2025.09.22 小野 鎭
一期一会 地球旅 380 ドイツの思い出(20) ハイデルベルクにて(3)
一期一会・地球旅 380
ドイツの思い出(20) ハイデルベルクにて(3) 
 
ドイツでは、多分、ミュンヘンに次いでこの町を訪れているかもしれない。西ドイツ時代に(1966~1990年頃)当時の首都ボンも幾度か訪れているがハイデルベルクの方が回数は多いかもしれない。観光主体ではなく、専門視察で訪れていることが多い。もちろん、大学都市として古い町でもあることから観光面でも訪れる価値が大きかったことは事実であるが・・・ 古いところでは、社団法人全国社会保険協会連合会(通称全社連)の視察団で1974年にハイデルベルク大学医学部の附属病院Universitätsklinikum Heidelbergを訪れている。ドイツ最古の大学の医学部の附属病院であり、当時この国最大かつ高次医療施設として国内外からの患者も受け入れていると聞いたと思う。 
 
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全社連様で派遣された海外医療事情視察団の添乗を1971年に初めて添乗させていただいたことから1992年まで21年間、この視察団のお取り扱いを担当させていただいてきた。次いで、その年から2002年にかけて同じ団体等の海外看護事情視察団の添乗は通訳兼務でお世話させていただいてきた。結果的には全社連様の海外事情視察団の添乗を32年間担当させていただいことになり、私の旅行業人生にとって最も大切なお客様の一つであったことを今も心から感謝している。一方で、現業中から私自身が消化器系疾患等で全社連傘下の病院の患者としてお世話になってきた。全社連は2014年に新たにJCHO(独立行政法人地域医療機能推進機構)として生まれ変わり、この病院も名称が変わっているが今も引き続き、患者としてお世話になっている。’70~80年代には海外医療事情視察団としてアメリカのシカゴにあるJCAH(医療施設認定合同委員会)を幾度か訪問し、医療施設の機能評価などについて説明を受けられたことを思い出す。わが国の医療施設の在り方や社会の変革と米国で学ばれたことの積み重ねなども加わり、2000年代になって組織の改変につながっていったのだろうか。アメリカでの視察については、別の機会に改めて書かせていただきたいと思っている。 
 
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さて、このハイデルベルク大学医学部付属病院であるが、その時に聞いた説明では、全体としては総合病院であるとは思うが内科、外科、整形外科、産婦人科、小児科、公衆衛生関係、精神科、歯科、ポリクリック(Day Hospital)、ほかに病理、リハビリテーション研究関係、などたくさんの科毎にクリニックや研究所が独立した形で市の中心部(旧市街)および新市街などにたくさんの建物があった。全体では1700床以上のベッドがあると聞き、何やら訳が分からなくなってしまったことが印象に残っている。ドイツ最古の大学で医学部も歴史的な歩みをして結果的にそのように複雑な組織になっているのだろうというのが結論であった。その後、別の団体の視察団であるがリハビリテーション関係でも数回、リハ研究所や整形外科なども訪ねており、ドイツでも最大規模の大学病院であることは徐々に納得した。 
 
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ドイツの病院はほかにも大学病院や宗教団体、赤十字系の施設などを訪れたが、特に大学病院は複雑な組織が多かったことを覚えている。デュッセルドルフにある病院研究所(DKI=Deutsches Krankenhaus Institute)を幾度か訪れたことがあるが、そこで聞いた説明もそうであったように思う。ちょっと古い資料で恐縮であるが、1995年のドイツ病院名簿(DKI発行)のハイデルベルク大学付属病院については34か所のクリニック、研究所、各種施設などが列記されている。そこで、上記名称で今のハイデルベルク大学病院https://www.klinikum.uni-heidelberg.de/を参照してみた。写真を見ると広いキャンパスにたくさんの建物が点在していることが紹介されている。そして、行きたいクリニックや研究所を指定するとその建物や施設へ案内されることになっている。 
 
他にも視察・研修で数回この町を訪れているが、財団法人社会福祉調査会(現 公益財団法人社会福祉振興・試験センター)で派遣された社会福祉施設処遇技術調査研究並びに研修事業団で70~80年代の報告書が手元にありこれを見ると特に興味深い。ハイデルベルク職業リハビリテーションセンターBerufsförderungswerk Heidelberg (Vocational Training Center Heidelberg)は幾度か訪れており、よく覚えている。当時は病気や事故などで身体に障害を持った人への再訓練センターということで紹介されていた。大学の整形外科や循環器系などの機関とも連携があったのではないだろうか。同名の施設についてホームページを開くと、BFW Heidelberg  SRH Berufliche Rehabilitation GmbHとある。https://www.srh-bfw-heidelberg.de/「Berufliche Rehabilitation GmbH」(職業リハビリ テーション施設)は特定の組織を指すのではなく、SRH Berufliche Reha GmbHと連邦雇用庁のコンセプトに基づき、病気や事故後の就労復帰を支援することを専門とする事業形態を指している。これらの施設では、再訓練、継続訓練、コーチング、求職支援を提供しており、多くの場合、ドイツ年金保険などの機関からの財政的支援がある。施設の案内には、“新しいキャリアをスタートするためのパートナー:私たちと一緒に始めましょう: SRH 職業訓練センターの 50 年にわたる専門知識と経験の恩恵を受けましょう!”とある。まさに私たちがこの施設を訪問したのは50年前であり、この半世紀の間に経営母体も変化を遂げていることがわかる。 
 
高齢者関係施設も訪問している。“ハイデルベルク郊外の新興住宅地の真ん中にあるAltenzentrum Matilde-Vogt-Haus=マチルデ・ヴォート・ハウス高齢者センター”である。付近は、アパートが点在しており、建物は5階と7階で逆L字型に建てられ,一見ホテルのような観があった。1975年のこの研修団以外にも幾度かこの施設を訪問しており、視察研修に同行するごとにこの施設になじんでいたということだろう。今回、ホームページを開いてみると次のような書き出しがある。日本語訳では、「人生の中心 マチルデ・ヴォート・ハウスは、ハイデルベルク地方における当施設の『本所』です。50年以上の歴史を誇りにしています。私たちの家はハイデルベルクのキルヒハイム地区にあり、一方にはオーデンヴァルト、もう一方にはライン平野の景色が見えます。日用品のお店、医院、薬局も徒歩圏内です。建物のすぐ隣にあるバス停から、目的地まですぐにアクセスできます。マチルデ・ヴォート・ハウスは、個室96戸の常勤介護付き住宅を提供しています。さらに、様々な建築基準の高齢者向けアパートが127戸あります。当ハウスでは、最大 20 人の高齢者を対象に、終日ケアとデイケアも提供しています」とある。 
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そこで添えられている写真を見て驚いた。建物は、7階建てと5階建てで逆L字型に建っている! 建物そのものは新しく見えるが半世紀前に私たちが訪ねた建物らし い。であるとすれば、もちろん内部は現代風に快適に過ごせるように改築され、外は塗装し直されているのであろう。日本では、50年前の建物などは完全に建て直されることが多い。しかし、ヨーロッパでは古い建物が大事に使われていることはざらであるのでこの施設も驚くにはあたらないかもしれない。(以下、次号) 
 
《写真、上から順に》 
・昭和46年度(1971年度)欧米医療事情視察団 携行日程 派遣 社団法人 全国社会保険協会連合会 
・ハイデルベルク大学医学部付属医療施設関係リスト:ドイツ病院名鑑より ドイツ病院研究所発行 1995年版 
・ドイツ病院名鑑(Deutches Krankenhaus Addressbuch 1995): Deutsches Krankenhaus Institut e.V 
・昭和50年度(1975年度)社会福祉施設処遇技術調査研究並びに研修事業報告書 派遣 財団法人 社会福祉調査会 
・ハイデルベルク職業再訓練センター(Berufsförderungswerk Heidelberg) コンピュータによる訓練 上記報告書より転載 
・ハイデルベルク職業再訓練センター(Berufsförderungswerk Heidelberg) 個人別訓練風景 2025年 BFW Heidelberg  SRH Berufliche Rehabilitation GmbH資料より 
・マチルデ・ヴォート・ハウス 市から寄付された庭園 昭和50年度 社会福祉施設処遇技術調査研究並びに研修事業報告書より転載 
・マチルデ・ヴォート・ハウス本館 2025年 Mathilde-Vogt-Haus資料より