2023.03.13 小野 鎭
一期一会 地球旅 252 英国の伝統・文化と田園を巡る旅㉔
 
一期一会・地球旅 252 
英国の伝統・文化と田園を巡る旅 ㉔ 
ロンドン その9 市内観光(7) 
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大英博物館を終えて、シティと呼ばれる中心街&金融街を通り、ハイドパークへ向かった。小説やテレビ/映画などにもよく出てくる都心にある公園で、有名なところでは、ロンドンのハイドパークやニューヨークのセントラルパークなどが筆頭ではないだろうか。ロンドン都心の少し西に寄ったところに広がる広大な緑地で市内にある8つの王立公園の中でも最も広いと説明がある。東西に細長く伸びる長方形の公園で、中ほどに北西から東南方向にかけてサーペンタインという池がある。よく見るとこの長方形の中ほどに北から南にかけて自動車も通れる通りがあり、この通りを境にして、東側がハイドパーク、西側はケンジントンガーデンズとして二つの公園になっている。全体の総面積は253ha、東京都心にある日比谷公園が16haというからその15倍強という広さである。 
 
ロンドン市内にある8ヵ所の王立公園にはリージェント・パークやバッキンガム宮殿の前に広がるセント・ジェームス公園なども含まれている。他にも町の中のスクエアであるとか、中には住宅街に柵で囲まれて、Communal garden(地区の小公園:小野の訳)という庭園もある。これらの小さな緑地の中には、施錠されていて地域住民などに有料で解放されているところもある。日本には、ドイツなどヨーロッパから伝わってきたクライン・ガルテン(貸し農園)などもあるがCommunal gardenはもっと住宅街や市内のスクエアなどにあり、耕作型ではないが一般によく手入れされている。 
 
ハイドパークは、もとはと言えば地域にあったハイド公の領地跡であり、その面積が1ハイド(120エーカー=約50ha)あったことがこの公園の名前の由来だとか。中世になるとここはウェストミンスター寺院(修道院)所有の土地となっていたが、1536年、ヘンリー8世がこれを買い上げて狩猟場とし、さらに1637年に市民に公園として開放されたと聞く。都市公園は住民のレクリェーション空間となるほか、良好な都市景観の形成、都市環境の改善、防災性の向上、生物多様性の確保など都市の根幹的な施設と言われている。人口一人当たりの公園面積は、東京4.4㎡、ロンドン26.9,ストックホルム80.0、つまり、ロンドンは東京の約6倍、ストックホルムは18倍となる。この違いはこれらの都市を幾度も訪れている自分も実感としてわかるような気がする。もっとも、大公園とは言わないまでも日本では地域や町の中に小公園も造成されているのでこれは積極的にそうであって欲しいと思う。反面、子どもの声がうるさいと言って公園が潰されるというニュースも聞いており、これは寒心に堪えない気分である。ハイドパークが市民に開放されたのは今から400年近く前、日本では江戸時代初期であり、都市公園ということについて考え方の違いに驚くばかりである。 
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これらの公園についてもいくつかの思い出がある。1つは、サーペンタイン池の中ほどにかかる橋のたもとにある同名のレストラン。グループでの昼食が多かったが、夕食に行ったこともあった。緯度の高い英国であり、夏は夕食が終わってもまだ明るいので、食事が終ってから散歩することもできた。予算の都合もあるのでここでよく出してもらった食事のメインがロースト・ラムのミントソース掛け。日本ではあまり食べることもなかったが英国やフランスではメニューにもよく載っているし、ヒツジの肉はよく見かける。駆け出しの頃はラムとマトンの違いも判らなかったし、Veal(仔牛の肉)とBeefの区別も知らなかった。料理音痴であった自分だが旅行中の食事についてはいつも真剣に考えるようにしていた。このことは料理学校の講師グループや食肉関係の添乗も幾度か経験したことで、より一層強く意識するようになったと言ってもいいだろう。サーペンタインのレストランはハイドパークの真ん中にあり、緑の中でテーブルに着くととてもエレガントな雰囲気、お客様の感想もまずまずであったことを思い出す。今は、このレストランはこの場所には無くなっているが、池の東端に「バー&キッチン」がある。この場所にはバスで行くわけにはいかないのでグループでの食事は難しくなっているのではないだろうか。2004年に池の南側にダイアナ妃記念噴水が出来たこともあって景観を保つために模様替えされたのであろうか。 
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この公園の東北端に近いところにスピーカーズ・コーナーがある。昔は、「演説者の広場」などと紹介されていたと思うが、今は、日本語のガイドブックや地図にはカタカナでそのままの長い名前が書いてあることが多い。昔は公開処刑場でもあったそうだが、1800年代から抗議やデモの会場として使われるようになり、この場所では、自由に演説しても良いということで1872年に国会で承認された。カール・マルクスやウラジーミル・レーニンなど歴史上の人物もここを利用したことがあるとのこと。今日でも、日曜日の朝、ここでは大勢の人が集まって討論したり、演説に熱心に耳を傾ける人の姿がみられる。論題は、警察が合法とみなす限り、誰でも何の主題であっても予告なしに発言することが出来る。そうは言っても、多くの聴衆を相手に持論を展開するとなれば何よりも英語力またはそれなりの語学力が必要であろう。実際に見かけたこともあるが、自分自身の語学力もあって何を言っているのかほとんどわからず、むしろ、聴衆がヤンやと冷やかしていたことが面白かった。(以下、次号) 
 
        
(写真と資料、上から順に) 
資料(出典など) 
ハイドパーク : Hyde Park & The Royal Parks資料 及び Wikipedia 
Communal garden : Wikipedia 
都市公園 : 国土交通省都市局 データベース 令和4年版 
写真 
ハイドパークの散歩道 柵の右側は乗馬道 遠景は、ロンドン・アイとザ・シャーデビル : 2013年10月8日筆者撮影 
サーペンタイン池にて、後方の高層ビルはロンドン・ヒルトン・ホテル : 同上 
スピーカーズ・コーナー : The Royal Parks資料より