2024.05.08
小野 鎭
一期一会 地球旅 311 中南米での思い出 18
一期一会・地球旅 311
中南米での思い出 (18)
パラグアイ・アスンシオン ②
アスンシオンは、パラグアイの首都、緑豊かでゆったりした町であり、白い建物も多く、空は澄み、暑かったがさわやかな風が吹いていたと思う。今日風にいえば、猛暑日であったと思うが蒸し暑さは覚えなかった。パラナ川の支流、パラグアイ川に臨む港町でもあり、私たちが訪れた75年前後は、人口40万くらいの都市であったと聞いていた。大統領府など風格のある建物があり、一方では川沿いの港町一帯は下町風で、にぎやかで活気があったと記憶している。川面を渡ってくる風が心地よかった。そのこじんまりしたアスンシオンであったが、半世紀過ぎた今、周辺を含めた首都圏は人口200万あまり、この国の総人口の1/3に近い大きさとなっているとか。
パラグアイは、先住民としてグアラニー族をはじめとするインディヘナ(インディオ)が住んでいたが、16世紀以降、スペイン人が入ってきてやがてスペインに支配されるようになっていった。17世紀以降は、イエズス会宣教師に先住民へのキリスト教の布教活動とあわせて農業なども含めて活発に展開されてきた。イエズス会布教施設群などが残っており、パラグアイでは唯一の世界遺産となっている。18世紀後半、スペイン王室はイエズス会を追放、先住民たちはスペイン、ポルトガルなどから直轄支配を受けるようになった。その後、1811年、ラテン・アメリカ初の共和国として独立宣言を行った。ところが、1864年には、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイの三国同盟により、パラグアイは侵攻されて1870年に大敗北を被り、国土の14%を失った。人口も開戦前の52万人から21万人へと激減、それ以後20世紀前半まで国勢は沈滞、現在に至るもその傷跡が残っているという。
この国の経済は、農牧畜産業と電力が輸出の8割以上を占めており、アルゼンチンとブラジルに大きく依存しているという。昨今、アルゼンチンの社会経済的な混乱が大きく影響しているのではないだろうか、個人的には気になるところである。もう一つは、電力輸出がこの国経済に大きく貢献していることも特徴がある。世界第二の規模を誇るイタイプ発電所がこの国にとっていかに大きな存在であるかを物語っていると言えよう。一方で、日本人移住者が導入して急成長した大豆の総輸出量は世界第3位になっているとのこと。パラグアイは、日本から見て地球の真反対にあって、日本から一番遠い国の一つである。また、一番知られていない国の一つかもしれない。しかし、最も親日的な国の一つでもあると評価されている。(北岡伸一 新日本人のフロンティア・不思議の国・親日国パラグアイ、2020年7月)
パラグアイが親日的な国であるらしいことは、前述のとおりであるが今年、しかも本稿を書いている2024年5月4日に岸田首相がパラグアイを訪問、ペニャ大統領と会談した。「パラグアイは南米で唯一中国でなく、台湾と外交関係を結んでいる。日本の首相のパラグアイ訪問は2018年の安倍晋三首相以来。会談で首相は、パラグアイは自由、民主主義、人権、法の支配といった価値を共有する『長年の信頼できるパートナー』だと強調した、また、パラグアイが今年前半の議長国を務めている南米の関税同盟「メルコスル」(南米南部共同市場)に関しては、経済関係の緊密化進めるべきだと述べた。メルコスルは、3億人の市場を持つ一大経済圏を形成し、日本の経済界やメルコスル側からは日本とのEPA(経済連携協定)締結を望む声が出ている。」(産経ニュース)(以下、次号)
《資料》
・パラグアイの歴史・経済 : Wikipediaより
・パラナ川沿いのイエズス会布教施設群 : 世界遺産アカデミー 世界遺産大事典 下巻
・北岡伸一 新日本人のフロンティア・不思議の国・親日国パラグアイ、2020年7月
・岸田首相、パラグアイを訪問 : 産経ニュースより、 2024年5月4日
《写真》(上から順に)
・アスンシオン市内風景 1974年4月10日 筆者撮影
・アスンシオン付近のパラグアイ川の流れ (同上)
・グアラニー族の人たちの住まい 1974年4月11日 筆者撮影
・岸田首相とペニャ大統領の記者会見 : 2024年5月4日 FNNニュースより