2023.11.21 小野 鎭
一期一会 地球旅 288 カナダの大自然と遊ぼう 番外編3
一期一会・地球旅 288 
カナダの大自然と遊ぼう 
番外編 ③ カナナスキスからジャスパーへ ③ 
 カナナスキスでの滞在は予想以上に好評で皆さんに喜んでいただけた。多くの収穫があったと思う。そして、カナナスキスを発ち、ジャスパーに向かったが、この時はトランス・カナダ・ハイウェーもアイスフィールド・パーク・ウェーの区別もよくわからないままに、カナディアン・ロッキーの3,000m級の山並みとボウ渓谷の川と針葉樹林、時々見え隠れする湖沼群を車窓に楽しみながら北上した。途中、ペイトー湖にも立ち寄った。バンフ国立公園の中でも代表的な絶景の一つに数えられており、言うところのトルコ石のような乳白色を交えた青緑色の美しい湖面を展望台からはるかに眺めながら全員で記念写真を撮った。 
 
 この旅行は全体で33名、重度の障がいのある方も十数名おられ、そのうち、8名は車いすを使っておられた。ご家族や地域福祉団体(地域福祉研究会 ゆきわりそう)の姥山寛代代表以下スタッフも数名参加され介助したり、和気あいあいの楽しい仲間から構成されているそんな顔ぶれであった。アルバータ州政府の親善訪問担当部長の紹介でリフト付きの大型バスを借り切っていたが、一台では乗り切れず、もう一台普通の大型バスを準備してもらった。予算の都合もあり、添乗員は私一人であったので普通車には旅行慣れした人や英会話のできる方などに乗っていただいた。出発前にその日の行程に沿って見どころや注意事項などをあらかじめ説明しておき、ドライバーにはゆっくり、そして、車中でわかりやすく適宜案内してほしいと申し入れた。そして、何よりも安全運転に努めることが第一であると強調したことは言うまでもない。相互のドライバーは同じ会社に属しており顔なじみであったらしいが特に連絡を密にするようにと強調した。今日のように携帯電話があれば幸いであったと思うが当時はまだそのような便利さはなかったので精いっぱいの工夫をしたつもりである。これはこの時、カナダ滞在中の1週間を通じてその方法をとり、ほぼ順調に終えることができた。いまでもペイトー湖での記念写真を見るとさすがに大人数であったことを感じる。 
 
 実は、このグループの旅行は1988年にオーストラリアのメルボルンにご案内したのが初めてであり、この時は54名様、その中には18名の車いす使用の方がおられた。そして、翌年もう一度オーストラリアへ、そしてこのカナダが3回目であった。中には3回とも参加された方が数名おられたし、姥山代表は旅行計画が固まると準備については全面的に私に任せてくださった。苦労も多かったが多くの経験や失敗を重ねながら、「障害者旅行」は次第に要領よく運営できるようになっていったと思う。結果としてはその後も観光だけでなく、合唱やイルカとのふれあいなど様々なアトラクションを主として20数回の海外旅行、国内も与論島や八丈島などを加えて30数回お世話させていただいたことになり、その大部分を私自身が添乗した。このような経験から「もっと優しい旅」は私の旅行業人生の中でもとりわけ大きな存在となっていった。 
 
 ペイトー湖を終え、途中、コロンビア・アイスフィールド・センターで昼食・休憩、そしてはこの日は早めにジャスパーに着いた。この日の夕食はフリーで、皆さんはそれぞれにホテルのレストランや通りのカフェーなどで軽食を摂ったり、スーパーで食料品を求めて部屋で召し上がったりされたと記憶している。 
 
 ところで、ジャスパー一帯では、ジャスパー・パーク・ロッジというこの地域で評判の高級リゾートホテルがある。宿泊や食事は難しいにしても、ホテルのロビーでせめて食後のコーヒーでもいただきたいと姥山様に話したところ、行ってみようことになりタクシーで出かけた。希望通り、軽い食事をとり、しばらく歓談した。このグループの3回目の旅行であり、これまでの経験や思い出を語り、失敗談やおかげさまで・・・などの成功談話に花が咲き、将来的にはこんな旅行も計画したい、などの話題で時が過ぎていった。この年、1990年4月には、このグループの方々を主とした「私たちは心で歌う目で歌う合唱団」が東京文化会館でベートーベンの第九交響曲のコンサートを主催され、「歓喜の歌」を力いっぱい合唱、私もステージに一緒に立たせていただき、熱い感動を味わっていた。そして、可能ならばドイツのボンにベートーベンの生誕地を訪ね、現地で向こうの市民とも合唱できるといいですね、などの話もあり、夢はさらに広がろうとしていた。 
 
 その時、その夢のような話に水を差すようで悪いのですが私にはここジャスパーでは忘れえぬ思い出があります、と話をさせていただいた。そして、この時よりもさらに10数年前のジャスパーでの出来事について話をさせていただいた。(以下、次号) 
 
《写真》 
・William Watson Lodgeのあるピーター・ライード州立公園 1990年9月5日 筆者撮影 
・ペイトー湖にて 1990年9月6日 筆者撮影 
・カナナスキスでのひと時、右端が代表の姥山寛代氏 1990年9月5日 筆者撮影 
・ジャスパー・パーク・ロッジの夕景 Elizabeth Wilson カナディアン・ロッキーより