2017.02.15 小野 鎭
一期一会 地球旅146 地球の歴史を見に行こう グランドキャニオンに遊ぶ(7)

一期一会 地球旅 146

地球の歴史を見に行こう グランドキャニオンに遊ぶ(7)

グランドキャニオン3日目は終日フリータイム、メンバーは思い思いに過ごされた。数人は、この日もメイサーポイントへ行って二度目のご来光仰ぎ。もう一度新たな感動を味わってきたと喜んでおられた。このころになると早朝であれ、夜であれ気の向いた時間にシャトルバスを効率的に使って好みの場所へ、少人数グループで買い物や観光に出掛ける術を身に着けておられた。3つのシャトルバスのルートもほとんど頭に入れておられ観光スポットや要所ごとの特長など語り合う姿が見受けられた。ブライトエンジェルのロッジ内にある土産物店でアクセサリーやTシャツ、絵葉書などの買い物を楽しんだ人もあった。お留守の家族やスタッフ、友達のことを思いながら一つ一つ丁寧に選ばれたことであろう。ネイティヴという呼び方に代表されるこの一帯に住んでいる先住の人たちの手になる工芸品や絵画、織物などは決して安い値段ではないが素朴な中にもしゃれたデザインとアイディアに富む素晴らしいものがたくさんある。きっと楽しいお土産話を添えて贈られたことであろう。
49ef72b19c9b2addea8db508ca9b00b72-300x199.jpg
なかでも特筆すべきは、撮り鉄という呼び方がぴったりのYさんであろう。サウスリムの中央部、ブライトエンジェルやエル・トヴァーホテルなどが並ぶヴィレッジ前の広大なスペースにはグランドキャニオン鉄道の駅と操車場がある。とはいっても通常は一日に一回午後ウィリアムズからの到着便、そして数時間停車してまた引き揚げていくので普段は客車や出番を待つ機関車が準備をしているくらいで静かなたたずまい。これまでにも数回この場所は通り過ぎているのでYさんはそのたびに目を輝かせ、滞在中に機関車を含めて写真を撮ることを多分夢にも見ていたのではないだろうか。スタッフの一人、高橋さんは「名人」というニックネームがあり、聞いてみると鉄道には驚くほど明るい人物、乗り鉄であろうか地図鉄であろうかとにかく詳しい。3年前に奥会津への旅行があったがその時は東武と会津鉄道などが主たる交通手段であったがこの時、名人はその持てる知識とアイディアをフルに発揮され、事前予約や途中駅での乗り継ぎなどもスムーズに終えていただくことができた。このふたりと映像でおなじみの野崎さんが加わってこの駅構内で写真撮影にかなりの時間を費やされたそうだ。
20cfce153c6dcbd30dc35695758066ae2-300x199.jpg
この駅には柵はなく、ホームが長く続いているが普段は駅員や整備員などの人影はほとんどない。それでもこの時は、午後の列車の発着に備えて数両の客車とエンジン(機関車)が調整されたり、作業が行われていたそうだ。旅行が終わってB-POPで作られたDVDの 動画を拝見すると、3人は駅の係員に許可を得て構内で思いっきり写真撮られている様子がうかがえる。幸いなことに、この時は往時のスターであったであろうSLも依然として現役らしくゆっくり動いていたし、先輩に敬意を表するように今は全盛の大型ディーゼル機関車が二番手として連結されている様子も見られたらしい。
041c8e89b678b46731ac2144bc87c2e72-300x224.jpg
加えて、この時は停車中の列車にも入ることができたとのこと。アメリカの鉄道車両の多くは日本の平均的車両よりサイズは一回り以上大き いと思うが、ここでも同様、見上げるほど大きい。にこやかに笑って窓から手を振っている機関士を夢中で追いかけているYさんの姿が微笑ましい。線路を歩いている彼らの姿はそこに添えられたBGMが映画「スタンド・バイ・ミー」の主題歌、Stand by Meであり、映画のシーンを彷彿とさせるような光景であった。旅行が終わり、Yさんはその後も会うたびに、その時の写真を見せてくれる。よほど、アメリカで見たあの大きな車両は彼にとって最高の思い出となっているらしい。 筆者はというと、相変わらずロッジの部屋とマーケットプラザに面したフロントを往復してノートパソコンを開き、メールを読んだり、この後の行程で立ち寄る各所の最新情報を探るなどそれなりに忙しい。時間を見て、午後のひと時、マーケットプラザにあるジェネラルストア(スーパーマーケット)をのぞいてみた。入り口わきには、郵便の私書箱、銀行のATMなどもあった。店の前の駐車場は数百台が停まれそうに広い。中に入ってみると日本のそれよりははるかにスペースも広く、通路はゆったり、天井もはるかに高い。商品は、食料品、日用品から化粧品、大工道具、衣類など様々なものがあり、一角にはかなりのスペースを割いた土産物コーナーもあった。サウスリム一帯には観光客の他、国立公園管理官(Park Ranger)始め関係従業員やその家族などが居住していると思うが必ずしも公園内ではなくハイウェイ64号に面したトゥサヤンなどに住んでいる人もあるだろう。
3d286c066077720590e492e614c9bbcc2.jpg
それにしてもこれほど大きなスーパーが必要なのだろうか? そんなことを考えながら地図を見たり、ココニノ台地(*)一帯の大型店舗などについてホームページを探してみたところ、Tusayanに大型のジェネラル・ストア一か所が紹介されていた。ここ以外にはほとんど集落らしきものはなく、街道筋にときどき小さなカフェやガソリンスタンドがあるのみ。60マイル(約96㎞)離れたウィリアムズまで行かなければならないとすれば、多分、近くにぽつぽつある牧場や先住民の人たちもここを利用しているのかもしれない。そんな勝手なことを考えながらそれなりに興味深い午後のひと時であった。 その日も空はどこまでも青く、高原を渡ってくる風は爽やか、ポンテローザ松の林の中を抜けていくとシカが歩いていた。昨夜もシャトルバスから見かけたがガイドブックに森の中には様々な動物が棲息していることが紹介されているが、リムの崖っぷちで見かけるリスなどの他にもシカなどがあちこちに出没しているらしい。公園内の道路には野生動物に注意の看板が立っているがまさにその通りである。そういえば、これも帰国後まとめられたDVDを拝見すると、森の中でシカの親分とB-POP代表の湯澤氏が競争をしたり、にらめっこをしている風景もあった。親分同志あいさつを交わされていたのかもしれない。この日は、メンバーには何かあったらフロントや添乗員の部屋にメモを残しておいてください、と伝えてあり、遠くまで出かけることはしなかったが、夕方まで幸い何の緊急連絡もなかった。メンバー各位はそれぞれにグランドキャニオンで楽しく有意義な一日を過ごしていただくことができたと思う。 (以下、次号とさせていただきます。) (*)お詫びと訂正  前号で、グランドキャニオンの対岸ノースリムの西側一帯に広がる大地をココニノ台地(Coconino Plateau)と書きましたが、これはカイバブ台地(Kaibab Plateau)でした。お詫びして訂正いたします。 (資料、上から順に、ことわりなき資料以外は2015年撮影されたもの) グランドキャニオン駅構内風景(B-POP様 提供) 出番を待つSLとディーゼル機関車(同上) Stand by Me ! (同上) マーケットプラザの駐車場と右手奥にジェネラル・ストア(小野撮影)