2017.02.28 小野 鎭
一期一会 地球旅148 地球の歴史を見に行こう ハイウェイ93号線を通ってラスベガスへ

一期一会 地球旅 148

地球の歴史を見に行こう  ハイウェイ93号線を通ってラスベガスへ

 
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 セリグマンの町を出て再び西へ、小一時間走ったところでキングマンの町に入った。アメリカ大陸の南側を北カロライナ州のウィルミントンからカリフォルニア州のバーストウまで延々4,112㎞、アリゾナ州北部を東西に横切りその距離は州内だけでも577㎞あるという。そしてその沿線上にある主要な町は、フラッグスタッフ、ウィリアムス、そしてキングマンなどの他にいくつかあるくらい。とてつもなく広いことを改めて感じる。キングマンもかつてはルート66沿線の主要な都市で人口2万8千余、いまはI-40と北へ走るUSハイウェイ93号線の分岐点にあたる要衝の地である。
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広い道路の両側には、車のディーラーやガソリンスタンド、ホテル、レストラン、銀行、スーパーマーケットなどが連なっている。そして、貨物駅近くにはクラシックな給水塔が立っていた。通りのあちこちにはここでもRoute 66のノスタルジックな看板がときどきみられる。セリグマンからここを経て、ルート66は南へ下り、コロラド川を渡ってモハヴェ砂漠を通り抜け、やがてロサンゼルスに至っている。
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ここキングマンでランチストップ。グランドキャニオンから300㎞近く走ってきた。途中、セリグマンで小休止したとはいえ、みんなかなり空腹であった。この日は久しぶりに中華バイキング、何とも素朴なメニューであったが、昨日までハンバーガーが続き、少々胃は疲れ気味。焼きそばや春巻、チャーハン、ザーサイなどで一息つかれた様子であった。お箸が自由に使えるのも幸いしたのかもしれない。
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昼食を終えて走り出すとすぐにI-40を下りて93号線に入る。あっという間に市街地を抜けるとほとんどハンドルもいらないのでは?と思うほどの直線道路が1時間近く続く。一帯は岩石砂漠で丈の低い灌木やサボテンなどがまばらに生える盆地状の低地、はるか遠くに岩山が連なっている。特に左側(西側)の山並みは灰色から黒っぽい丘陵続きで地図を見るとその名もBlack Mountains とある。山脈の南西方向はカリフォルニアとの州境へと続いており、かつてルート66はそのあたりではヘアピンカーブを繰り返し、加えて未舗装の悪路がつづく難所であったとか。 93号線は、北西方向へ向けてひた走り、荒涼とした風景が続く。バスはさほど揺れることもなく、快適であった。
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中華バイキングで満腹のメンバーはこのダイナミックな風景を眺めることもせず、ひたすら爆睡状態。 さらにバスは走り続け、しばらくぶりにゆっくりカーブして少しずつ坂道を登っていく。両側に赤茶けた岩山が迫り、昔は片道1車線の対面交通でバスはスピードを落とさざるを得なかったが、いまは、道路が拡幅されて2車線ずつの対面交通。さほどスピードを落とすこともなく、軽快に上っていく。そして、峠らしき岩山を抜けると。右側車窓に湖水が見えた。そして大きなアーチ橋がかかっており、あっという間にそれを渡り、チラッと見えたのがWelcome to Nevadaという看板であった。走り過ぎる橋の右側には巨大なダムが見えていた。フーヴァーダムである。1931年に建設が開始され5年後の1936年に竣工した高さ221mのダムは世界的な規模として知られている。ルーズヴェルト大統領のニューディール政策の一環として建設されたときいていたが工事の着工は大統領就任以前であったとのこと。グランドキャニオンを抜けてきたコロラド川がこの谷間でせき止められて、満水時には琵琶湖とほぼ同じ面積のLake Meadミード瑚ができており、発電の他、その水はネヴァダとカリフォルニア二つの州の広大な地域に供給されているという。
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93号線は、ダムの堰堤の上を通っており、ここを通るときはダム見物を兼ねてひと休みするのが通例であった。巨大なダムの堰堤に立ってミード瑚を眺め、このダムの果たす役割を聴いていると、その規模の大きさに驚き、しかも日本ではだんだん戦争への道を進んでいた頃、この国ではこれほど大きな構造物を作っていたのであり、日米の国力の違いをまざまざと見せつけられた思いであった。何百万年もかかってコロラド川が作った大峡谷であったが、その川を今度は人間の力でせき止めてその包蔵水力を最大限に利用している。今度は人間の英知とその力、地球の歴史に人間が加わった20世紀の新たな歴史を見たような気がする。 実は、この旅行の地上手配を現地オペレーターと打ち合わせる中で、今日のコースについては、Hoover Damの堰堤を通って行きたい希望を申し入れたところ、1時間ほど余計にかかります、ということであった。
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筆者はこれまでに幾度もこのコースを通っており、ダムの上を走るはごく当たり前であった。しかし、2010年にフーヴァーダム・バイパスが建設され、ダムの下流にマイク・オカラハン&パット・ティルマンという長い名前の橋、通称コロラド・リヴァー橋が完成し、今はこの橋を通ることでかなりの時間が短縮されているとのこと。確かに数年前、この橋が日本の大林組などが共同企業体として建設し、世界有数のアーチ橋としても知られているとあったことを思い出した。米国南西部に於いて最もダイナミックに発展を続けているラスベガスとフェニックスという2つの大都市を結ぶ道路をさらに整備して安全を確保し、渋滞問題を解決するための一環でもあったとのこと。さらに資料を読んでみると、2001年9月11日の同時多発テロ以降、このダムなどもそのような変事の発生へ備えることも背景にあるらしい。
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今回のコースでは翌日は早朝6時の便でロサンゼルスへ発つことになっており、折角のラスベガス滞在は大変短いので少しでも早くホテルに入りたいという希望と、一方ではフーヴァーダムも見ていただきたいという願いもあり、どちらとするかはむつかしい選択であった。正直、筆者はなんとなく物足りない思いではあったが、少しでも早くお出でいただくほうが良いだろうと考え、ダムの堰堤を通るコースは割愛せざるを得なかった。橋を通り抜けるとすでにネヴァダ州ボルダ―シティ、町はずれにある広い駐車場で小休止、柵の向こうにはミード湖の湖面が広がっていた。再びバスが走り出すと、93号線はほどなくInter State(州際高速道路)に入った。片側3~4車線となって車があふれ、驚くほどのスピードで走っている。その向こうには広い市街地が広がり、高層ビルが立ち並んでいる風景が遠望された。遥か人里離れたグランドキャニオンでの過ごした数日の後、一気に大都会、そして現実の世界へ引き戻される感じであった。 (以下、次号に続けさせていただきます) 資料 I-40の西端、カリフォルニア州バーストウまで2554(4112㎞)とある。(資料借用) アリゾナ州を抜けるI-40 (資料借用) キングマンの町(資料借用) US Highway 93号線での車窓風景 岩石砂漠が広がっている。(2015年9月筆者撮影) 同上 ハンドル不要(?)と思うほど、どこまでもまっすぐ・・・(同上) フーヴァーダムとミード瑚、93号線は堰堤を通り、急坂となっている。(資料借用) 新しく完成したマイク・オカラハン&パット・ティルマン橋(資料借用) ラスベガス遠望(資料借用) (2017/02/28) 小 野  鎭