2025.10.14
小野 鎭
一期一会 地球旅 383 ドイツの思い出(23) クアオルト・ウィスバーデンにて

一期一会・地球旅 383
ドイツの思い出(23) クアオルト・ウィスバーデンにて

ヘッセン州の州都ウィスバーデンでは、州の社会省で西ドイツの保険制度や病院法、病院財政安定法などの動きについて聴いている。1979年であったので第1次オイルショックを経て少しずつ経済が落ち着いてきた時代であったとは思うが、病院経営は少しずつ厳しさを増していたのであろう。発展著しい西ドイツでの病院経営がどのような状態にあるかということは団員各氏にとっても興味深かったことと思われる。

翌日、ウィスバーデンから北へ1時間くらい走ったところのヴェッツラーという街にある総合病院を見学した。この町自体は人口10万に満たない地方都市と言ったところであるが東に少し行ったところにあるギーセン市と合わせて広域の経済圏ができており、この地域を対象とする中核医療施設の一つとして建設されたとのこと。Kreis-und Stadt krankenhaus Wetzlerが当時の正式病院名であり、ヘッセン州立ヴェッツラー地域管区病院として、一方では、ギーセン大学の下に置かれていた。1966年に建設開始、1974年に開院された。701床の施設でこの段階では脳外と小児科、歯科はまだ置かれておらず、総合病院としてまだ位置付けられていなかった。

私たちが訪れたのは、開院されて5年後であり、病院の見学手配は、ヘッセン州社会省に委ねてあったので開院して間もない新しい医療施設を見て欲しいと少々誇らしい気持ちが裏にあったのかもしれない。この時は、病院に直行してWetzlerという町そのものは見学しなかったし、町の中を歩くことも無かったので町の様子は知らないままであった。しかし、後で知ったところでは、カメラで有名なLeica社の本社があり、Karl-Zeissも地域拠点を持つなど光学産業などが盛んでハイテク都市として知られているとのこと。

この病院の訪問時の写真が残っているので興味を覚え、この病院の現況はどうなっているのだろうかと調べてみた。名前は、Klinikum Wetzlerと変わっているがヘッセン州立で地域中核医療施設&ギーセン大学の教育病院であることには変わりなく、ベッド数915床、大手ニュース雑誌と独立研究機関により、ドイツの優れた病院として高く評価され、ヘッセン州でもっともすぐれた14の医療機関の一つに選ばれたとある。(28/08/2025)併せて、ヴェッツラー病院は、設立50周年を迎えたとプレスリリースにある。現在の建物の写真を見ると1979年に見学した時の写真とほぼ同じである。建物の外観は変わっていないが、内部は当然、医療技術の革新など様々な変革があり、大きく改善されているであろうことは想像に難くない。

ウィスバーデンは、ライン川に近く、病院見学の翌日は、ライン川遊覧も楽しまれており、その時の写真が残っているので当時の様子が偲ばれる。ドイツ語に強いドクターも多く、船上ではドイツ歌謡の「ローレライ」や歌曲の「野ばら」を原語で口ずさまれる方もあった。周りのドイツ人の遊覧客と肩を組んだり、ワイングラスを傾けて交歓するなど和気あいあいの風景も見られた。ライン川遊覧を終えてホテルに戻り、ドイツでの思い出を語りながらの夕食が楽しかった。真夏のこの時期は食後もまだ黄昏時のような明るさ。食後の散歩も兼ねて、クアハウスのカジノにも行ったと思うが、結果がどうであったかは記憶していない。
《写真、上から順に》
・ドイツ連邦ヘッセン州社会訪問:昭和54(1979)年度 全社連 海外医療事情視察団
報告書より
・Kreis-und Stadt Krankenhaus Wetzler :1979年7月 筆者撮影
・ヴェッツラー市遠望:iStock 資料より
・Klinikum Wetzler : Deutsches Krankenhaus Verzeichnis 2024資料より
・ライン川遊覧:1979年7月 後列右筆者