2017.08.23
小野 鎭
一期一会 地球旅 172 リンデンハウス 秋の東北へ(14) 南三陸にて(4)
一期一会 地球旅 172
リンデンハウス 秋の東北へ(14) 南三陸にて(4)
志津川町の中心部であったところは、写真やテレビのニュースでみた瓦礫いっぱいの広い土地から大きく整地が進み、すこしずつ建物が建てられ始めていた。そして盛り土された高速道路の路盤のような形をした防潮堤の建設が進み、港まではわずかな距離であると思うが見通しは利かなかった。中心部を囲む高台も整地され住宅が建設され始めていた。そこまで上がれば、防潮堤に囲まれた一帯とそこからさらに港までを見渡すことができるであろうが、それだけの時間は無かった。盛り土されているところの向こう側に3階建ての鉄骨が無残な姿を残していた。かつての防災庁舎であった。テレビで幾度も見たあの様子は今も脳裏に鮮明に残っているし、一刻も早く高台へ逃げてください、とスピーカーを通して繰り返していたあの女性職員の悲壮な声が思い出される。彼女自身もその後、襲ってきた津波に飲み込まれてしまったと聞く。南三陸での震災の話題として多くの人の記憶に残っているであろう。この日のツアーに参加した人は誰もがそのことを知っていたが、語り部氏は、彼女のことを特に大きくマスコミは報じており、圧倒的な話題となっていったが実際にはもっと多くの職員や町の人たちが互いに逃げろ、逃げろ、とにかく高いところに行けと声を掛け合い、手を引きあって必死になって避難を呼びかけ合ったし、その途中で命を落とした人もある。そして、街は壊滅的な状態に陥っていったという。