2023.08.08
小野 鎭
一期一会 地球旅 273 カナダの大自然と遊ぼう17
一期一会・地球旅 273
カナダの大自然と遊ぼう ⑰ カナディアン・ロッキー ⑦
バンフからジャスパーまでのトランス・カナダ・ハイウェイとアイスフィールド・パークウェイを通っての観光は1976年から2019年までの40年余りの間に前後5回訪れている。もとより添乗業務であり自分本位の観光や遊覧を楽しむことは出来なかったが多くの場合ガイドやアシスタント同行での見物はほとんどなく、毎回自分自身がガイドブックを片手にドライバーからいろいろ教えてもらったりしながら、お客様をご案内してきたことがほとんどである。手配会社(Land Operator)を通じてホテルのほか、貸切バスの手配、入場観光やロープウェイなど、そして主要な食事も事前手配してもらっているが観光などの各種情報は最近ではインターネットによるところが多い。しかしながら、昔は政府観光局や在日カナダ大使館などにも相談して指導を仰ぎ、協力を求めたことも多く、大きな利点があった。そのような情報に基づいて、自分で掘り下げてきたことも多い。加えて2005年頃からは世界遺産について勉強することでさらに幅を広げることが出来たような気がする。今回、カナディアン・ロッキーを主として、添乗と旅行について思い出を書くにあたり、もっと幅広く探るほか、不確実なところを調べ直してみることで思い違いをしていたこともある。新たな気づきがあり、これらも参考にしながらさらに興味深く思ったことを書いてみたい。その中でも特に関心深いこと、それは自然環境保全と保護、もう一つは地球温暖化による自然の変化である。
先ず、カナディアン・ロッキー山脈国立公園群(Canadian Rocky Mountain Parks)のこと。1984年にユネスコの世界自然遺産として登録され、1990年には指定地域がさらに拡張されて面積2万3000㎢が対象地域となっており、これは日本の関東地方の2/3に相当する広大な範囲である。世界遺産アカデミー発行の「世界遺産大事典」をみると、広大な範囲の大自然であり、たくさんの特徴があるが、一言でいえば「氷河が作り上げた雄大な山岳地帯」と紹介されている。地質学的に言えば、カンブリア紀(約5億4200万年前から約4億8830万年前までとされる:Wikipedia)からの砂岩や石灰岩からできているロッキー山脈はおよそ6,000万年まえの造山運動によって誕生しており、さらに山を氷河が削り、現在のような峻険な峰々を形成した。北米の先住民がこの地に1万年前から住み始めたと考えられ、ヨーロッパ人による探索は1800年代の毛皮交易に始まり、19世紀末、山脈西部に大陸横断鉄道が敷設されたことや温泉が発見されたことが契機となってカナダ初の国立公園として1887年にバンフ国立公園が誕生。以後、一帯の雄大な自然が注目を浴びるようになり、アメリカの国立公園制度の影響を受け、20世紀前半にジャスパーなど4つの国立公園、さらに3つの州立公園が制定された。これらが世界遺産として登録されている。
一帯には、標高1,000mの低山から森林限界を超える高山帯まで多種多様な植物が自生し、山麓には針葉樹の森が広がる。この森林にはグリズリー(灰色ぐま)やミュール・シカなど、山岳地帯にはシロイワヤギ、灰色オオカミなどが生息している。また、ロッキー山脈がかつて海底であったことを示す生物の化石も多種見つかっており、多様な古代生物による複雑な生態系を知る上で重要な手掛かりとなっている。これら古代生物の化石が発見された地層はバ―ジェス頁岩(けつがん)と命名され、最初は1980年に単独の世界遺産として登録されたが、1984年にカナディアン・ロッキー山脈国立公園群の世界遺産登録と同時に、この中に吸収された。
一帯には、標高1,000mの低山から森林限界を超える高山帯まで多種多様な植物が自生し、山麓には針葉樹の森が広がる。この森林にはグリズリー(灰色ぐま)やミュール・シカなど、山岳地帯にはシロイワヤギ、灰色オオカミなどが生息している。また、ロッキー山脈がかつて海底であったことを示す生物の化石も多種見つかっており、多様な古代生物による複雑な生態系を知る上で重要な手掛かりとなっている。これら古代生物の化石が発見された地層はバ―ジェス頁岩(けつがん)と命名され、最初は1980年に単独の世界遺産として登録されたが、1984年にカナディアン・ロッキー山脈国立公園群の世界遺産登録と同時に、この中に吸収された。
これら国立公園は、パークス・カナダ(Parks Canada)という政府機関が管理している。この政府機関は、カナダ連邦環境・気候変動省(Environment and Climate Change of Canada 通称 ECCC)の管轄下にある。パークス・カナダでは、国立公園をさらに楽しめるように分かりやすい案内がホームページに掲載されている。カナダ西部についての案内では、ボウ湖が表紙に印刷されていることもうれしい。(Regional Vacation Planner for Western Canada)
バンフからコロンビア・アイスフィールドまでは、約200kmあり、どこを走っても道路標識以外ほとんど看板らしきものは見かけず、無論、野立て広告などは皆無であると承知しているが、国立公園としての環境と景観保護の観点からも厳重にこれらが守られているのであろう。省の名称にはずばり、「気候変動」を使っていることは、カナダが国を挙げて気候変動に取り組んでいることの証しでもあるだろうとさらに印象深く思える。(以下、次号)
【写真と資料、上から順に】
世界遺産 カナディアン・ロッキー山脈国立公園群 : 世界遺産アカデミー発行 世界遺産大事典を引用
バンフ国立公園・ペイト―湖 : 2009年8月30日 筆者撮影
Map of Canadian Rocky Mountain Parks : Wikipediaより
ミネワンカ湖畔(海抜1474m)から望むパリサー山脈(2900~3100m)にかかる森林限界 :湖岸のシラカバなどから針葉樹林帯へと続いている。: 2009年8月29日 筆者撮影
ミネワンカ湖畔近くで見かけたビッグホーンシープ(野生のひつじ) : 同上
Regional Vacation Planner for Western Canada : Parks Canada資料