2023.07.03 小野 鎭
一期一会 地球旅 268 カナダの大自然と遊ぼう12
一期一会・地球旅 268
カナダの大自然と遊ぼう ⑫ カナディアン・ロッキー ②


 バンフ・ゴンドラに代表されるサルファー山のアトラクションであるが、参考までにこのロープウェイの往復運賃を調べてみた。季節と日によって若干のあるようだが、2023年5月段階では、CA$60~65/人(約6,000~6,500円程度)となっている。麓駅(海抜1580m)から山頂駅(2281m)まで標高差701m、所要約8分程度であることを考えるとかなりの金額である。バンクーバーのグラウス山でもそうであったが、日本の山岳ロープウェイなどと比べてもずいぶん値段が高いように思える。ここサルファー山の頂上部分に3階建ての山頂駅があり、最近建設されたしゃれた建物で駅としての設備のほか、バンフ国立公園に関する展示や広いオープンスペースのある部屋(多分、多目的に使えるのであろう)のほか、土産物店やブッフェのほか、ゆったりしたおしゃれなレストランがある。三階の屋上部分は、広い展望台となっており、眼下にはバンフの町とボウ渓谷とボウ川の流れ、そして、2500~3000mの山なみがどこまでも続く雄大な風景が続いている。山頂駅の周辺は緩やかな尾根伝いに木道のテラスと階段が続いていて、もう一つのサンソン峰(海抜2337m)まで伸びている。駅の建物は勿論、木道沿いの広いテラスなどもアクセシブルになっているところが多く、車いす使用の方や歩行不自由な方への配慮がなされていることが嬉しい。グラウス山のようなレジャーパーク風の設備はないが、バンフ国立公園の雄大な眺望とゆったりした尾根伝いにハイキングなどを楽しめることなどを考慮すれば、バンフ・ゴンドラも納得いく値段であろう。タイトなスケジュールに追われる観光客には少々もったいないかもしれないが、サルファー山にはそれだけの魅力があると思う。

 
 実は、この時、私たちのメンバー中の二人の男性が木道を駆けおり、そして次なる峰へ向かって駆けあがっていくのが遠望された。メンバーの一人であるMさんとスタッフのTさんで二人に対して展望テラスからグループの声援が飛んだ。サンソン峰の頂上までの距離は約1キロ、尾根伝いに一度高度が下がっているので多分100m近くは高度が上がるであろう。二人の若者は、30分余りで帰って来られた。とにかく若さとそのバイタリティに脱帽、羨ましい限りである。こんな時は、また昔を思い出す。スイスのツェルマットでマッターホルンの麓をハイキングしたことがある。山好きの団員諸氏数名と息を切らしながら山道を歩いたことが懐かしい。

 
 山頂から眺めたボウ川は、ボウ渓谷のなかを大きくうねり、ゆったり流れている。その一部が大きな段差になっており、その名も同じボウ滝がある。滝というよりは、静かに流れてきた渓流が急に渦まき、堰をつくるように流れ落ちている。バンフへの旅行者が記念写真を撮る代表的なところでもある。昔、アメリカ映画マリリン・モンローとロバート・ミッチャムが主演した「帰らざる河」のロケ地となったところと紹介されているが比較的若い世代にはあまりわかっていただけないかもしれない。滝のすぐそばには、ヨーロッパの古城を思わせるバンフ・スプリング・ホテルが立っている。グループの場合、見晴らしのいい部屋とそれほどではないところもあり、それなりにむつかしさを感じたことを思い出す。


 バンフの街はこじんまりしており、Banff Avenueを中心にホテルやレストラン、カフェ、土産物店や観光案内所、旅行会社などがゆったり並んでいる。通りを歩く人も大都市のダウンタウンで見かけるような急ぎ足ではなく、みんなのんびり歩き、気持ちが休まる。極端に高いビルもなく、多くの建物は緑か茶色などが多く、町を取り囲む山々の森の美しさを壊さないように意識されているのであろう。家々の軒先やベランダにはゼラニュームやつる草などの花々が美しく咲いており、町全体が美しく見える。そんな街中でゴミ箱がずいぶんしっかり作られていることに気づく。昼間はそんなこともあるまいが夜間などは野生動物が出てくることもあるらしい。(実は、夜間、滞在中のホテルの玄関先にシカ!が歩いていたのを目撃した人もある)。この日、サルファー山から下りて、バンフの街から15分くらいドライブするともう一つの見どころ、三日月のように細長いミネワンカ湖がある。湖で一休みしての帰り道、10数頭のマウンテン・ゴート(?)がバスの前方を走っており、グループを歓迎するかのように大きく頭を振っている姿に一行は大歓声を上げた。


 ここでは、バンフ通りの中ほどにあるホテルに4泊、シャレー風の3~4階建ての建物であった。このホテルは完全なクセシブル・ルームではないが、バスルームの浴槽の縁が低い部屋がいくつかあり、車いす使用の方にはこれらの部屋をお使いいただいた。また、このホテルでは、中二階にサロン風のわりに広い部屋があり、テーブルとイスも適当数あった。宿泊客は自由に使うことが出来るとのことであり、メンバー各位は夕方、近所のスーパーなどで買ってこられたファストフードや食品、飲み物などを持ち寄り、夕食を兼ねて和気あいあいのひと時を過ごされた。バンフで人気のあるクラマト・カクテルを片手に、バッファローチキンに挑戦した人たちもあって、大賑わい! このグループでは事務局はもとより、旅慣れた方が多く、旅行中にときどきこのように食事とおしゃべりを兼ねたひと時を設定され、楽しい時間を過ごされる。


 明日は、トランス・カナダ・ハイウェイからアイスフィールド・パークウェイを1時間くらい北上してボウ湖見物、折り返してレイク・ルィーズでカヌー遊覧が計画されている。いよいよ「カナダの大自然と遊ぼう」はクライマックスに近づく。明日への期待を胸に、バンフ第一夜は静かに更けていった。(以下、次号)
 
(写真、上から順に)
サルファー・マウンテン屋上のテラス(旅行実施団体制作の動画より)
サンソン峰への木道を駆けていくお二人(矢印の先:2019年9月20日筆者撮影)
ボウ滝にて(2019年9月20日筆者撮影)
バンフの街のごみ箱、鉄製で頑丈!(2009年8月28日 筆者撮影)
バンフ郊外で見かけたマウンテン・ゴートの群れ(旅行実施団体制作の動画より)
バンフで宿泊したホテル(ターミガン・イン資料より)
ホテルのラウンジでのパーティー(旅行実施団体制作の動画より)