2017.01.18 小野 鎭
一期一会 地球旅142 「地球の歴史を見に行こう グランドキャニオンに遊ぶ(3)」

一期一会 地球旅 142

地球の歴史を見に行こう グランドキャニオンに遊ぶ(3)

グランドキャニオン、二日目の朝、ご来光を仰ぎ、心身共にリフレッシュした気分。はるか遠くの岩山の連なりの向こうに少しずつ太陽が昇り、明るさを増すごとにまだ暗い峡谷の岸壁が徐々に色彩を豊かにしていく。文字通り朝飯前のお勤めを果たしたところでいったんロッジへ戻り解散。それぞれに朝食をとって再集合することになっている。ここでは2日間自由行動として、思い思いに楽しんでいただくようにと、行程は組まれているが、2日目は、午前がデザートビューへの遊覧、そして午後はシャトルバスでウェストリムの一番奥、ハーミットレストまで行こうということが予定されていた。
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朝食はヤバパイロッジに大きなレストランで食べる人が多い。マーケットプラザの北側にあり、ロッジの自室からは数百メートル、徒歩6~7分はかかる。それでなくても早起きして動き回っているので腹ペコであった。メンバーの中には前日買い求めておいた食材を用いて部屋で準備する人もあった。レストランに行ってみるとヤバパイロッジはじめ、近くのキャンプやトレラーなど様々なところで宿泊している人たちもここに来ているらしく大盛況であった。駅の自動販売機よろしくATMのような食券販売機が数台あり、長い列を作って次々にお札を入れたり、予約時に朝食付きとしてクーポンを発行してもらっている人もあるし、クレジットカードを使う人も多い。前方に描かれたいくつかのサンプルメニューを見てはタッチパネルをのぞき込む。何しろ世界中から来ているので要領のいい人もあればそうではない人もいる。すんなり機会が動いてくれればいいが、何回かやり直したり、首を傾げたりしながら大げさに言えば悪戦苦闘! 自分とて例外ではなかった。何しろベーコンやハムは何枚、ソーセージは何本、パンケーキの枚数まで聞いていたと思う。コーヒーの大小はセルフで選べばいいのでこれは問題ない。食券購入で手間取っていると日本であれば、後ろに並んでいる人がイライラしたり、舌打ちしたりしながらじっと見られ、却って焦ってしまうが、アメリカ人は鷹揚、友達や家族同士でワイワイガヤガヤ話しながら後ろで待っている。日本であれば、多分、販売機の近くにスタッフがいて、お客様が困っておられれば、すぐに手伝ってくれるであろう。しかし、人手を省くための自動販売機であれば、そこに人を置いたのでは本末転倒? ここはアメリカ、自主独立で行くしかあるまい。
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目出度く食券を購入し、カウンターで待っているケーターリングスタッフ(調理場)にこれを提示し、数分待っていると注文の品が出てくる。やっと手に入れたアメリカンブレックファーストをお盆に乗せ、コーヒー、ジュースそして水などをとって空いたテーブルを探して着席。見ると幾組かのメンバーもすでに食事を楽しんでいる様子。海外旅行の経験は少なくても今はこのような食事のスタイルは次第に世界共通になりつつあり、あまり違和感はないらしい。
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今回は、ここでの滞在は自由にお過ごしいただくことになっており、食事の方法も自由にしましょう、ということで旅行代金には含めていない。その代り、グランドキャニオン滞在中の食事の方法やスタイルは出発前の説明会でも入念に案内し、スタッフ各位にも協力いただくようお願いしてあった。その上で、もし、困っているお客様があればお手伝いしたり、案内しなければ、時にはしているがどうやらその必要は無さそうである。昔、フランスやイタリアなどでは特にコンチネンタル・ブレックファーストということでパンとコーヒー、ジュースなど、わりにさっぱりした内容が多かった。必ず早めに行ってお客様にご案内したり、様子を見たりして朝食をスムーズにおとりいただけるようにと努めたことが懐かしい。
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その後もここ2泊したが結局後の二回の朝食はレストラン入口にあるコンビニスタイルの食料品売り場でクロワッサンとジュース、コーヒーなどを求めてフロントの脇にあるロビーで簡単に朝食を済ませ、ノートパソコンを開いてはネットを見たり、メールを読んだりのひと時。ロッジの部屋ではWi-Fiが通じておらず、ロビーやレストラン付近でしか使えないので、ここまで来なければならない。部屋からは数百メートルあり、しかもゆるい坂道になっているのでほとんど通勤と同じかもしれない。15年前、来たときはまだパソコン持参などではなかったし、わりに食事もスムーズであった。多分、同じロッジであってももっと中央部に近い部分であったのかもしれない。次回来ることがあれば当初からそのつもりで宿泊施設を手配することの必要性を改めて感じた今回の経験であった。 こうして朝食と朝の通勤(?)を終えていったん自室へ戻り、外出の身支度を整えて駐車場へ向かう。午前中はデザートビュー遊覧である。ドライバーと午前中の予定を再度確認する。ご来光仰ぎで早朝に動いてもらった時は眠そうな顔であったが、あれからまたひと眠りしたのであろう、満ち足りた様子でご機嫌であった。ここで準備していた心付けを握らせる。同じドライバーで数日間のバスツアーでは、それなりのチップを渡すが渡し方とタイミングを考えることも大事。気分よく働いてもらい、安全とサービス、お客様へのユーモアと心づかいを求めたい。そこで肝心なことはドライバーと添乗員の連携であり、協働である。うまくかみ合うことでツアーがスムーズに進み、お客様に喜んでいただくための大きなカギとなる。 メンバーは思い思いに食事を済まされて満足な表情。昨夕、初めて大峡谷を目の前にしたときの感動、そして、今朝のご来光仰ぎ、と二つの大きなアトラクションはメンバー各位にいい印象が増えてきている様子が窺える。 デザートビューはサウスリムから約40km、40分ほどであろうか。
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走るほどに針葉樹から広葉樹の多い森へと少しずつ車窓風景が変わっていった。ジュニパー(アメリカポプラ)であろうか、少しずつ海抜高度が下がっていることがわかる。時々見える峡谷は依然として壮麗な風景を見せているがメンバーは見直れてきたのか、最初の時ほど大きな歓声はあがらなかった。すでに陽はかなり高くなってきており、どこまでも広く雄大な風景が広がっていた。間もなくデザートビューに到着、広い駐車場から展望台方面へ続く広くゆるやかに傾斜した遊歩道を進む。車いすも楽々。展望台の後方には赤い砂岩で作られたウォッチタワーがある。実際にはそれほど古いものではないが、このあたりの先住民のデザインになるものだそうで、1933年に建てられている。いまでは、East Rim(イーストリム=東がわのへり)一番の見どころであろう。ウォッチタワーは3階まであるが、古い建物であり、残念ながら、上層階へのエレベーターが設置されていないので、最上階のテラスは車いすの方はお出でになれない。
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塔の前の展望台からの眺めは抜群である。すぐ目の前には遥か昔に噴火したであろう火口丘が端正な姿を見せている。コロラド川は蛇行し、大峡谷の東側上流部分は次第に高くなっていてそれから先は見ることはできないが、Painted Desertと呼ばれる一帯の中に消えていた。荒野はどこまでも広がっており、ここから半日あまり走ると有名なMonument Valleyがある。残念ながら今回はそこまでは足が延ばせないが写真で見る月世界を思わせるような荒涼とした風景である。
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ここから北東部へ走るとやがてコロラド川に架かったナヴァホ橋があり、ヴァーミリオン・クリフ、その名も朱色の崖と名付けられた急峻な岩石砂漠が広がり、やがてユタ州へ入っていく、カナブという街道筋の小さな集落があり、インターステートを数時間走るとラスベガスに至る。一帯はグランドサークルと呼ばれる広大な地域で最近は日本でもよく紹介されている。30数年前、ドクターグループを案内してこのコースをたどったが、7月下旬の酷暑の時期とあってバスの中は冷房をいっぱいに利かせても蒸し風呂のような暑さ。お客様からは何とかならんのか!?とお叱りを受けたことを思い出す。今回は9月下旬の爽やかな季節、メンバー各位には地球造成期のような風景と歴史を十分に感じていただきながらのデザートビューへの遊覧であった。 (以下次号とさせていただきます) (資料 上から順に、ことわりなし以外の写真は2015年9月撮影) ヤバパイロッジのレストラン、食券販売機(翌朝、開店直後に撮影) 分厚いパンケーキとベーコン、ポテトと目玉焼き、これはサンプルです! レストランは大賑わい レストラン入口にあるグロサリーショップ(食料品売り場) デザートビュー風景、ウォッチタワー(写真借用) デザートビューの近くにある火口丘(はるか昔の噴火口) コロラド川とペインティッドデザート(ペンキで塗られた砂漠)へ続く風景。 (2017/1/18) 小 野  鎭