2016.10.26 小野 鎭
一期一会地球旅131「世界一美しい空を見に行こう ラップランドの旅(その5)」

世界一美しい空を見に行こう 131

ラップランドの旅 5 ロヴァニエミにて (3)

午後のひと時、休養を取りホテルで休む人、サウナで汗を流す人、商店街を歩く人など思い思いに過ごし、この日は夕食も自由であった。サンタランドでは、青い空と眩しいほどの雪の大地で寒さもあまり気にせずに歩き回っていたが午後は時々雪がちらついていた。気温は午前とあまり変わらず-5~6℃くらいであったと思うが午前よりは寒さを感じた。
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町を歩く人はふかふかした毛の帽子やダウンのフード付きウィンドブレーカーなどを着用、足元をしっかりガードしたブーツなど極寒に対応できるよう、日々の生活の知恵が様々に活かされて動きやすそうなスタイルであった。 東京などでは雪が降るたびに転倒したり交通機関が大きく乱れるなど大騒ぎであるが、北海道や日本海側では文字通り冷静であり、そのような騒ぎはほとんど聞かない。ショーウィンドウには、ムーミンが立っていて、その向こうにブーツが並べられていた。それと同じで10月ごろから4月ごろまで一年のうち、半分以上にわたってこのような日和が続くロヴァニエミであれば日々の生活はもちろんこのようなスタイルが普通の冬の過ごし方なのだろう。 20年近く前に来たときは夏であり、郊外の丘の上のしゃれたレストランで夕食を楽しみ、雄大な風景を眺めたことを思い出したが、今回は厳寒の時期であり、遠出する勇気はなかった。
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夕食はマクドナルド・ハンバーガーショップに行った。わずか一晩のロヴァニエミをファストフードの夕食で済ませるのは味気ない思いもあるが、何といっても「世界最北のマック」というところに興味があった。ホテルからは数分、滑らないように注意しながら歩を進めた。店内に入ってみるとどこにでもあるハンバーガーショップと大差なかったが、“Welcome to the Northernmost Golden Arches in the World”という看板が歓迎してくれていた。
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テーブルはほとんど満員、地元の若者らしき姿もあったが多くは旅行者と思われる人が多く、日本人客もちらほら見えた。自分と同じように物珍しさで訪れている人が多いのであろう。味はさして変わらず、窓の外の白い雪道を眺めつつ、暖かいコーヒーを飲みながら夕食を済ませた。ところで、その後、ロシアのムルマンスクの町にもできたそうで世界最北のマックという位置づけは変わったと聞いている。一番でなくて二番ではダメですか?というセリフもあるがロヴァニエミのマックは Secondary Northernmostなどと紹介されているのであろうか? キャッチフレーズは客の入りに大きく影響するから! 
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ホテルへの帰り道、8時少し前であったが、通りにはほとんど人影はなかった。 明日はここからさらに200km近く北上し、スウェーデンとの国境に位置するムオニオにあるハリニヴァ・リゾートへ行くのでこの日は早く部屋に引き上げた。しかし、夜10時頃、有志のメンバーがオーロラ探勝に出かけられるとのことであった。10名位であっただろうか。夕方、フロントにオーロラが見られるかどうか、可能性を聞いてみたところ、今夜は曇天気味なので難しいかもしれないとのことであった。実際にはどうであろうか?オーロラそのものは多分発生するのであろうが、地上から見られるかどうかはその時の気象条件や周囲の明るさ(というよりは暗さ)に左右されると思われるので心もとなかったが出かけることになった。
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ホテルは町の中心街にあり、街の明かりでオーロラ探勝には多分不適であり、もっと暗いところまで行かなければなるまい。そこで市街地の半分が面しているケミ川の川辺に広がっている河岸公園へ行ってみることにした。ホテルからは500mくらいだがどこまでも白い雪道、しかもカチカチに凍っている。スタッフは車いすのメンバーを慎重に介助しつつ、みんなで声を掛け合いながら歩いた。
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ありったけの防寒着をつけているがそれでも足元から寒さが上がってくる。そして鼻から入って来る空気は痛いほど冷たかったが、オーロラを見ようと期待に胸躍らせながらのラッセル(雪中行軍)であった。昼間見たケム川は実際には流れも川岸も見えずただ雪の原っぱがどこまでも広がっていた。やっと川岸と思しき河岸道路に出てみると、トナカイのイラストが添えられたLapland’s Safariと書いたボードが立っていた。昼間はこの川岸を散歩したり、走ったり、そり遊びをしたり様々な楽しみ方があるのだろう。 しばらく行くと目の前の原野はほとんど光も見えなくなり、はるか遠くに川を渡っている長い橋の街灯が灯っているくらいであった。よく見るとベンチに座っている人たちの姿もあった。小さな話し声も聞こえていたが、どうやらオーロラ見物らしい。聞いてみると、ときどき散らチラッと見えるよ、とのこと。ますます期待が高まる。とは言え、天然現象の発生を待つのは何とももどかしい思い。ただ、じっと空を凝視しているしかない。カメラマンや気象学の専門家であれば何らかの予兆を見極めてその発生を知っているであろうが私たちはそのような知識は持ち得ない。待つこと暫し、はるか向こうの森の上空がなんとなく揺れて白く刷毛で刷いたように薄い青緑色に、白く空が動いた。一斉に声が上がった。「オーロラだっ!」 それは、あっという間に消えてしまったがそれからも時間帯は不規則であったが、幾度か同じような現象を見ることができた。細やかなオーロラは、写真で見るような鮮やかさには遥かに及ばなかったがそれでもメンバーには明日向かうラップランドでの期待をさらに高めたように思う。
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時がたつにつれて寒さに少しずつ慣れてきたとみえ、歯がガチガチするような思いは感じなかった。すでに時刻は深夜12時近く、町は森閑としていた。ホテル近くの交差点に立っている電光掲示の気温は-15℃とあった。 (以下、次号とさせていただきます。) (資料 撮影はいずれも2013年3月) ロヴァニエミのショーウィンドウではムーミンが歓迎していた。 世界最北のマクドナルド・ハンバーガーレストラン(2103年当時) Welcome to the Northernmost Golden Arches in the World ロヴァニエミの中心街(午後8時頃) 広々としたケミ川を覆う雪原、川は全面凍結しているらしい。 Lapland Safariとケミ川に架かる橋 この日(2013年3月9日23時半ごろ)、ロヴァニエミ中心街の気温は氷点下15℃。