2024.12.02 小野 鎭
一期一会・地球旅 339 ニュージーランドの思い出(7)ロトルアにて
一期一会・地球旅 339 
ニュージーランドの思い出(7)ロトルアにて 

 初めてのニュージーランドは1974年2月、北島の最南端に近くに位置する首都ウェリントンであった。一番の思い出としては、空港税関でのトラブル、以前に書いたが半世紀過ぎた今でも忘れられない出来事。坂道の多いこの町を見学した翌日、北島のほぼ中央部に位置するロトルアへ飛んだ。 
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 ロトルア一帯は地熱活動が活発で多くの間欠泉があり、温泉で有名な観光地として知られている。ロトルア・カルデラに由来する熱泥池が市内各所にある。日本では別府にある坊主地獄や登戸温泉で知られているがあれと同じような熱泥の池である。温泉観光地といっても日本の温泉地のような歓楽的な要素は多くなかったというのがこの時もそれから20年後の90年代に訪れてもあまり変わっていなかったような気がする。英国のバース(Bath)やヨーロッパ各地にある温泉保養地などのように保養や療養を兼ねた客向けに静かある。一方ではカジノや文化的催しなどの施設や設備のあるちょっとお洒落な英国風の保養地と言ったたたずまいがロトルアでも感じられた。一方ではニュージーランドの先住民族マオリの人口が多く、彼らの風俗習慣と文化が色濃く残っているのもこの町一帯の特徴であろう。ロトルアはこの時が初めてで、さらにその後も2度訪れているが、それについては後述しよう。 
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 世界有数の間欠泉では、巨大な熱水の柱、熱泥池などの地熱活動のすごさに圧倒され、マオリの伝統である彫刻が施された建造物、地熱で食材を蒸した伝統食「ハンギ」を味わった後はステージで繰り広げられたマオリのダンスや歌を鑑賞。今でこそラグビーのオールブラックスなどが試合開始前に上げる雄叫び「ハカ」の儀式はテレビなどでお馴染みであるが、半世紀前、ステージで見たこのショーには圧倒されたことを思い出す。海外教育事情視察でこの地を訪れた団員の思い出が報告書に残されており、ここからオークランドまで移動した風景などについて紹介してみよう。 
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 「前夜はマオリの歌と踊りにすっかり魅了され今朝をさわやかに迎える。ロトルアは湯の町、街並みの人家の庭も温泉の湯気が吹き上げている。住宅のたたずまいは日本の都市郊外とそっくりである。ただ、庭の芝生がややゆったりしているのが特徴である。バスはオークランドに向かってロトルア湖畔を西進する。湖を過ぎると道路は白樺、ポプラ、カナダ楓の並木などが牧場と牧場の間を一直線に、しかも丘陵に沿って上下して果てしなく続いている。牧草地は茶褐色をしているが羊と牛が草を食んでいる。時折、原生林が現れる。シダ類が多く、ユーカリ、柳なども見られる。昼食後、ワイトモで土ボタル見学のためにグロー・ワーム・ケーヴ(Glowworm Cave)に入る。鍾乳洞は規模が大きい。ガイドに案内され洞内へ、巨大な鍾乳石や石筍が眼の前に立ちはだかる。静寂、天井のところどころで小さな土ボタルの光が瞬く。深く洞内に入ると暗く、そこに水をたたえている。ボートに乗るとガイドはケーブルを頼りにゆっくり進める。まるで幻想、頭上のホタルはダイアモンドのように、サファイアのように、あるいは星のように暗闇に無数にきらめく。この鍾乳洞の土ボタルは気忙しくなった心を和ませ、精神安定の大きな要素になったようである。見学者は少なくないが、環境が荒らされず、観光公害の汚染を受けていないことも私たちの心を清々しくさせてくれた。ワイトモを出発したバスは再びオークランドに向かって牧場と原生林の間を、あるいは美しい街の中を走る。しかし、これらの風景はもう誰も全く興味をひかないようであった。・・・」 
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 この日誌の主要部分はこれで終わりだが、土ボタルについて少し書いておきたい。ホタルというと、初夏の水辺で闇夜に美しく飛び回る様子を思い浮かべるが、ニュージーランドの土ボタル は「ヒカリキノコバエ」の幼虫だとか。日本のホタルのように空中を飛び回るのではなく、鍾乳洞や洞窟などに生息しており、もっとおとなしく洞窟内の天井や壁に張り付いて動かずに光を放っている。通常、蛍は英語では、Fireflyと書いてあるが、ここでいう土ボタルはGlowworm、粘糸でできたその巣で幼虫が光を放っているという。この神秘的な美しさの土ボタルと鍾乳洞と周りの環境を維持保全するために入場は事前に予約しておくことが必要であり、一定数の入場者しか入れない用意することでOver-Tourismとならないように抑制していることがうかがえる。政府観光局の「100% Pure New Zealand」などの案内を見ると半世紀前に見た風景は今も昔と同じように保たれているらしい。 
 
《資料》 
ロトルア : 100% Pure New Zealand案内並びにWikipedia資料に加筆 
 
《写真、上から順に》 
Government Gardens in Rotorua :  Wikipedia 
ロトルアの間欠泉 : 1974年2月 筆者撮影 
ロトルアからオークランドへの途次で見かけた羊の牧場 : 1974年2月 筆者撮影 
ワイトモ・ケーブス (ワイトモ洞窟)の入り口 : 海外教育事情視察団報告書より