2026.04.20 小野 鎭
一期一会 地球旅 409 初めての世界一周添乗(9)ロサンゼルスにて(3)
一期一会・地球旅 409
初めての世界一周添乗(9)ロサンゼルスにて(3)
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この項を書いているとき、LAの日系移民の歴史を描いたアメリカ映画「愛と哀しみの旅路」(Come See the Paradise)をテレビで見た。第二次大戦中、ロサンゼルスに住む日系人女性と白人男性の結婚とその後の強制収容所(マンザナー収容所)を描いたヒューマンドラマ。日系人の受難と家族の絆が描かれている。(1)
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他にも、山崎豊子の小説「二つの祖国」があり、真珠湾攻撃から東京裁判まで日米間の戦争に翻弄された日系アメリカ二世の姿が描かれている。日系二世でロサンゼルスの日本語新聞社記者の主人公が太平洋戦争によって日米二つの祖国の間で身を切り裂かれながらもアイデンティティを探し求めた日系アメリカ人たちの悲劇を描いた作品である。1984年にNHKの大河ドラマ「山河燃ゆ」としてテレビドラマ化された。これにより日系人ブームが起こったが原作も含めて在米日系人社会からは反発もあった。祖国は、アメリカ一つだけであるとする日系人の書名に対する違和感や強制収容の賠償問題などへの影響が懸念され、日系アメリカ市民同盟は、ドラマ化に際してNHKと協議して、「二つの祖国」から「山河燃ゆ」にタイトルを変更の上で放映となった。日系人コミュニティの反対を受けてアメリカでの放映は中止されたとのこと。(2)
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太平洋戦争時の日系アメリカ人の強制収容に対しては、1988年8月10日にロナルド・レーガン大統領は、「市民の自由法」(別称:日系アメリカ人補償法)に署名、「日系アメリカ人の市民としての基本的自由と、憲法で保障された権利を侵害したことに対して連邦議会は国を代表して謝罪する」として、強制収容を経験した日系人に対して公式に謝罪を表明した。また、1人当たり2万ドルの賠償金が存命者にのみ支払われることと、全米の学校において日系人の強制収用に関する教育を行うため総額12億5千万ドルの教育基金が設立されることも同時に発表された。(3) 

このような背景を知ると、日系企業が栄え、日本人や日系アメリカ人の活躍が華々しく紹介されることについて、日本人が見る目と日系アメリカ人が感じる社会であるとか文化というのはやはり違いがあるのだということを知る必要もあるということだろう。 

近年、日本への移民が増え彼らが日本社会で華々しく活躍している人たちと、日本で生まれた「外国系日本人」として育ち、生活している人たちとの間では、やはり同じような社会や文化に対する考え方が違うのかもしれない。圧倒的に単一民族多数の日本も近年は少子高齢化が進み、人口減少が進んでおり、人手不足に対応するためにも外国人を積極的に受け入れるなどの政策がとられている。このことについても様々な論争が起きている。待ったなしでの人口減少対策が求められており、いずれにしても日本社会が次第に変容していくことは間違いないであろう。世界には、多くの多民族国家があって、成長している国もたくさんある。これらの国での政策や国の在り方、社会と文化、ものの考え方などをもっと積極的に学ぶことの必要性が求められていると思う。
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アメリカでは、移民が米国民の雇用を奪っていると主張して不法移民を母国へ強制送還する必要性が訴えられている。これに対して批判もあるが、支持者がいることも事実である。しかし、米国経済の現状は、不法移民を含むメキシコやその他の中南米・カリブ海地域から移住した人々の労働力に依存していることも無視できない。2017年に米国各地で移民が就労拒否する「移民不在の日」が実施され、移民が働くレストランでは休業や営業時間の短縮に追い込まれたことが報道された。当時のFRB(連邦準備制度理事会)のイェレン議長は、「移民の流入が減少すれば、米国経済の成長率は鈍化する」と指摘した。(4) 

LA地域について書くにあたり、日系移民と日系人、日系社会について書いてきたがアメリカは多民族国家であり、地域によって構成される民族の比率が違っていることが多い。LAは、もともとはメキシコ領であったこともあり、スペイン語地名が多く、ロサンゼルスそのものもEl Pueblo de Nuestra Señora la Reina de los Ángeles de Porciúncula (ポルシウンクラの天使の女王聖母の信徒たち)=「天使の町」がもともとの名前であり、The City of Los Angelesが愛称となっている。リトル・トーキョーに近いオルベラ街には、1781年、この地に40数名の教徒集団がメキシコから渡来してプエブロと呼ばれ、入植をした。この地に集落を築き「天使の町」の由来を描いたモニュメントがあったと記憶している。(5)
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カリフォルニア州全体としてはヒスパニック系およびアジア系の人口が急増しており、2000年には、州全体で白人(ヒスパニック系を除く)が47%と過半数を割り込み、ヒスパニック系32%、アジア系11%、黒人7%、他となっている。また、LA市においては、ヒスパニック系が47%と最大の比率を占めており、白人30%、黒人11%、アジア系10%、他となっている。LA市では、全人口のうち、41.7%がスペイン語話者であり、英語の42.2%とほぼ同数であるなど、全米一のスペイン語人口を抱える都市としてヒスパニック文化の中心地となっている。(6) 

ダウンタウンの一画の大通りはスペイン語の看板が占有していると言ってもいいほどであり、行き交う人々も圧倒的にメキシコ人などヒスパニック系が多い。聞こえてくる言葉もスペイン語が多く、自分がアメリカにいることを忘れてしまいそうな錯覚に捕らわれることもあるほど。 

マイノリティ人口の大きさは、LA地域の文化の多様性を創造しており、それぞれのマイノリティが独自の文化を保持、発展させている。特に、LAにおいては、文化の多様性が街の活力源ともなっており、コスモポリタンな社会を作り上げている。また、ハリウッドを代表とする映画産業も当地社会に大きな影響を与えている。(7) 

幾度も書くように、LA訪問は1969年が初めてであったが、すでに述べたようにその後も様々なテーマでこの町を訪れている。西海岸では、LAとサンフランシスコが日本人旅行者が訪れる筆頭であろうと思うが、それ以外にも北からシアトル、ポートランド、南にはサンディエゴとある。私の場合は、LAを一番多く訪問していると思うし、馴染も深い。このところ、大谷選手始め、MLB(大リーグ)で活躍する日本人選手の活躍もあって、ドジャースのロサンゼルス、ジャイアンツのサンフランシスコなど西海岸への人気が一層高まっている感じである。観光だけでなく、日系人や日系企業の躍進ぶりなど最近の様子を見に行ってみたい、等と思いつつこの項を書いている。(以下、次号) 

《資料》 
(1) 愛と哀しみの旅路:ロサンゼルス・日系移民の歴史を描いた映画:ドラマ、Wikipedia 
(2)山崎豊子・二つの祖国:Wikipedia 
(3)日系人の強制収容とアメリカ大統領の謝罪:Wikipedia 
(4)米国におけるメキシコ人不法移民の現実:国際貿易投資研究所 内田 允 
(5)ロサンゼルスの歴史:在ロサンゼルス日本国総領事館 & Wikipedia 
(6)南カリフォルニアの人口:在ロサンゼルス日本国総領事館 
(7)南カリフォルニアの社会・文化:在ロサンゼルス日本国総領事館 

《写真、上から順に》 
・マンザナー収容所の様子:全米日系人博物館での展示 2019年筆者撮影 
・山河燃ゆ : NHK大河ドラマ NHKオンデマンド資料より 
・市民の自由法(別称:日系アメリカ人補償法)に署名するロナルド・レーガン大統領(1988年8月10日:Wikipedia。 
・移民不在の日 2017年2月16日 テンポの入り口に貼られたポスター:Los Angeles Timesより 
・オルベラ街にある「ロス・アンヘレス」のポール:2019年筆者撮影