2017.06.07 小野 鎭
一期一会 地球旅161 地球の歴史を見に行こう リンデンハウス 秋の東北へ(3)

一期一会 地球旅 161

リンデンハウス 秋の東北へ(3)

リンデンハウス様では、毎年、定例で1泊か2泊の国内旅行を計画されているが、これまではほとんど自主手配されていたようであった。しかし、今回(2016年秋)は、東日本大震災から5年目にあたるので被災地を巡り被災された方と亡くなった多くの方々へ想いを馳せ、お参りしたいとのことであった。それを叶えられるような計画を立ててほしいとのご希望である。 被災地は広範囲に広がっており、特に津波の発生で地震によるものよりもはるかに大きな被害が出ていることは今もしばしば報じられている。勿論、被災地だけでなく、景勝地や観光施設などを加えることはもちろんであり、そのあたりの兼ね合いをどのように保つか、これは真剣に考えるべき課題であった。東北地方の面積は、東京などで考えるよりもはるかに広い。何しろ、岩手県一県であっても、東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県を合算した広さよりもさらに広い。宮城県1県が千葉県と東京都を合わせた広さにほぼ近い。加えて、リアス式の海岸線は複雑で道路も入り組んでいるところが多い。つまり、旅行行程を考える上では、距離感に十分注意しなければならないということであろう。広い地域なので貸切バスで動く場合はこのことを抜きにしては考えられない。
1.jpg
旅行の参加者である寮生の皆さんは、日の出町や武蔵五日市町などでホテルや福祉施設などで使用されるリネンやタオルなどのクリーニングや製造業の企業に勤務しておられる。旅行期間は10月中旬の週末2泊3日、宮城県を主として考えてほしい、とのご希望であった。そこで、素案として考えたのが、松島湾から石巻を経て南三陸へ至る海岸と市街地や内陸部などを巡る行程であった。
2.jpg
具体的には、JR東北新幹線で仙台に至り、そこから日本三景の一つである松島、さらに石巻市内各所から南三陸の志津川湾に至る地域、一帯は南三陸金華山国定公園としての景勝地である。一方、石巻や南三陸一帯は震災と津波で大きな被害が出た地域であり、今も復興に大きな力がそそがれている。この行程案を中島様に提示したところ、基本的な了承を得たので具体的な作業に入っていった。 こうしてたたき台として作ったのが次のような行程であった。 1日目 武蔵五日市~東京~仙台~松島湾 湾内遊覧 松島(宿泊) 2日目 松島 瑞巌寺拝観~石巻 市内被災地~昼食~萬画館~被災地~南三陸(宿泊) 3日目 南三陸 語り部ツアー参加 ~ 仙台~東京~武蔵五日市
3.jpg
交通手段は、JR各線と新幹線など及び、2日目は貸切バス。3日目はホテルの送迎バスで仙台までという案であった。観光地や施設、そして被災地などについてより詳しく情報を得るために宮城県観光協会の東京事務所を訪れた。より新しい情報を得るために最新の旅行案内書などを精読することはもちろんであるが、中立で商業ベースにとらわれず、より詳しく生きた情報を得るうえでは、自治体の東京事務所や観光事務所の案内や助言は毎回重宝している。石巻では、門脇地区、市内中央部、大川地区などをぜひ訪れることを勧められた。また、南三陸町では、志津川湾に面した大型のホテル観洋が具合がよく、語り部ツアーを主催しておられるし、スタッフなども被災した経験を含めてより実質的な話を聞かせていただけるとのことであった。 貸切バスは、宮城県観光バス協会の会員会社の内、南三陸観光バスにお願いすることとした。被災地を巡るについては、観光ガイドから案内してもらうのが一番ベストであろう、ということでもちろんこれをお願いした。もう一つ、印象的であったのは、バスの写真を希望したところ、震災と津波で10数台のバスそして多くの資料などを失ってしまい、事務所そのものが流されて今も仮事務所で営業し、懸命に復興を目指していると電話の向こうの説明を聞いたことであった。これまでテレビや新聞で被災地の様子を聞いてはいたが、今回はより実感として様々な様子を聞くにつけ、この仕事を通して自分自身ももう一歩深く入り込んで準備を進めることを目指した。
4.jpg
旅行期間は、10月15日(土)~17日(月)の2泊3日、10月中旬とあって宮城県各地もそろそろ紅葉シーズが始まるころであろうと思われるが幸いホテルも貸切バスも確保できるめどがつき、新幹線は一カ月前の予約とあって8月下旬までには人数の確認が行われ、JR運賃の障害者割引も適用、観光施設も可能な限りそれを使わせていただくことにした。そして、肝心の団体名は、「リンデンハウス 秋の東北へ」と命名された。8月中旬のある夕方伺って、勤務から戻られた寮生各位にご挨拶をさせていただいた。皆さんは、職場の様子や日々の生活の楽しさを聞かせてくださり、秋の旅行への期待がとても大きいことを感じた。私もより一層真剣に準備を行い、皆さんに楽しんでいただきたいと願うことしきりであった。 (以下、次号とさせていただきます。) 資料 (上から順に) 旅行行程(赤いライン) 松島湾 観光船案内から(松島湾 観光クルーズ 資料より) 3.11からの記録(ホテル観洋 資料より) 語り部ツアーの案内(同上) (2017/6/05) 小 野  鎭