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小野先生の一期一会地球旅
2022.01.14 小野 鎭
一期一会 地球旅 204 ユニバーサルツーリズムの普及を目指して(2)
一期一会 地球旅(204)
ユニバーサルツーリズムの普及を目指して(2)
専門学校では、数回のバリアフリー旅行の実践を行った。 その 一つが国内研修旅行、1年次の12月上旬であった。2泊3日の京都往復で市内見学のほか、中の一日を使って大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)での遊覧が骨子。学生4人と特別講師、学校職員1名と小職を含めて7人で公共交通機関等の利用、宿泊施設、観光&遊覧、食事等を含めて旅行手配&添乗と外出・旅行支援が目的であった。
東京駅での経験で興味深いことがあった。JR職員による駅構内での移動支援。これは事前に電話等で申し込んでおく必要があるが、新幹線の場合、東海道方面であるのか、東北方面であるのかによって依頼先への電話番号が違っていたことである。つまり、JR東海かJR東日本であるかの違いである。普段はその区別など考えずに利用しているが、担当つまり会社が違うのだということを知る必要があった。東京駅での待合室は、丸の内南口側にあったが、なるほど、待合室にはそれぞれの会社の電話番号が明示してあった。 待合室を出ると、普通は改札口からそのまま広い通路を通って、新幹線ホームを目指すことになる。ところが、当時は通路には段差もあったからであろうか、一般通路を通るのではなく、はるか昔からある業務用の通路を通っていった。
内部は薄暗く、レンガとむき出しのコンクリートの床、ひんやりした空気の中、数分間歩いてやがて新幹線ホームへ上がるエレベーター乗り場に到達したが、普段は知らないだけに面白い経験であった。新幹線は、11号車が車いすの乗客には都合が良いとのことでこれを予約し、多目的室も経験として利用してみた。当時から14~5年過ぎるが、今は11号車以外にも車いすなど使用の方が使いやすい車両やサービスは拡充されていると聞いている。 京都駅では、下車したホーム上の位置とエレベーターはかなりの距離があり、バリアフリー化が進められていても使い勝手の良し悪しは実際に使ってみないとわからないこともあることを知ったのもこの時であった。京都市内では、リフト付きジャンボタクシーを使ったが、ドライバーは、さすがに手慣れたもので観光案内と合わせて車いすのお客様の介助もなかなかのものであった。旅行は12月上旬であったので、すでに紅葉の時期は終わり、観光の最盛期は少し過ぎていたが、それでも観光客は多く、各所で賑わいが見られた。天龍寺の広い境内には紅葉が地面いっぱいに散っていて、緋毛氈のような美しさであった。観光名所でもある名刹などの駐車場や境内には、すでに車いすマークのトイレなども設けられていたが、境内には段差のあるところも多く、見学しにくいところが多かった。その中で、龍安寺では、石庭を見学できるように庫裏から専用の入り口が設けられていたと記憶する。但し、石庭全体を鑑賞するには、階段を数段上がって、縁側の中ほどから眺めると具合が良いとされているがそこまでは行けないことは今も変わりないらしい。今では、補助犬も入れると案内されている。
また、石庭入口に、長さ96cm、幅43cmの「ミニ石庭」がつくられている。点字も付されて視覚障害のある方が手で触って案内を受けることが出来るし、一方では音声ガイド も設けられていると聞いている。なお、京都には、「京都ユニバーサルツーリスム・コンシェルジュ制度」(
https://kyoto-universal.jp/concierge/
)という仕組みがあり、各種バリアフリー情報の発信、バリアフリー観光の相談にのったり、旅行企画や案内のほか、様々な支援が行われており、ホームページでも紹介されている。国内研修旅行では、新幹線や関西のJRや地下鉄など公共交通機関、タクシー、宿泊、観光やテーマパークでの遊覧、食事など盛りだくさんの内容のプログラムを楽しみ、介護旅行の初歩的経験をすることが出来た。
次いで行った実習は、障がいのある方について理解を深めるためのプログラムであった。協力いただいたのは、さいたま市にあるNPO法人が運営されている地域福祉事業体「ビーポップ」で、障害児・者の余暇支援、緊急一時預かり、生涯福祉分野における先駆的活動をしておられる。最初は、茨城県にある霞ケ浦へでかけて、湖上遊覧を楽しむことであった。これは、この事業体においても初めての遊覧先であった。ここでは、「もっと優しい旅への勉強会」のメンバーであって、学校の授業にも特別講師として来ていただいている秋元昭臣氏の協力を得た。氏は、京成ホテルのバリアフリー化に力を入れてこられただけでなく、霞ケ浦に於いて湖上遊覧でも身体障害のある方などを積極的に受け入れるなど様々な工夫を試みてきた人である。京成グループの一員である霞ケ浦のマリーナでは、バリアフリー化した遊覧船や「アクセスディンギー」と呼ばれるユニバーサルデザインのヨットを浮かべるなど意欲的に取り組み、好評を得ていると紹介されている。このヨットは、「全く経験のない人でも、3分間の説明でセーリングできるように工夫され、設計され、建造されている」、そして最も肝心な安定性も抜群ということで障がいのある人たちの利用も多かったと、紹介されていた。
2006年2月の寒い朝、さいたま市浦和区にあるビーポップに集まり、障がいのある方々と合同で霞ケ浦に向かった。秋元氏に歓迎され、早春の日差しは眩しく湖上に照り映え、アクセスディンギー試乗、昼食後は、遊覧船で湖上遊覧などを楽しんだ。水面を渡ってくる風は冷たかったが、心は暖かさと楽しさでいっぱいの一日であった。こうして、障がいへの理解を深めることに力を入れながら、2年次前期で予定されている日帰り旅行計画実行への足がかりへと進んでいった。霞ケ浦での遊覧は、事業体の利用者各位にとても好評で、間もなく事業体としてのプログラムとして定着し、それから15年過ぎた今も年に数回、恒例の催しとして継続されている。 (写真 上から順に、ことわりのないものは筆者撮影) 東京駅・身体の不自由な方の待合室(JR東日本と東海への連絡用の電話がある) 東京駅の地下通路 天龍寺境内の紅葉をバックに 龍安寺のミニ石庭(京都UT・コンシェルジュ案内より借用) 霞ケ浦 アクセスディンギー試乗へ 霞ケ浦での遊覧を終えて(遊覧船は、BF化されている)
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