2022.03.29 小野 鎭
一期一会 地球旅 214 イタリアの美とスイスの絶景を訪ねる旅(6)

一期一会 地球旅(214) イタリアの美とスイスの絶景を訪ねる旅(6)

 
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 ツェルマット滞在3日目は、メンバー全員でクライン・マッターホルン(小さなマッターホルン3884m)までロープウェイで上り、氷の宮殿などを見物した。さらに、展望台からはツェルマット一帯の雄大な風景、山頂のとがった部分を突き抜けた向こう側見下ろすとイタリア側の谷間。つまりスイス・イタリアの国境近くに立つという得難い経験をした。この雄大な風景には素直に感動しながら、一方ではこの極端なてっぺん、よくもこんなところまでロープウェイを建設したものだとこの国の鉄道・索道建設技術に只々感心するのみ。日本や世界各地でも、ロープウェイやケーブルカーなどではスイスのメーカーの名前をよく見かけることも頷けるような気がする。
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この日は、少しだけマッターホルンが雲間に見え、メンバーは、歓声を挙げた。復路は、ロープウェイを途中で降りて、氷河の舌端をのぞいたり、山小屋のテラスカフェで素朴なお昼を楽しんだりした。カフェの旗竿には、スイス国旗の下に日の丸がはためいていた。ウェイターに聞くと、昨日のなでしこの優勝を祝してくれていたようである。その後、途中駅までハイキング、美しく可憐な高山植物の花々が澄んだ青空に映えていた。
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夕方、集落の真ん中を流れる川にかかった橋の上にはたくさんの観光客や登山者らしき姿が集まり、この日、やっと姿を見せてくれたマッターホルンは少しバラ色に輝き、この雄姿にみんな目を細めていた。この旅行中、ローマでは腰痛に苦しんで古代遺跡のなか、足を引きずりながら歩いたが、その数日後、ツェルマットでは、元気に山歩きすることが出来た。あれから10年余が過ぎたが、今も懐かしく思い出される。 翌日、ツェルマットで3泊4日の滞在を終え、最終目的地チューリヒへ向かった。ツェルマットから先ずはテッシュに向かう。駅には、世界一遅い特急として有名なグレッシャー・エクスプレス(氷河特急=スイス観光局)が入線していた。ここからスイス東部のサンモリッツまで291kmを8時間かけて走る。移動手段であると同時に遊覧列車として日本からの観光客にも評判。氷河を抱く山岳や緑の牧場などスイスの絶景を車窓いっぱいに楽しませてくれる。但し、今回は、これには乗らず、バスでローヌ川に沿って進み、フルカ峠を越えてチューリヒまで230kmを走り、お昼過ぎには到着することを予定している。テッシュの駅に着くと、中年の女性が待ってくれていた。本日のドライバーである。日本では、貸切バスのドライバーとして女性はめずらしいと思うので正直なところ大丈夫かな(?)と頭の中をよぎったが、10数個あるスーツケースを座席下のトランクルームに要領よく積み込むなど手慣れたもの。マッター渓谷の幾重にも曲がりくねった道をバスで下っていくと、バスのドライバーとしては大ベテランである我がグループのリーダーであるY氏も彼女を次第に信頼してきたらしい。
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谷間を出て、広々とした緑野を右へ曲がりローヌ川に沿って快走して行くと次第に沃野は狭まり標高が高くなっていき、民家も途切れ途切れになってきた。川幅も細くなり、流れが速くなっていったが、このローヌ川は西へ流れてレマン湖に注ぎ、ジュネーブを過ぎるとフランスに入る。そしてやがては地中海に流れ込む全長814㎞、フランス四大大河の一つに数えられている。バスはさらに高度を上げていき、両側の山の上には雪渓さらには氷河が見えている。やがて道は二手に分かれ、一本は北へ向かってグリムゼル峠を越えてベルナーオーバーラントへ向かう道。我々はそちらへ曲がらず直進していくとやがてBelvedere 2300mなるポールが立っていた。目の前には巨大な氷河の舌端が見え手前には灰色の大きな水たまりができていた。この谷間いっぱいにローヌ氷河があり、ローヌ川の源流となっている。
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ここにはHotel Belvedereがありローヌ氷河をながめる絶景の地であったが温暖化の影響で年々氷河が後退し、時代の変化と共にホテル自体は閉館、氷のトンネル(Eis-Grotte)とレストランや土産物店があるのみ。このローヌ氷河はじめスイスや各国では、夏になると氷河の上にフリースなどの覆いを掛けて氷河の溶解を防止しようとする取り組みがなされていると聞く。勿論、それで十分ではあるまいが、一定の効果が上がっていると聞く。とにかく、何とかしなければ!という必死の思いであり、できることからやっていこうということであろう。 (Youtube) 地球温暖化の影響で、氷河の後退が止まらず、何も対策を取らないとすれば2100年頃には、アルプスの氷河がほぼ消滅する恐れもあると報じられている。(日経新聞 2017年11月13日)地球温暖化の影響で、氷河の後退が止まらず、何も対策を取らないとすれば2100年頃には、アルプスの氷河がほぼ消滅する恐れもあると報じられている。(日経新聞 2017年11月13日) 地球温暖化が全世界的な課題であることを改めて思う。
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ベルベデーレで氷河をチラッと見て小休止の後、出発。さらに高度を上げ、フルカ峠(2429m)を超えるとヘヤピンカーブを繰り返しながら、次第に高度を下げていった。眼下には、鉄道の線路が見えた。あの氷河特急もこの路線を通っているが、今はフルカ峠の下をトンネルで抜けている。この日はあいにくの曇り空であったが、ここではバスからの眺めの方がはるかに雄大だろう。実は後になって知ったことだが、映画ジェームス・ボンドの「ゴールド・フィンガー」が撮影されたところでもあり、名車アストンマーチンでのカーチェイスが繰り広げられたところでもあったとのこと。
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この旅行のときにメンバーには、そのことを紹介できなかったことを今になって申し訳ないと思っている。この峠道を舞台にふもとへ降りてアンデルマットでアルプス越えのハイウェイに入り、いくつかの湖水のほとり、牧場や集落などまさに絵葉書のような美しい風景を車窓に眺めながら予定通り昼過ぎにチューリヒに着いた。
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スイス最大の都市チューリヒは経済・文化の中心を担っているが、古代ローマ時代から栄えてきた歴史を誇り、現代都市の快適さと2000年以上続く古い街として名所や史跡が多い(スイス観光局の案内より)。 この旅行、最後の夜は市内中心部を流れるリマト河畔にあり、14世紀から続くギルドハウスの中にあるHaus zum Rüden(猟犬の館の意)という由緒あるレストランでお別れ夕食会。個室での優雅な雰囲気を味わいつつ、気の置けない仲間たちはローマから始まった「イタリアの美とスイスの絶景を訪ねる旅」各地での印象を語りながら、一方では高校時代の愉快な思い出を繰り返しては楽しいひと時を過ごした。宴を終えて外へ出てみるとこの町のランドマークともいえるスイス最大のロマネスク様式の寺院グロスミュンスター(大聖堂)が雨に煙り、建物群の灯が川面に映って揺らめいていた。この雨は旅の終わりを惜しむ涙雨だったのかもしれない。(2022年3月14日記) 写真&資料(上から順に。ことわりのないものは筆者撮影) クライン・マッターホルンにて (2011年7月17日) アルプスにはためく日の丸、後方はモンテローザ山群(同上) 夕方、やっと仰いだマッターホルン(同上) ベルベデーレから見たローヌ氷河(2011年7月18日) 氷河の溶解を防止するために掛けられたフリース(TEMPO CO. Aug.24,2019資料より借用) フルカ峠への道、谷の真ん中の白い流れがローヌ川(2011年7月18日) お別れ夕食会、Haus zum Rüdenにて (同上) グロスミュンスター(大聖堂)とリマト川に映る灯 (同上)