2022.12.05 小野 鎭
一期一会 地球旅 239 英国の伝統・文化と田園を巡る旅11
一期一会・地球旅 239
英国の伝統・文化と田園を巡る旅 ⑪
(Chester : チェスター)

 
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旅の4日目、10月7日午後中部イングランドのチェスターに着いた。古代ローマ時代からの城塞都市という紹介がある。これまでエディンバラ、ウィンダメアはいずれも雨の夕方、それも少し薄暗くなってからの到着であったので街の雰囲気をつかむことが出来なかった。しかし、この日は、まだ日も高く、空は明るくあたたかかった。
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ホテルにチェックインして、街へ出てみた。ガイドブックを見ると、この町は歴史が古く、ローマ時代までさかのぼるとある。町を流れるディー川(River Dee)の水運を利用した通商都市として大いに栄えた。中世になると、ヴァイキングの侵略をうけたがこれを撃退し、町を囲む城壁(City Wall)はさらに堅固なものへとして行った。今日も、この壁はしっかり残っており、英国内では最も保存状態の良い城郭都市として残っていると紹介されている。チェスターは、Castrum (カストラ)の語源で、これはマンチェスターやウィンチェスターも同様とのこと。ローマが去っても、痕跡として残ったと説明がある。(Wikipedia)

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街の中心部には、木組み様式の建物が並び、家々の壁には木骨が美しく浮き出ており、ハーフティンバー様式(Half Timbering)と呼ばれる工法だそうで半木骨造ともよばれ、アルプス以北の北方ヨーロッパの木造建築に多く見られる。ドイツのローテンブルクやスイスの中部から東部にかけてもよく見かけたと記憶している。壁と木造部分を半々にして、木材を外部に見せるためともいわれる。柱、梁(はり)、斜材(筋交い)、内柱、窓台などの軸受けは隠さずに装飾材としての役目を兼ね、漆喰や煉瓦、石などを研いで仕上げてあるという。チェスターでは白壁と黒い柱が浮き出ており、ヴィクトリア朝時代のものが多く、中心街に美しく並んでいる。中心街のザ・クロスと呼ばれる商店街を歩くと、建物は2階のバルコニー部分や地上階をアーケードのように廊下状につないでおり、中世からの伝統としてロウズ「Rows」と呼ばれて今も残っている。雨や雪の日でも濡れることなく商店街を歩けるようになっている。ただし、ところどころ上がったり下がったり階段でつながっているところもあるので足の不自由な人には不便かもしれない。

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この旧市街を城壁が取り囲んでおり、その上が通路となっている。我々もこれを一回りしてみた。ほぼ1時間くらいであっただろうか、夕日に照らされる旧市街と壁の外側の緑地や悠々と流れるディー川の岸辺の風景はなかなか見事なものであった。
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かつてのチェスター城は、旧市街の南側に位置しているがそこまでは行く時間が無かった。城壁めぐりと言えば、この前年、2012年にクロアチアのドゥブロブニクでも旧市街を取り巻く市壁の上を歩いたことを思い出した。あの時はその前日、スプリトでディオクレティアヌス皇帝の宮殿を訪ねている。古代ローマに縁のある遺跡をシリアへ足を伸ばし、それだけでなくアフリカのザンビアとジンバブエの国境にあるヴィクトリアの滝(モシ・オ・トゥニャ)まで訪れたという旅行好きのS君が一緒だった。しかし、彼はこの年3月、遠いところへ旅立ったと聞き、彼の姿が今回は無かったことが寂しかった。もし、彼がここにいたら、この町が古代ローマから続く城塞都市ということでもう一つ古代ローマゆかりの地を訪ねたこと喜んだであろう。

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城壁の上を周ることで旧市街をながめた後、中心街にあるチェスター大聖堂を訪ねた。11世紀にはベネディクト派の修道院となり、その後、ヘンリー八世により修道院は廃止され、英国国教会の大聖堂となったそうである。内部は、カトリックの聖堂などに比べると、華やかな飾りや聖人たちの絵や彫像などはあまりなく、質素な雰囲気であった。それでもステンドグラスは見事であった。広いカフェがあり、これはかつて修道僧たちの食堂を改造したものだそうである。
 
 この日の夕食は、MD'sという名のレストランであった。ホテルから10分くらいのところにあったので事前に下見がてら立ち寄ってみた。ところが開店前、日本流に言えば、準備中ということであっただろうか、ガラス越しにのぞいても人影らしいものも見えず、ひっそりしていた。何かの間違いでなければいいが、と思いつつ引き上げざるを得なかった。ホテルに戻り、電話してみたが応答はなかった。それでも、予約した時間に行ってみるとちょうどいま店を開けたという感じであった。この日の予約は我々だけであったらしく、そのため先ほど店を開けたのだということであった。シェフとウェイトレス兼マネジャーの2人だけで、なんとなく忙しく動き回っている様子。ガイドブックを見ると、「歴史ある建物を利用したレストラン」とあり、「魚介類を主としたメニューで幅広い料理が特徴」とあったが何とも心もとない様子は否めなかった。手配会社は十分に調査したうえで手配したと思うので信頼していたが初めて訪れた街であり、そのまま従っていくしかなかった。
 
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このレストランでのサービスは悠長な運びであり、もっとてきぱきやってくれればよいのにと思った。そのうち、ちらほら他の客の姿も増え、安心。我々も旅のあれこれを話しつつ、食事を楽しむことが出来た。会食の場合、欧米人は食事中も会話を楽しみながら、ゆっくり過ごすのでそのペースでこの日も進められたのであろうか。シェフとウェイトレス一人ずつでは、それが精いっぱいだったのかもしれない。後でガイドブックをよく見ると、営業は、水~土、日~火は休みとなっていた。我々が訪れたこの日は月曜日であり、なぜ予約がとれたのか、今となってはわからない。とにかくこのレストランで食事をしたことは間違いない。現在、このレストランのホームページを見るとかなり立派な紹介があり、今なら安心して行けそうである。食後は、ロウズを上がったり下がったりして人影もほとんどない静かな中心街を散歩しながらホテルへ戻った。
 
この日は、朝、湖水地帯のウィンダメアを発ち、リヴァプールでアルバート・ドック一帯の後、鉄板焼きの昼食、ビートルズのペニーレイン、そしてチェスター見物などを楽しみ、夕食と長い一日であった。明日は、いよいよ産業革命ゆかりの地を巡ることへの期待を膨らませつつ、ベッドに着いた。(以下、次号)
 
写真&資料(上から順に)
Chester : Visit Britainより
古代ローマ時代の円形劇場 : English Heritageより
Chester Rows : Visit Chesterより
チェスターの市壁上にて : 2013年10月7日 筆者撮影
市壁の上から見たディー川の流れ : 2013年10月7日 筆者撮影
チェスター大聖(アーケード)堂のステンドグラス : 2013年10月7日 筆者撮影 
夜更けのロウズ 1階部分 : 2013年10月7日 筆者撮影