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トラベルヘルパーマガジン
小野先生の一期一会地球旅
2016.10.12 小野 鎭
一期一会地球旅129「世界一美しい空を見に行こう ラップランドの旅(その3)」
世界一美しい空を見に行こう 129
ラップランドの旅 その3
ヨーロッパの鉄道の主要な駅は通り抜け型でなく、ターミナル型が多い。 つまり、列車は入線してくるとホームの一番手前ですべて線路が終わっており、その前は広いアトリウムのように大きな空間があり、売店やカフェ、レストラン、両替、中にはホテルがることもある。入ってきた列車は最後部が今度は先頭となって出発することになる。駅舎の本奥には出札口(切符売り場)や予約事務所、インフォーメーションなどがある。通常、改札口はないことが多いので人々(乗客)は、大きな駅舎に入ってくると待合室や出札口などを横目に見ながら、そのままコンコースを突っ切ってプラットホームに行くことができる。南北に細長いフィンランドで首都のヘルシンキは南部海岸の中央部に位置しているので中央駅からは東西または北の方へ郊外路線または長距離の幹線が発着しており、B-POPグループの乗るロヴァニエミ行の列車もここから出発する。案内板をみるとロヴァニエミ行の列車は18時52分に出ると表示されていた。そしてその少し前にSt. Petersburg行という列車もあった。聞き慣れない地名であるが、日本ではサンクト・ペテルブルク呼ばれているロシア第二の都市である。かつてはレニングラードと呼ばれていた。
フィンランドはロシアと長い国境を接しており、長い歴史のなかで幾度も確執を繰り返して今日に至っているがいまはヘルシンキとの間の国際鉄道ということになる。距離的には、多分300㎞位であろうか、私たちが向かうロヴァニエミまでの半分以下の距離である。私たちは東京から岡山あたりまで走ることになるが、サンクト・ペテルブルクまでは浜松あたりくらいであろうか。そういえば、午前の市内観光でシベリウス公園にロシアからの団体客がたくさんいたことを思い出した。 朝の内、一度駅構内を下見しておいたが大勢の人たちが足早に歩いて行き来しており、その風景は日本の大きなターミナル駅とそれほど変わりない様子。大きな違いは、朝夕のラッシュ時であっても日本のそれと比較するとはるかに人が少なく、勿論、列を作ったり、押し合いへし合いなどという様子はまるでない。まして一心不乱(?)スマホ片手に速足で歩く人も見かけない。フィンランドの総面積は日本の9割程度(33.8万㎢)、総人口は550万、ヘルシンキ首都圏の人口は100万位らしい。国全体での人口密度は、1㎢に15人程度、日本の320人に比べると1/20程度という希薄さである。この国の人々に日本の新宿駅などの朝の風景を説明しても動画を見せない限り、多分信じてもらえないかもしれない。 もう一つの違いは、駅構内が静かであること。一般に列車の発着案内がアナウンスされることはほとんどないし、増して発着のベルが鳴るなどということもない。
私たちは、始発のサンタクロース号が多分、20分くらい前には入線するらしいと聞いていたが、大きなスーツケースもあり、車いすの方もある。それ以上にヨーロッパの鉄道の中央駅を見ること自体も大きな楽しみの一つであり、ぜひとも写真を撮りたいという人もあり出発の1時間以上も前に駅構内に入り、社会の縮図のような風景を興味深く眺めていた。 今夜乗る夜行寝台列車サンタクロース号は14~15両編成と長く、座席タイプの車両もあるがグループは寝台車。こちらは1階席と2階席があり、それぞれツインのコンパートメントになっている。1階は11室22人、2階は8室16人で全室トイレとシャワー付き、
つまり1車両当たり定員38人というゆったりしたつくりである。各車両に1室ずつ車いす対応室があり、他にアレルギー対応室であるとか、ペット対応室もある。車いす対応室には、車いす対応トイレとベビーシートがある。1階は共用トイレとシャワーがついている。中ほどの6室はそれぞれコネクティング可能となっており、車両全体が様々な意味で使いやすく、ユニバーサルデザインという考え方が大いに発揮されていると思われる。
私たちのグループには2人の車いす使用の方がおられるので別の車両に分かれざるを得ないと承知していたので、極力連結された前後の車両にして欲しい、と希望を入れておいた。ところがこれは残念ながら期待が裏切られていた。どうやら10両近く離れているらしい。長い編成の列車の10両分の通路を抜けるためには10分以上かかるかもしれない。そこで、車中での連絡は現実には大変難しいと思われるので乗車時に到着地につくまでの様々な要件などを打ち合わせておくことにした。ところで、番線のプラットホームは日本の新幹線も顔負けというほど長く、かなりの部分は屋根がなく、雪が積もっていた。しかも夕方4時半ごろには日はとっぷり暮れて雪がちらつき、すでに気温は氷点下になっていた。足元はすでに凍結し始めていた。現地ガイドの案内と駅員の説明をうけて、列車の号車番号を確認してそれと思しき場所で入線を待っていた。そこまでは駅のコンコースから5分以上は歩いており、寒さが次第に身に沁み込み始めていた。ところが発車予定の20分前になっても列車が入ってくる様子はなく、ホームはひっそりしていた。今夜の夕食は市内の日本食レストラン特性の幕の内弁当、レストランは女将が日本人、シェフはフィンランド人60歳くらいの人の良さそうな夫婦であり、二人そろって弁当を入れた大きなバッグを下げて長いホームの先まで一緒に来てくれていた。雪の上で立ったまま時を過ごすのはこの上なく寒いが、夫妻の話をヘルシンキの下町(?)らしいところでの生活の様子などを聴いているとその寒さもあまり気にならなかった。そういえば、かもめ食堂というヘルシンキを舞台にした映画があったことを思い出した。
列車は出発時間になっても入って来なかった。そして、やっと駅のアナウンスがあり、どうやら3~40分遅れるらしいとのこと。できるだけ冷えないようにメンバーは駅コンコースまで戻っていただいて待つことにした。そして、どのくらいたっただろうか、やっと長いながい編成の列車が入ってきた。2階建ての車両は想像以上に大きく、日本の2階建て新幹線よりは1周り程度大きいかもしれない。そして、グループの乗る号車を見つけてグループメンバーは移動した。
時間は十分にあったので、余裕をもって動き、スーツケースも運び込んだ。 日本食レストランの夫妻も弁当を運び、荷物を応援し、メンバーの移動を手伝ってくれた。 こうしてやっとそれぞれのコンパートメントに落ちつき、車いす対応の室内は考えていた以上にゆったりしていることを知って安心した。そして、気がかりであった別の号車のコンパートメントに乗っていただく車いすの方とスタッフ、加えて他のメンバー2名、つまり4名が乗られる号車を探してホームを走ってやっと見つけたのは一駅先くらいあるのではかとさえ思いたくなるほどであった。加えて各号車の通路は1階と2階の中間くらいの高さでつながっており、その都度、階段を3~4段上がり降りしなければならない。これで10両分の移動にはやはり片道10分以上はかかりそうである。全員が乗り込み、スーツケースもそれぞれ所定のコンパートメントに運び込み、期待の幕の内弁当も配り終えた。
そして、移動中のこと、明日下車するまでのことなどを案内して、メンバー各位はコンパートメントに落ちつかれた。フィンランド人のミンナ・カンテ夫人宅にお茶に呼ばれているグループはここから20分ほど走ったティクリヤの駅で乗り込んでいただくことになっている。10両離れた号車とこちらの号車と両方であるので、無事乗り込んでいただくまでは安心できない! しばらくするといつしか列車は走り出していた。どうやら40分近く遅れているらしい。 明日の到着もそうであろうか? そんなことを考えながら走りすぎていく町の灯を見ているうちにティクリヤの駅に滑り込んだ。目を凝らしてホームを見ていると間違いなくメンバーの姿があった。やがて列車が止まり、全員が無事乗車、やれやれこれで一安心。こうして、列車はひたすら北へ向かってひたすら走り始めた。時々窓から外を見ると、夜の底が雪でほの白く見えた。目が覚めればラップランド!氷点下15~20℃の世界ってどんなところだろう、白一色の世界と澄んだ青空、それをひたすら願っている。この列車の愛称はサンタクロース! ロヴァニエミのサンタランドではそのサンタさんと会えることになっている。 心地よい列車の揺れで多分皆さんも熟睡されることであろう。 (以下次号とさせていただきます。) 資料(上から順に、 ことわり分以外の写真はいずれも2013年3月撮影) ヘルシンキ中央駅構内 18:00発 サンクト・ペテルブルク行の案内 所要約4時間(最近では3時間半だとか) VR(フィンランド鉄道) Santa Claus 寝台車内図(資料借用) 車いす対応コンパートメントにはベビー用トイレもある。 雪のホームでひたすら待つ人たち! 両手に下げている幕の内弁当が待ち遠しい。 寝台車の2階席への階段。 車いす対応コンパートメント。ベッドは上下2段。 列車内の通路。各車両の長さは23mくらいあったと思われる。 (2016/10/11) 小 野 鎭
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