一期一会 地球旅 110
いやしの旅 (その3)
旅行も3日目の朝ともなると、さわやかな目覚め、少しずつ時差にも慣れて、生活のリズムも落ち着いてくる。前夜、ホイーリゲ(居酒屋レストラン)で夕食を楽しみ、メンバーはお互いにより親しく朝のあいさつを交わすようになってきた。今日は移動日、豪華なブッフェ式朝食を楽しみ、出発集合へ向けてあわただしく時間が過ぎてゆく。車いす使用で介助の必要なメンバーなどはみんなよりたぶん一時間くらいは早く起床されているであろう。洗面や朝食にも時間がかかるし、トイレにもかなりの時間を見なければならないと聞いている。荷物も多い。ロビーに全員集合して、改めて朝の挨拶、体調異変はございませんか、忘れ物はありませんか、旅券は大丈夫ですか?などと注意を促しながら、ご機嫌を伺い、本日の予定を説明する。午前中は、約3時間半のバスドライブでバッド・イシュルへ向かい、そこで昼食。途中で一度休憩することもお伝えする。午後は、1時間半~2時間くらいで今日の目的地ザルツブルクへ、夕方は早めにホテルに入り、身体を休めましょう、などと案内する。
バスは45人くらい乗れる大型であるが、リフトはついていないので歩行が不自由な方は、ご家族あるいはメンバー相互に支援して乗降していただきたいこと、車いすはスーツケースなどと一緒に座席下のトランクに格納し、休憩地などでは車いすをすぐに準備するのでご心配なく、とお伝えする。添乗員も、乗降時などは可能な範囲でお手伝いしますがグループ全体の旅行行程を予定通り運ぶことが責務になっているのでご理解いただきたいと改めてお願いする。バスの座席は指定ではないので自由にお座りいただけるが歩行不自由な方とご家族などを優先していただきたい。また、旅行中は幾度も専用バスを使うので座席はお互いに席順を交替するなど工夫して、偏りのないようにお願いしたい。最前列は添乗員ならびに市内観光の時は現地ガイドが着席するので空けておいていただきたい、と案内かたがたお願いする。最初が肝心で、途中では説明しにくいこともあるし、不平が出ることもある。 ホテルを出発してウィーンの森の丘陵地の谷間を縫って低地オーストリアと呼ばれる広い田園地帯を西へ走る。明るい陽射しのもと、高速道路(アウトバーン)のドライブは快適で車窓には青々とした麦畑やはるかな丘陵地のふもと一帯(2016/5/31)
小 野 鎭