2024.01.22 小野 鎭
一期一会 地球旅 296 中南米での思い出 3
一期一会・地球旅 296 
中南米での思い出 (3) 
ブエノスアイレス ② 
 
 ブエノスアイレス訪問の公的な目的は食肉生産現場の視察と日本への食肉輸出事情などを聴くことであった。見学等の手配はメキシコと同様、在日アルゼンチン大使館商務部から本国政府関係機関へ依頼されており、現地手配会社あて、見学予定についておおざっぱな連絡がなされていた。それによると、明日の見学は、ラプラタ河畔にある市内空港に来るようにということであった。何で空港集合? アルゼンチン大使館から本国政府へどのように伝えられていたか詳しくはわからなかったが、この日の視察は郊外の牧場見学とそこで具体的な説明などを聴くことになるらしい。その牧場へは、小型機で行くことになっているとのこと。 
 
 一行は、添乗員を含めて11名のほかに現地ガイド、さらに現地側随員を含めて、多分、3機に分乗して飛んだと記憶している。機種は覚えていないし、自分の搭乗記録にもこの日の牧場見学のための小型機往復は記録がないので具体的なことは言えないが、セスナ機か何かであったと思う。シティ空港は、現在はホルヘ・ニューベリー空港と改められており、国内各地や近隣諸国へ向けて多数の便が発着している。私たちが訪れた1970年代中頃は、可愛らしい空港で小型機やプライベートなプロペラ機などが発着していたらしい。ラプラタ川に面した広い公園の中にある空港の滑走路から飛び上がると眼下に茶色の川面が広がり、市街地の向こうに一面の緑野が広がっていった。目の続く限りの緑野であり、これが言うところのパンパの大平原であろう。牧場らしい仕切りが時々見えていたが30~40分飛んだであろうか、機は少しずつ高度を下げていった。滑走路らしきものは見えなかったが、やがて牧場の一画を細長く踏み固めたような滑走路があり、そこに降り立った。牧場専用の滑走路(=空港?)らしかった。 
 
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 牧場の事務所兼ホールらしい大きめの部屋で牧場や政府関係部署の専門官らしき人物から牧場の規模や飼育されている肉牛などと食肉生産状況そして、アルゼンチンの食肉の輸出状況等についての説明があったと思うが、今となってはどのような内容であったかは覚えていない。自分自身の知識としては、この国のパンパの大草原やその両側に広がる広大な土地で肉牛が飼育されており、その一方で小麦などの穀物が生産され、世界有数の食糧輸出国であること。食肉生産が盛んになっていったのは、19世紀後半に国内の鉄道が建設され、さらに20世紀になると冷蔵・冷凍設備を備えた船舶がアメリカや欧州諸国などへ輸出することが盛んになっていったということであった。北半球と南半球の季節が逆ということで人口の多い北半球で牛肉が不足する時期にアルゼンチン産の食肉生産が盛んになったということも背景にあったらしい。 
 
 1970~90年代、日本では、コメの自由化、オレンジや食肉、乳製品の輸入自由化など大きな動きがあり、日本農業と農政にとって大きな課題が続出していたが、食肉などの輸入は確実に増えていった時代であったと思う。当日の牧場で見学とアルゼンチンの食肉生産や輸出事情などの説明はほとんど覚えていないが、日本よりもはるかに安いこの国の牛肉をたくさん買ってください、という意図であったのだろうと思う。 
 
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 昼食はもちろん、アルゼンチンの名物料理アサード、焼肉料理、串に刺された骨付きの大きな肉のかたまりがジュウジュウと香ばしい匂いをあげており、メンバー各位は本場の焼肉に舌鼓を打っておられた。ただし、味そのものは、日ごろ、和牛の素晴らしいお肉を召し上がっておられ、舌の肥えた方々であるので、多分、この日の肉は大味であったのではないだろうか。私はと言えば、ナスのように黒っぽく細長いソーセージを勧められて齧り付いたがしょっぱく、生々しい匂いがしたBlood Sausageは正直なところ苦手で、少々刺激が強すぎたことを今も覚えている。 

 午後は、ブエノスアイレスへ戻り、大手の食肉加工工場(確か、Swift社であったと思う)を見学した。肉牛がトラックから降ろされ、工場へ送り込まれ、数十分後には枝肉(英:Carcass=スペイン語では、Cuerpoというらしい)となり、さらに部分ごとに袋詰めして冷凍庫に送られていくという流れを見ていると、牛が何とも可哀そうで正視するのがつらかった。小型機と言い、この日のお昼と言い、全額アルゼンチン側のご招待であったと記憶しているが在日アルゼンチン大使館から本国政府に対しては、は食肉の買い付けのための現地事情視察調査と伝わっていたのだろう。この日の夕食は、メンバー各位はやはり肉料理を召し上がっていたと思うが、私自身はさっぱりした日本食が恋しいな、と思ったような気がする。(以下、次号) 
 
【資料と写真、上から順に】 
《資料》 
アルゼンチンの食肉生産について、農林水産政策研究所 資料、島根大学 渡邊英俊、ほか 
Swift Argentina, SA 
 
《写真》 
ブエノスアイレス郊外の牧場風景 : Swift Argentina SA資料より 
アサード(焼肉):Pick up the Fork資料より