2022.12.19 小野 鎭
一期一会 地球旅 241 英国の伝統・文化と田園を巡る旅⑬ (ストラトフォード・アポン・エイボンからブロードウェイへ)
 
一期一会・地球旅 241 
英国の伝統・文化と田園を巡る旅 ⑬ 
(ストラトフォード・アポン・エイボンからブロードウェイへ) 
 
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アイアンブリッジ峡谷を発ち、ストラトフォード・アポン・エイボンへ向かった。窓外にはバーミンガム大都市圏の工業団地等が遠望できた。トラックなどの往来で交通量は多かったが渋滞はなく、小一時間走って昼前には着いた。緑濃い森や田園地帯の中にあり、エイボン川に沿ったストラトフォード(古英語で河を渡るStreetの意)アポン・エイボン、この長い名前の、しかし、こじんまりした町は文豪ウィリアム・シェークスピアの故郷であることで知られており、世界中からの観光客でにぎわっている。近隣の農作物や牛などの市が立つ市場の町として発展する一方で文教都市でもあるそうとか。シェークスピアゆかりの建物やロイヤル・シェークスピア劇場があることでも知られている。中心街にはチェスターで数多く見た木骨造り、ハーフティンバー様式の建物が連なり、カフェやレストラン、土産物店などが並んでいる。ここでは、この町で最古といわれる建物に入っているレストランでの昼食。英国名物のFish & Chipsであったが昼時で団体客が多いせいかとても賑やか。広い店内では、大勢の客の声だけでなく、ウェイターやウェイトレスが忙しく行き来しており、いかにも観光地の食堂といったおもむきで慌ただしさは否めなかった。この旅行が始まってまだ、5,6日しかたっていなかったが、これまでは観光地でありながらも比較的静かな(旅行最盛期は過ぎていたということもあった?)レストラン等での食事であったので自分たちも観光客でありながら慌ただしいツーリストメニューに追いかけられているような思いであった。人間とは勝手なもので、自分たちは違うんだ、と思っていたのかもしれない。 
 
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昼食後、シェークスピアの生家を訪れた。彼が生まれた16世紀当時の生活様式が実物とレプリカの両方を用いて再現されており、彼の生家はかなり裕福であったらしかった。次いで、中心街から少し離れたところにあるシェークスピアの妻アン・ハサウェイが結婚前に住んでいたという家を見学した。入り口前には牧場が広がっており、羊が草を食んでいた。かなり大きな農家であったらしく、茅葺屋根とチューダー様式の見事な外観を持つ建物として紹介されている。日本では、数百年の歴史を持つ建物であるとすれば、神社仏閣や城郭などが観光資源として紹介されているが、この文豪とさまざまなかかわりがあるとしても、その妻が生前に住んでいた家が観光施設として紹介されるということなどはあまりないだろう。さすがに世界文学史上に残る文豪とのゆかりとはすごいものだと思いつつ、一方では、文化の違いとはそういうことなのかなと思ったりもした。 
 
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ストラトフォードでの観光を終え、今夜の宿泊地であるブロードウェイへ向かった。コッツウォルズ地方であり、イングランド屈指の美しさを誇るカントリーサイドとして紹介されている。淡い緑の中に白い羊たちが草を食むのどかな風景が続いていた。資料を見ると、この美しい自然は、湖水地域などと並んで(Area of Outstanding Natural Beauty=AONB)=特別自然景観地域として指定されている。イングランド中部から南部にかけては大都市や中小の都市が点在しており、各地にはそれぞれ古い歴史を持つ城郭や教会建築などの見どころが紹介されているがそれに比べるとコッツウォルズ地方はこのあたりで採れる石灰岩(ライムストーン)で造られた教会や民家などが点在し、森や木立がこれらの集落を取り囲んでいる。建物はいずれもうすい黄色であるとか黄土色をしていることが多く、派手な色彩はほとんど見られない。公的にも建物の色やスタイル、高さなどはある程度制約があるのかも知れないが、日本ならばさしずめ重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)等にあたるのであろうか。
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この地方を紹介したガイドブックや旅行案内を見ると、ハチミツ色をした建物や教会・・・と表現されていることが多い。そこでハチミツの色とはどんな色だろうか、と一度確かめてみようと思いつつ、まだ実行していないが、申し合わせたようにこの表現がされている。そこで今回、WikipediaのCotswoldsの案内を開いてみた。なるほど、この地方の石灰岩は、ジュラ紀のもので、北部ではhoney-coloredとあり、中部から南部にかけては、golden-coloredとある。とにかくそれはそれで納得した。 
 
 観光に限らず、その国を見るときは、首都以外にもぜひ地方色を味わってみたい。英国で言えば、ロンドン観光は勿論であるが、そこは人種のるつぼであり、国際色にあふれた大都市。確かに英国そのものであるが、しかし、英国はロンドンですべて、とは思わない。いうところのカントリーサイドへ行ってみるとロンドンとは違った様々な歴史や文化に彩られているものがあるように思える。コッツウォルズとはそのような地域の一つではないだろうか。 
 
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ブロードウェイは、コッツウォルズ地方の北部に位置する小さな集落、古くから羊毛産業が盛んであり、その集散地としても栄えてきたとか。ロンドンに向かう道が上り坂となるため、この地で2頭立ての馬車が4頭立てに替えられたというおもしろい説明もある。ここでは街道筋にあるかつての大きなマナーハウスがこの地域でも代表的な4つ星ホテルの一つとして紹介されており、ここに宿泊した。マナーハウスとは、古い時代の荘園領主や地域の有力者の邸宅であった大きな建物であるとか、中には城郭を思わせるものもあるらしい。
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600年以上の歴史に彩られたこのLygon Arms Hotel は何世紀にもわたって、王族や著名人を迎えてきたという。宿泊した客室に入ってみると伝統的なつくりで重厚な調度などは現代風のコンパクトなものと比較するとその違いに戸惑うこともあった。しかし、慣れてくるとシックな落ちついた館内は旅人の疲れをゆっくり癒してくれるように思えた。できれば2~3泊してこの地でのんびり過ごしてみたい、そんな思いにさせてくれる宿であった。(以下、次号) 
 
写真&資料(上から順に、) 
ストラトフォード・アポン・エイボン最古(?)の建物に入っているMarlowe’s Restaurant F/B 
シェークスピアの生家にて : 2013.10.08 筆者撮影 
コッツウォルズの自然景観 : Magnificent Meadows より 
コッツウォルズの集落:Biburyの町 : Cottages in the Cotswolds より 
Lygon Arms Hotel : 2013.10.08 筆者撮影 
Lygon Arms Hotel の中庭、筆者の部屋は2階の右から2つ目の窓(窓) : 2013.10.09筆者撮影