2016.10.19 小野 鎭
一期一会地球旅130「世界一美しい空を見に行こう ラップランドの旅(その4)」

世界一美しい空を見に行こう 130

ラップランドの旅 その4 ロヴァニエミにて(2)

列車の心地よい揺れにいつしか眠りに落ちたみえ、目が覚めて窓のブラインドをそっと開けてみると真っ白な原野をひた走り、その向こうには延々と針葉樹の森が続いていた。森の上空はうっすらと茜色を帯びており、少しずつ白から青に変わっていた。時々民家らしき家屋があり、煙突から煙が上っていた。煙はすこしたなびくように流れていたがさほど強い風が吹いているようには見えない。木立は風に揺れることもなくどこまでも続いていた。それからしばらく走っているうちに列車の進行方向右側、つまり、東の空が森と白い原野の境目あたりから次第に赤みを帯び、待つこと暫し、ゆっくりと大きな朝日が昇ってきた。一気に空が明るくなり、上空は青さを強めていった。そのまま、単調な景色が続き、白い原野と木立、次第に明るさを増していく空には雲一つなく夜が明けていった。しばらくすると工場であろうか背の高い煙突があり、白い煙が真横にたなびいていた。少し風が出てきたのであろうか。いつしかコンパートメントからメンバーがそれぞれ出てきては通路に立って車窓を眺めたり、2階席へ上がる階段の窓から走り去っていく雄大な景色にシャッターを押す人たちもあった。
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車内はTシャツ一枚で過ごせるほどであるが、外気温はどのくらいだろうか?多分、これから行くロヴァニエミは氷点下10℃以下に違いあるまい。個人的には、昔は寒さにも比較的強かったが、近年暑さはあまりこたえないけれど寒さには次第に弱くなってきていることを感じている。加齢現象の為す技であろうか。そうは言いながら、北極圏で味わうであろう氷点下20~30℃といった極寒の世界での数日間は、怖いもの見たさの子どものように大いに楽しみでもあった。ところでいつまでたっても太陽はあまり高くは上らず、地平線はるか向こうから明るく照らしてはいるがあまり急いで上っていく様子は見えなかった。高緯度のためであろうか、極夜で見かける太陽は遥か地上近くを上がったり下がったりしながらかなりの日数が過ぎていくらしいが、北極圏近くのこのあたりでも3月上旬はまだ太陽の上り方は遅いのであろうか。 列車はヘルシンキを約1時間近く遅れて出発しているが夜の間に遅れを取り戻したのであろうか? 日本ならば遅れたことの説明とお詫び、そして到着時刻の案内などが丁寧に行われるはずであるが、多くの国々でそのように几帳面に礼儀正しくアナウンスしてくれる国はあまり知らない。この時もそうであった。ほとんど駅を通過することもないので何時にどこを通過しているのかわからなかった。やっと車掌の姿を見かけたので到着予想時刻を聞いてみるとどうやらヘルシンキでの遅れはそのまま引きずっているらしく、1時間近くの延着らしい。 この列車には、スナックや飲み物を売っている簡易カフェはあるがレストランカーは接続されていない。つまり、列車内での飲食は「自給自足」が望ましいということであろうか。その意味では、昨夜の幕の内弁当、味はともかく、成功であったと いうことであろう。とは言いながら、8時過ぎの到着予定が実際には9時過ぎになると思わる。朝食は列車を下りて、ロヴァニエミ市内のレストランで頂くことになっている。 いつしか空は明るく晴れわたり、白一色の世界がまぶしいほどであった。森が続いていたがその向こうに続く道路には次第に車がかなりのスピードで走っていく様子も見え始めていた。少しずつ、建物もふえ、農家であろうか、ポツンポツンと点在し、続いて木材工場であろうかいっぱいの材木が積み上げられたり、レンガ建ての工場と思われる建物などが続き始め、住宅街へと続いていた。どうやらロヴァニエミの郊外に差し掛かったらしい。間もなく、ロヴァニエミに到着した。ヘルシンキから約800km、東京から岡山くらいの距離であろうか。午前9時過ぎ、やはり約1時間の延着であった。ホームに降り立つと一気に寒さを覚え、身体中が引き締まる思い、そして鼻の中がツーンとした。なんとなく鼻毛がバリバリし始めた感じもあった。空は真っ青、そして、プラットホームは真っ白に雪が凍結しており、ほとんどアスファルトほどの固さ。キャスター付きのスーツケースを引っ張るのもそれほど苦労はない。心配していた車いすが雪にめり込むということは少なくともこの段階ではなさそうであった。案ずるより産むが易しであった。10数両を連結した長い編成の夜行寝台列車は、ホームから見上げると圧倒されるほど大きく見える。そして、車体の下部には雪が凍り付いていた。その大きさとたくましさは人々に安心感と安らぎ、そして頼りがいのある、まさにサンタクロース号の名にふさわしい頼もしさを覚えた。駅舎の気温を示す電光掲示板は-16とあった。 女性の現地ガイドに迎えられ、大型バスで近くのホテルへ行き、レストランへ入っていくと、広い店内は溢れんばかりの人であった。 このホテルの宿泊客のほかに、先ほど着いた列車の乗客もどうやらかなりの人数がここに加わっているらしい。暖かいコーヒーや紅茶、そしてチーズやヨーグルト、スクランブルエッグやハム・ソーセージ、トーストはもちろんスウェーデンなどでお馴染みのクネッケ(ライ麦で作った薄焼きのパリパリパン)などもある。すでに10時近くになっており、空腹は頂点に達しており、みんな気持ちよいほど朝食を楽しんだ。
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ロヴァニエミは人口6万人、広大なラッピ州(ラップランド)の行政、商業、経済、文化などの中心都市、商店街や公的機関のオフィスビルや屋内体育館、学校などが点在しており、その間に住宅街が広がっている。この日は、朝食後、そのまま市外へ出て、広大な雪の平地の上に延びる橋を渡った。市内はケミ川に面しており、今は全面凍結して広い原野と見まがうばかり。なんと車の轍(わだち)の跡まで見える。ハイウェイを20分くらい走ったであろうか、サンタランドに到着した。ロヴァニエミを代表する世界的にも知られたテーマパーク、広い園内には様々なパビリオンがあり、室内や屋外のエンターテインメント、お店、レストランやカフェなどが点在している。
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一角にPolar Circuitという看板があり、ここは北極圏ですという説明があった。真っ白に凍結した園内を転倒しないように注意しながら歩くとき、見上げる空は真っ青、気温は氷点下7℃くらいであったと思うがいつしか寒さはあまり感じなくなってきていた。メンバーはいくつかのグループに分かれてアトラクションを楽しんだ。
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北極圏を示すラインの上にみんな並んで一斉に飛び上がってポーズをとったり、トナカイのそりに乗った人もあったかも。 もう一つは、クリスマスショップ、一年中クリスマスに因むおもちゃや飾りつけ、ハガキやカード、クリスマス・リースなどを売っている。一角にテーブルがあり、そこでクリスマスカードを書いて、Air Mail、Japanと朱書して切手を貼り、投函する。 世界中、クリスマス時に配達される。 友達や家族に書いたり、自分宛てに書くのも一興、訪れたのは3月、12月まではしばらくあるが、これもまた旅の楽しい思い出となることであろう。
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サンタランドのメインイベントは、サンタさんとの出会いであった。世界中の子どもにクリスマスプレゼントを届けているサンタであるが、今回はこちらのメンバーが日本から携えてきたお土産をプレゼント。大きなサンタさんは一人一人と言葉を交わして握手、そして一緒に「上を向いて歩こう」を歌った。あの忙しいサンタさんが30分もメンバーのために時間を取ってくれたのはプレゼントが利いたのかも? (以下次号とさせていただきます。) 資料(上から順に、撮影はいずれも2013年3月) 車窓から見た日の出(午前7時過ぎごろであったと思う。) ロヴァニエミの町はケム川に面しているが、一面凍結している。車の轍の後も見える。 Polar Circuit到達記念のカード(B-POP宛て) クリスマスカード作成中! サンタランドにて、このころには氷点下7℃も気にならないくらいであった。 (2016/10/18) 小 野  鎭