2015.03.17 小野 鎭
小野先生の一期一会地球旅㊼「海外看護事情視察団に添乗して その6」

一期一会 地球旅 47

海外看護事情視察団に添乗して(その6) 忘れられない思い出 ②

Nurse Tourはシカゴやボストンなどだけでなく、南西部アリゾナ州のフェニックスで多くを学ばれたグループも数団ある。一方では、大西部で雄大な風景をご覧いただき、文字通り人々の暖かな心も感じていただけたと思う。今回は、そんなフェニックスでの思い出を綴ってみたい。
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(その1) 犬もボランティア活動 サボテンが生い茂る砂漠や北部にはグランドキャニオンなどで知られるアリゾナ州は1912年にアメリカ合衆国48番目の州として加わったことでも知られている。州都フェニックスはValley of the Sunと呼ばれる盆地にあり、その名の通り、真夏の酷暑、冬は温暖な気候でここ数十年の間に多くのリタイアメント・コミュニティが作られ、引退後の高齢者などに人気のある地域でもある。 90年代には、メトロポリタン・フェニックスは、米国内ではネヴァダ州に次ぐもっとも成長の速い地域であったと聞いている。初めて訪れたのは73年であったが、これまでに多分10数回は訪れていると思う。行くたびに都市圏が広がっていることに驚くばかりであった。
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Good Samaritan Medical Centerはこの地域を代表する大型高次施設であり、Samaritan Health Systemの基幹施設でもあった。ほかにもリハビリ施設、訪問看護などを幾度か訪れた。最高経営責任者(CEO)のサイラー氏には、毎回お世話になった。州を代表する大型保健医療事業体のトップであったが、物腰の柔らかさと親しみのあるにこやかな笑みでいつも迎えていただいた。93年にサマリタン医療センターを訪れた時は、広いロビーでサイラー氏と、看護担当副院長、そしてスタッフのほかに、大きな犬が一緒に迎えてくれた。最初はちょっと驚いたが、以前からアメリカでは、ボランティア犬が活躍していることを聞いていたので、質問したところやはりそうであった。多分、ラブラドール・レトリバーであったと思うが、首輪には、この犬の足跡がサイン代わりに名札の名前の横に押されていた。
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名札には100万ドルの保険(犬が万一、粗暴な行動を起こして患者などに危害を与えた時などに備えて当時の外貨相場で言えば1億数千万円の保険)がかけてあることも付記されていたとのこと。ボランティア犬の役割は患者からの希望があれば、ドッグ・ディレクターと共にベッドわきに行く。患者からエサをもらったり、ベッドに上がったり、手や顔をなめたりして慰めることで、患者の高血圧やストレス、不安や苦痛を和らげるうえでも役立っているとのことであった。近年、日本でも介助犬などとは別にセラピー犬やボランティアとして施設などで犬を導入するところも出てきていることを聞くが今から20年以上も前にアメリカではその動きが始まっていた。 (その2) VIPの患者として、
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94年にもサマリタン医療センターを訪れた。 この年の報告書を紛失しているので視察テーマや詳細は覚えていないが看護サービスの品質管理などが大きな興味の対象であったような気がする。この時も朝から昼過ぎまでが集中講義、その後、院内見学などが行われた。そして、夕方は、看護担当副院長などをお招きしてホテルのレストランで会食を楽しんでいただいた。 長い一日が終わり、解散したのは、多分、夜9時過ぎであったと思う。しばらくして、団員のお一人が浴槽で転倒されて後頭部を打撲されたとの電話があり、お客様をタクシーで昼間見学した病院のEmergency にお連れした。そして、すぐに診断を受けることができ、大事には至っていないことがわかり安堵した。ベッド脇に置いてあったカルテなどを入れたファイルをちらっと覗き見たところ、日本からの訪問客(Japanese Special Visitor : VIP)とメモが付されていた。 (その3) Snowbirds(雪鳥?) 差し詰め、太陽の盆地とでも訳そうか、夏は車のボンネットの上で目玉焼きさえできそうな猛暑が続くが冬は温暖なフェニックス盆地である。ここ半世紀の間に引退者向けの住宅地やリゾート、さらには金融、ハイテク産業などが進出して大きく発展し、今では人口410万人を超え、州全体の2/3以上を占めているとか。メトロポリタン・フェニックスと呼ばれる都市群は、フェニックスを中心にメサ、テンペ、スコッツデール、ペオリアなど大小の都市が広大な都市圏を構成している。サマリタン・ヘルス・グループは、今ではBanner Health としてコロラドやユタなど周辺の州にも進出する大きな存在となっている。
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Nurse Tourではなかったが、8月の猛暑の頃この地を訪れた時は、メサ市にあるDesert Samaritan Medical Center(砂漠のサマリタン医療センター)を見学した。当時は400床くらいの総合病院であったと思うが、院内を回っているとあちこちの病棟がかなり閉鎖されていた。案内のスタッフに、患者が減って閉めたのですか?と質問した。すると、夏季はほとんど半分くらい(の病棟)は閉めているが冬になるとSnowbirdsが来るので、全館フル稼働するとのことであった。雪鳥?咄嗟には意味が分からず、尋ねたところ、晩秋から春先までの温暖な時期になると毎年、北東部やカナダなどからたくさんの避寒客がValley of the Sun一帯を訪れてリゾート用のアパートなどに長期滞在する人が多いという。さらにはRetirement Communityなどに住居を持ち、冬の半年間はこちらに定住し、春先にはまた元の地へ戻っていく、つまり渡り鳥のような過ごし方をする人が多くいることを知った。
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60年代に造成されたSun City は、50代以上の人々が居住条件であると聞いていたが、80年代に造られたSun City Westはいずれか一方が50代以上であれば良いと条件が緩和されたと聞いている。とても美しく整地され、ショッピングモールに隣接したゴルフ場、町中を行きかうシルバーカー、ファストフードのレストランなどのウェイトレスたちもやはり年季の入ったご婦人たちであった。すっきりした街路はクリーンではあったが学校もなく、公園に行っても子供たちの姿もなく勿論騒々しさもない。何か物足りなさを覚えたものであるが、それもRetirement Communityの一つの姿であった。秋から冬にかけて、病院やリハ施設などでは契約している医師やナース、セラピストたちが戻って来てSnowbirdsの受け入れ態勢が整い、保健健康産業やゴルフ場、テニスコート、レストラン、ショッピングモールも一層活気づくという。大リーグのチームもスプリングキャンプで数週間を過ごすことはよく知られているが、なるほど、そういう世界もあることを知った病院見学でもあった。
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実は、カナダのトロントでお世話になっていた通訳のTC夫人は、元大学教授のご主人と今は、バンクーバーに住んでおられ、毎年クリスマスカードを交換している。ところがここ数年は、Sun City Westのお住いから年賀状をいただいている。今年、いただいたご挨拶には、「私ども老夫婦ものんびり毎日が日曜日の生活を楽しんでいます。ローンボーリング、ゴルフ、ジムなど頭を使わないことばかりで脳細胞は減る一方です。4月10日にバンクーバーに戻ります・・・・」とあった。 (資料 上から順に) 巨大なサグアロ・サボテン (1994頃 フェニックス郊外にて 筆者撮影) サマリタン医療センター(通称 Good Sam Med Center  1993 視察報告 表紙より) ボランティア犬(Good Samにて 1993 報告書より) Good Sam 看護担当副院長などとの会食後のひととき(1993) Sun City Westの住宅(資料借用) Sun City Westの一部 鳥瞰図(同上) 冬季はSun City West在住のTC夫人よりいただいたGreeting Card (2015)

                (2015/3/8) 小野 鎭