring (3030m)を主峰とするサザンアルプスの雄大な景観を見ることができた。一帯は、登山やトレッキング、スキーなどでも人気のある自然豊かな地域であると紹介されている。今回、この稿を書くにあたり、Wanaka Airportについて調べたところ、美しく魅力的な案内が紹介されており、西海岸のフィヨルド地域やクライストチャーチ間に定期便もあるという。遊覧飛行、飛行訓練、プライベート・フライト、航空機整備業務などで人気のある空港と紹介されている。ダニーデンまでは40分くらいかかったであろうか、眼下には大きな集落などはなく、茶色っぽい丘陵地が続いていたと思うが確かな記憶はない。飛行中は、3人のパイロット同士が連絡しあって相前後して飛んでおり、時々お互いの機影を観ることもできたので心細さはあまり覚えなかった。(以下、次号) 
 
《写真、上から順に》 
・ホテルの自室から見たワナカ湖 1987年11月 筆者撮影 
・ワナカの集落は遠かった! 同上 
・ダニーデン往復のセスナ機、(3機をチャーター) 同上 
・マウント・アスパイアリング国立公園とワナカ湖の風景 同上