2025.03.03
あ・える倶楽部
一期一会 地球旅 351 ハワイにて(3)

一期一会・地球旅 351
ハワイにて(3)
私についていえば、この旅行では、もう一つハワイでの思い出がある。ホノルル滞在2日目が完全にフリーであり、かなりのメンバーが2島めぐりのツアーに出かけられた。ハワイ諸島は、ホノルルのあるオアフ島のほか、カウアイ島やハワイ島など8つの大きな島と周辺にある小さな島々からなっており、全体の面積は、日本の四国より少し大きく、2万8千㎢とある。その内、庭園の島(Garden Island)カウアイ島とビッグアイランド(Big Island)と呼ばれるハワイ島の二つを巡るツアーであった。ツアーは現地で募集されており、私たち日本人のほかにアメリカ人、ヨーロッパ人、アジア系など多国籍の人たちからなる30人くらいのグループであった。

カウアイ島では、ワイルア川を観光船で遊覧し、シダの洞窟を訪ねるコース。当時、エルヴィス・プレスリー主演の映画「ブルーハワイ」で彼自身が歌ったハワイアン・ウェディング・ソングのメロディーが流され、多くの観光客はお馴染みのメロディーを小さな声で口ずさんでいた。カウアイ島はもちろん、ハワイにはもう何年も行っていないので最近の様子は分からないが、いまでも、カウアイ島を訪れるとワイルア川やシダの洞窟の遊覧などでは、バンドがこの曲をウクレレなど弾きながら楽しませてくれているのだろうか?

午後は一気にハワイ島へ飛んだ。アロハ航空のB-737で1時間少々であったと思う。あの頃、ハワイではアロハとハワイアンの2社が競合して島々を結んでいたが、一番北にあるカウアイ島のリフエと一番南にあるハワイ島のヒロをアロハ航空がノン・ストップで結んでいた。残念ながら、この会社は2008年に破産して無くなっている。リフエとヒロやコナを結ぶルートはいずれもホノルルを経由しており、ノン・ストップ便はチャーター機以外にはないらしい。

ハワイ島は面積1万㎢余、日本の青森県や岐阜県と同じくらいの広さであり、世界最大の活火山がそびえる国立公園がある。マウナ・ロアはハワイ語で「長い山」を意 味する名の通り、海底部分にまですそ野が広がる世界最大の活火山。地上部分の標高,は4,100m、海底から測ると1万m以上となり、ハワイ島の面積の半分を占める。楯状火山で溶岩の粘度が非常に低いため、なだらかな稜線を描く。もう一つの高峰である標高4205mのマウナ・ケアの山頂はハワイ州では最高峰である。過去からの統計学では、毎年の晴天日が300日近くあり、大気中の水蒸気量が少なく乾燥しており、風位が安定している。高い標高と太平洋の中央に孤立した立地、また、ハワイ島の人口密度の低さから光汚染が少ないことなどにより、地球上の他の場所より空が澄み、天体観測には最適な場所ということで、マウナ・ケア科学保護地区(Maunakea Science Reserve)として指定されている。

また、標高約1,250mのキラウエアは、世界で最も活発な火山といわれる。たびたび噴火を繰り返すことで知られている。この火山の溶岩は粘着性が強く、地表を流れて海岸に至り、海に落ちる様は圧倒的な迫力があると紹介されている。一帯は「ハワイ火山国立公園」になっており、世界自然遺産として登録されている。但し、私たちが訪れた1974年はユネスコの世界遺産条約が定められてまだ2年過ぎたばかりであった。最初の世界遺産12ヶ所が誕生したのは1978年、ハワイ火山国立公園が世界自然遺産として登録されたのは、1987年である。
キラウエア火山の展望台から眺めたハレマウマウの火口から上がる噴煙は圧倒的に自然の驚異を見せていた。火山見物を終えてヒロの空港に向かうバスの中で通路をはさんだ隣には、50歳代の夫婦と思われるカップルが座っていた。この夫妻(?)ともニコッと笑みを交わすようになっていた。朝、ホノルルを出発してカウアイ島をまわり、午後、ハワイ島に着いてヒロの空港からこの火山見物ツアーバスに乗ってきた。ツアー出発から数時間を過ぎている混載観光であり、そのころには日本人同士ではなく、外国人とも言葉を交わすようになっていた。ヒロの空港までは、1時間近くかかったので少し言葉を交わした。アメリカ人だと思うので、「どこから来たのですか?」のような問いかけをしたのが最初だったと思うが、「アラバマ州から」だと答えてくれた。「州都(State Capital)はバーミンガムですか?」と小野は尋ねた。実は、以 前、英国の大都市バーミンガムの街を訪れたことがあり、同じ名前の都市が米国のアラバマ州にあることを知っていたのでそれを思い出したからであった。

それに対して、夫(?)からは、「バーミンガムはアラバマでは一番大きな町だが、州都は『モンゴメリー(Montgomery)』だ。」と答えてくれた。そして、「アラバマに行ったことがあるのか?」と嬉しそうに応じてくれた。「行ったことはないけれど、世界各地の地理は勉強しているのでできるだけ地名などは覚えるようにしている。」と、小野。アメリカ人に限らず、自分が住んでいる街であるとか州のことを知っているととてもうれしそうになるのは、洋の東西を問わず同じらしい。そんな小さなやり取りから言葉を交わし、次第に英会話が苦手ではなくなっていくことを経験から学んでいた。多分、ハワイからでは、日本より、アラバマの方が距離的には遠いと思うが彼らは、結婚30周年記念で子どもたちがこの旅行をプレゼントしてくれたとのことであった。結婚当初は、貧しかったのでHoney Moonには行けなかったし、今日までも旅行らしいことはしてこなかった。だから、子どもたちの贈り物がとてもうれしかったし、旅行を楽しんでいると二人は、満面の笑みを浮かべていた。

当時、私は結婚して7年目であったが、一年のうち、150~180日くらい添乗員として、世界中を飛び回っていた。しかしながら、個人的には家族としての旅行はほとんど皆無であった。多忙さが理由というよりは、経済的余裕もなく、僅かに週末、日帰りの旅行をするくらいであった。そして、いつの日か、この夫婦のように家族で旅行に出かけたいし、ハワイにも行きたいな、と願ってきた。カミさんとは、引退後、ヨーロッパに幾度か行った。しかしながら、結局ハワイには行けず、彼女は遥かに遠くへ逝ってしまい、今日に至っている。そして、机の横に貼ったスイス・アルプスで撮った写真の笑顔に励まされながら、毎週、「地球旅」を書いている。(海外教育事情視察団の項はこれで終わり)
《資料》
ハワイ火山国立公園 : すべてがわかる世界遺産1500中 世界遺産アカデミー発行
マウナ・ケア天文台 : ハワイ州観光局 アロハ・プログラム 資料より
《写真、上から順に》
・映画 Blue Hawaii : Park Circus資料より
・Aloha AirlinesのB-737-200 :Wikipediaより
・ヒロから仰ぐマウナ・ケア(頂上付近には天体観測所が並んでいる):Go Hawai’i 資料より
・キラウエア火山のハレマウマウ火口 : U.S. National Park Service資料より
・ハワイ島内のドライブ・ウェイ : Dewitt Move Worldwide資料より
・スイス・ベルナーオーバーランドのミューレンにて : 2007年7月 筆者撮影