2022.01.31 小野 鎭
一期一会 地球旅 206 ユニバーサルツーリズムの普及を目指して(4)

一期一会 地球旅(206) ユニバーサルツーリズムの普及を目指して(4)

 専門学校でのUT学科は2008年度で残念ながら学生募集は中止されたが、14年後のいまではユニバーサルデザインという言葉や共生社会という考え方が一般的にも言われるようになり、観光庁でもユニバーサルツーリズムの普及に力がいれられている。日本旅行業協会(JATA)でも旅行業界の一つの考え方としてUTをもっと広めていくことの必要性がうかがえる。 航空業界でも、例えば、ANAでは、「おからだの不自由なお客様へのご案内」https://www.ana.co.jp/ja/jp/serviceinfo/share/assist/として以下のように詳しく紹介されている。 【歩行の不自由なお客様】 ①病気やけがのあるお客様、②目の不自由なお客様、③耳や言葉の不自由なお客様、④座位が保ちにくいお客様、⑤身体障害者補助犬をお連れのお客様、⑥知的障害・発達障害のあるお客様、⑦アレルギーのあるお客様等。 【設備、施設へのご案内】として、空港内、機内と続く。 そして【その他のご案内】として、割引運賃、団体旅行や養護学校・特別支援学校のお客様へと続いている。 さらに【書類などについて】、①診断書、②コードシェアをご利用のお客様、③医療電子機器用シート、④酸素ボンベ仕様確認書、⑤歩行状況チェックシート等と細かく区分した案内がある。 最後に【おからだの不自由な方の相談デスク】が設けてある。
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つまり、お客様のニーズにどこまでも細かく応えるためには、質問に答え、配慮を重ねてきた結果、これほど細かく案内を載せることになったのであろう。日本航空(JAL)でも「お手伝いを希望されるお客様へのご案内」として、詳述されている。いずれの場合も、国内線が主であるが、国際線の場合は、行き先国や行き先の空港などの対応によって違ってくるので自社内で対応できるものと相手方によって差異や種類が違ってくるのはその都度、調べる必要があるのは当然であろう。 航空会社として、「お身体の不自由な方への取組み」は、今では、特にANAは世界でもトップクラスではないだろうか。
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1990~2000年代になって自分たちが「もっと優しい旅への勉強会」(*)として旅行業や福祉関係、障がい者本人、学者や学生など興味ある人たちが集って、もっと利用しやすい交通手段や宿泊や公共施設、トイレ、町づくりなどについて勉強した頃、航空会社にも参加を呼び掛けた。最初は、少なかったが、次第にグランドスタッフ、中にはCA(キャビンアテンダント)などの参加も見かけるようになり、熱心に勉強しておられたと記憶している。多分、すでに「身体障害のあるお客様」への取組みなど様々な例を経験し、社内的にも勉強しておられたと思う。さらに勉強会に参加していた様々な異業種のメンバーからもいろいろな注文やアイデアなども伝わっていたのではないだろうか。諸外国の航空会社とも連携されて学習効果が積み重ねられて現在の「お手伝いの必要なお客様」「Special Assistance」が設けられていると思う。勉強会当時の印象を思い浮かべ、隔世の感を覚える。身内にも重い障がいのある児童を抱える家族がいるが、先頃、ANAを利用したとか。航空便利用にあたって、最初の問い合わせからそれへの対応を経て実際の搭乗と機内サービスなどは至れり尽くせりであったと、満足感を覚え深い信頼を覚えたと喜んでいた。 なお、障がい者割引運賃(日本国内線)については、第1種、第2種身体障害者、精神障害者には障害者割引が利用できるとあるが利用条件などについて細かく説明されているのでこれをよく読んでから利用相談することが大切であろう。利用条件は、各航空会社とも同じような扱いが多いが、その都度、よく確認することが肝要。身体障害者手帳、戦傷病者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳など障がいの種類によって手帳の名称が違っているのでわかりにくいことがあるが、通常、手帳にはJRまたは航空運賃の割引率について記載されていることが多い。また、国際線には障害者割引は設定されていないとある。 (写真/イラスト等) ANAの案内より もっと優しい旅への勉強会(2015年 自主解散)