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小野先生の一期一会地球旅
2022.03.01 小野 鎭
一期一会 地球旅 210 イタリアの美とスイスの絶景を訪ねる旅(2)
一期一会 地球旅(210)
イタリアの美とスイスの絶景を訪ねる旅(2)
そんなことを感じながら、2006年から2011年にかけて、立て続けに三度ローマを訪れたがそれぞれ特徴ある経験をすることが出来た。2006年は、以前に述べた専門学校の研修旅行でいわば、実践バリアフリー旅行。この時は、特別講師として学校での実習に協力いただいていた特別講師上山のり子さんにも同行いただいた。学生たちは、UT学科以外の旅行系学科の男性諸君も交えて古都での介助という貴重な経験をすることが出来た。上山さんは、彼らのおかげで階段を下りて、トレビの泉にコインを投げ入れることが出来たと、喜んでおられた。 かねて感じていた古都ローマの街は、車いすの方などには多分歩きにくいであろうことを改めて痛感したことである。特に中心部の旧市街などは石畳が多く、歩道も狭いので車いすの方自身はもとより、介助者であっても苦労が多いだろうな、と思った。古代ローマ時代からある古い通りであるとか、16~17世紀のバロック時代に建造された建物などが続く狭い街路が入り組んでいる。それ自体が旧市街の魅力ではあるが、
歩行に不自由のある方は不便であろうと思う。とは言いながら、古い街づくりであり、貴重な建造物や文化財が溢れ、世界遺産として指定されている一帯のバリアフリー化を求めるのは難しいことかもしれない。一方では、大きな教会やカンポといわれる広場を中心に一帯が自動車の乗り入れを制限したり、禁じたりすることで歩行者のみに解放されている区画も多い。コルソ大通りなど目抜き通りで広い歩道などのあるところでは、日本の黄色い点字ブロックにあたる白色のサインが設けられているところもあった。石畳さえ克服すれば安心して歩けて、古都の魅力を味わえるということも言えるであろう。路上のカフェでエスプレッソを味わうのも一興である。
コロッセオは、1900年以上前に建設されており、古都ローマのシンボル的な存在である。この巨大な建造物であっても、多分1980年代まではそのすぐ横に主要道路があり、一日中多くのクルマが行きかっていた。振動によってこの建造物は損傷を受けないのだろうかと、ここを観光バスで走り抜ける度に気 になっていた。その後、長年にわたって、周辺一帯が景観保護保全区画として整備されてきた。緑地が設けられ、歩行者のみに解放されるようになり、近年では観光客が思い思いに見物に訪れている。観光案内書やローマのガイドからよく聞くのは「コロッセオがある限りローマは存在する。コロッセオが倒れるとローマも倒れ、ローマが倒れるとき世界も終わる」といわれるコロッセオであり、壊れたら一大事! ローマ市やイタリア政府もコロッセオの保存についてはきっと並々ならぬ配慮をしていると思う。
実際のコロッセオ内部は、3階部分まで観光客に開放されているが、古代に建設され、当時建設されたレンガのかなり大きな段差になっている階段を上らなければならない。従って、歩行に不自由のある人には見物も楽ではない、と聞いていた。しかし、最近では古代建造部分には触れない形で、内部にエレベーターが設置されており、併せて一階部分に多目的トイレも設置されていると案内されている。日本で言えば国宝級の文化財であって最重要建造物であり、世界遺産でもあるが工夫次第でバリアフリー化できるということであろうか。ローマ市民だけでなく、この町を訪れる旅行者の中にも車いす使用者は多いはずであり、コロッセオのバリアフリー化は有難いというか、当然というべきか。日本流に言えば合理的配慮の実例であろう。 2010年は、完全にプライベートであり、普段は手配会社による貸切バスを利用してガイドによる案内で市内観光をしているがこの時は個人でサンピエトロ大聖堂に詣で、次いでバチカン美術館を見学したりした。気づいたのは何という観光客の多さ。入場を待つ長い列であり、その顔ぶれの多彩さである。昔は日本人やアメリカ人の団体が多かったが、今は、中国人や韓国人、東南アジア系、中近東やアフリカ系、南米系などの顔が続き、にぎやかな言葉が続く。反対に、日本人らしい顔は昔に比べるとあまり見えず、個人客らしい姿が所々に見えた。多分、日本人の旅行パターンが昔に比べると変わっていて、団体志向から個人スタイルに変わってきていたのであろう。これは、ローマに限らず、その後のフィレンツェなどでも同じであったし、数年後、パリやロンドンに行ったときも同様であった。バチカン美術館に入ると鉄道のターミナル駅のような混雑ぶり。システィナ礼拝堂は、最大の見どころの一つであろうと思うが、内部は見物客であふれ、入場制限もあった。「天地創造」など、昔、英語で苦労したマイケルアンジェロ(ミケランジェロ)の一大傑作を鑑賞するのも一苦労であった。
2011年は、高校の同期生で旅行好きの有志を案内して「イタリアの美とスイスの絶景」を巡る旅であった。自分は2008年頃から世界遺産を学び始めていたのでガイドによる市内観光などに続いて、翌日は朝から希望者を案内してカタコンベに行き、次いでピンチョの丘からスペイン階段一帯などの名所を訪れた。映画「ローマの休日」でヘプバーンがアイスクリームを食べながら歩いたところだ。我々世代にはこの映画は特に人気があり、ローマに行くとグレゴリー・ペックやオードリー・ヘップバーンがこの町で走り回ったあれこれのシーンが話題になる。さらに、カンピドリオの丘やフォロ・ロマーノへも案内した。古代ローマ時代に中心を成した一角である。神殿や集会場などが建ち並んでいたところであり、2000年前、市民や奴隷、元老たちや執政官などもこの道を歩いていたのかと思うと当時の賑わいが髣髴として蘇ってくるような気がした。 それでいて、この時は、腰痛がひどく、真夏の昼下がり、足を引きずって石畳や階段を歩くのはかなりの厳しさがあったことを思い出す。年相応に無理のない行動をすべきだったと内心大きな反省であった。
写真&資料(ことわりのないものは筆者撮影)
トレビの泉にて(特別講師上山のり子さんと旅行系学生)(2006年) ローマ市内中心部で見かけた点字ブロック(2006年) フォロ・ロマーノ一帯の景観保護と保存計画図、コロッセオ周辺は緑地化されている。(右下)(2006年) コロッセオ内のエレベーター Disabled Accessible Travelより借用(2019年) スペイン階段を背にして(2011年)
(以下、次号)
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小野 鎭
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