2016.05.04 小野 鎭
一期一会地球旅106「良き仲間たちとの思い出 高校の同期生の旅行 その9」

一期一会 地球旅 106

良き仲間たちとの思い出 高校の同期生の旅行 その9

(ハプスブルク家の栄華の跡を訪ねる旅 ③)

 猛暑のウィーンであったがそれでも午前中はさわやか、ガイド氏には「二度目と初めてのメンバーそれぞれが殆ど半々であることを意識して3時間半をうまく進めて欲しい」と強調して市内観光に出発した。
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市内は主としてリング通り(環状通り)を走り、自然史・美術史博物館を眺めてベルベデーレ宮殿を訪れた。今は美術館になっており、特に上宮には分離派の巨匠グスタフ・クリムトやエゴン・シーレの代表的な作品が展示されており、短時間ではあったが喜んでいただくことができた。昼食はこの町の名物ウィーナー・シュニッツェルとゲッサー・ビールを楽しんでいただき、早めに空港へ向かった。 パリでは、凱旋門から徒歩10分ほどのマイヨール広場付近にあるホテルに宿泊。都心のホテルは足場は良いけれど夏は空調があまり効かないとか比較的大人数の場合は部屋の大きさがまちまちであったり、大通りに面していると騒音が気になるなど、不評を買うことがある。今回の旅行ではパリが最終地であり、
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しかも3泊する。それだけにホテルではなお一層心地よく過ごしていただきたい。いろいろなことを考えたうえでのホテル選択であった。夕食中にセーヌ川から夜景を見たいという声があり、多くのメンバーがぜひ行きたいとのこと。またまた慌ただしい設営であったが何とか準備することができた。急に送迎のためのバスやガイドを準備することはできないのでここはタクシーに分乗、行き先を書いたメモを各ドライバーに渡して、アルマ橋のたもとにある船着場を指定。向こうに着いたところで添乗員がタクシー代を払うから、と念を押して順に出発。こうすることで間違いなく、全員を確認することができた。 緯度の高い欧州、しかも夏時間の今、夕食後も薄暮のパリであったが、
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セーヌ川の遊覧船バトームッシュが出発する頃はさすがに暗くなり、川面を渡って来る夜風が頬に心地よかった。夜空に浮かぶエッフェル塔やアレクサンドル三世橋、ルーブル美術館そしてノートルダム寺院などがイルミネーションに浮かび上がる。さわやかな風が朝からのあわただしかった一日の疲れを癒してくれる。かつて訪れたことのあるメンバーたちは、多分、仕事の段取りや取引先との交渉、日本への連絡などで忙しい出張であったと思うが、今はそのように慌ただしい時間を過ごすこともあるまい。仲間たちとワイワイしゃべったり、笑ったりしながらも、忙しく飛び回っていた現業当時をしみじみ思い出しながらのひと時であったかもしれない。 翌日は土曜日であったので午前中をルーブル美術館訪問に充て、午後はフリータイムにした。買い物に行きたい人もあるだろうし、別の美術館などに行きたい人もあるだろう。最終日の明日は日曜日であり、多くの欧州諸国では、お店はほとんど閉まっているのでショッピングには不向きである。昔は、視察や研修団をお連れすることが多く、当時の団員諸氏は関係先や勤務先への土産物を買うことも旅行中の大切な用向きの一つであった。昨今の中国人の爆買いとはかたちも規模も違うかもしれないが旅行先各地で買い物時間を作っておくことは絶対条件であった。しかし、今回は多くのメンバーがリタイアしており、いわば自由な立場での参加であり、目の色を変えて買い物に走る必要は無かった。とはいえ、むしろ趣味の品やこれは!といったものを求める時間を作っておくことが必要であり、午後のひと時は貴重であった。 最終日は、オプショナルツアーでヴェルサイユ宮殿見学。
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ウィーンのシェーンブルン宮殿で成長したマリ―アントワネットは、やがてルイ王朝の人となり、この宮殿で過ごし、フランス革命で捕らわれ人となった。そして、コンコルド広場で断頭台に掛けられた。彼女も時代の犠牲者であったということであろうか。 夜は、キャバレーリドでの最後の夕食。客席は、舞台正面の一番見やすい場所であり、食事も良い内容であった。かつては、いい席を確保するために随分苦労もしたが、昔の経験が役立ち、マネジャーと交渉してとてもいい席を確保してあり、面目躍如といったところであった。細やかで何気ないことではあるがグループ旅行ではこんなこともやはり評価されるし、
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あれもこれも“一期一会”の思い出。みんなに喜んでもらえたことが嬉しい。 こうして、「ハプスブルク家の栄華の跡を訪ねる旅」は、みんなに喜ばれて無事終えることができた。さわやかな夏の欧州というよりは予期せぬ猛暑に汗だくのことが幾度もあったがそれとても今では懐かしい思い出となっている。 あれから今年で10年になる。あの時訪れたブダペスト、
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プラハ、チェスキー・クルムロフ、ヴァッハウ渓谷、ウィーンの旧市街、シェーンブルン宮殿、パリのセーヌ河岸、そしてヴェルサイユ宮殿 結局訪れたところすべてが世界遺産でもあった。時々、テレビの旅番組などでかつて訪れたところなどが紹介されると、いいところに連れて行ってもらえてよかったと、ケータイでメールを送ってくれる人もある。半世紀以上も前の高校の同期生、気の合った仲間で出かけたこの数回は旅行業務としてお世話しながらも一方ではその仲間の一人として共に楽しませていただけたことがとてもいい経験であったと今も深く心に残っている。 高校時代の仲間との大型の旅行としては、2006年のこの旅行が最後であったが、その中の特に旅行好きの仲間はそれ以後も数回案内することになった。次回は最後の思い出としてそのいくつかを少しだけ紹介させていただきたい。 ところで、この旅行をお世話したころは旅行業専門学校で講じていたころでもあり、その翌年度から「世界遺産」を授業科目として取り入れることになった。教えるからには学ばなければならない、夢中で取り組むことになり、お蔭さまで今は世界遺産検定のマイスター&スペシャリストとして認定を受け、講師としても臨む機会を得ている。   (資料 いずれも2006年7月当時) ウィーン・ヴェルベデーレ宮殿 上宮にて セーヌ川 遊覧船にて 夜空に浮かぶエッフェル塔 ヴェルサイユ宮殿の庭園にて ウィーン・美術史博物館前にて チェスキー・クルムロフ城  

(2016/5/3)

小 野  鎭